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ドコモが割賦販売制 「成熟期のビジネスモデル」に転換

» 2007年10月26日 20時42分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 中村社長

 NTTドコモは10月26日、新料金プランを発表した。端末価格は割り引かないが割賦で購入でき、月額基本料金が安い「バリューコース」と、端末価格は割り引くが、月額基本料金が高く、原則2年間解約できない「ベーシックコース」の2種類で、バリューコースをメインに販売していく。

 「長く使った客が損をする不公平なモデルは、市場拡張期のもの。これからは、顧客をいかに維持していくかに軸足を置くべき。時代は大きく変わってきた」――同社の中村維夫社長はバリューコースの狙いを語る。

長く使うと得な「バリューコース」

 「バリューコース」は、「機種変更をせず長く使い続けるほど得なコース」という位置づけだ。端末価格の割引しないが、購入時に12カ月か24カ月の割賦を選択できる。月額基本料は従来よりも1680円安価な「バリュープラン」を利用でき、最も安価な「タイプSS」なら2100円になる。

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 「ベーシックコース」は、従来の販売奨励金制度に近い。端末価格は1万5750円割り引くが、2年契約が原則。通話料の割引はない。「割賦販売に抵抗があるユーザーなど向け」(同社の熊谷文也営業本部長)

 新料金体系が適用されるのは、11月1日に発表する「FOMA 905i」シリーズから。期間限定キャンペーンとして、端末価格を8400円割り引き、基本使用料も月額2100円×最大3カ月間割り引く。これらのキャンペーンを合わせれば、バリューコースでユーザーが支払う端末代金は「従来と同レベルでは」(熊谷営業本部長)としている。

携帯は「成熟期のビジネスモデル」に転換すべき

 従来の携帯電話ビジネスは、高額な販売奨励金をばらまいて新機能を満載した端末を安価に販売。新規顧客を惹きつけつつ、月額料金に奨励金のコストを乗せして回収する――というモデルだった。

 携帯電話市場が飽和に近づき、開拓すべき新規ユーザーも新機能も少なくなってきた今、重視すべきは長く使ってくれる既存ユーザー――バリューコースをメインにすえた背景にはそんな考え方があり、総務省の「モバイルビジネス研究会」で打ち出された方向性にも合っている。

 「従来モデルは、新規顧客獲得が重要だった成長期のもので、長く使った人が損をしてしまう不公平なモデルだ。新規獲得よりも顧客の維持が重要になってきた市場成熟期には、このモデルは変えなくてはならない」(中村社長)

 携帯電話の新機能にも限界が見え始め、新機能を“エサ”に新端末を一斉に売るモデルは変えていくべき時期に来ているとする。「以前のように、機能がどんどん新しくなる時期は、買い換えを促進するモデルでも良かった。だが今はすでにフルスペック。905iシリーズにはありとあらゆるものが載っていて、来年の端末に何を載せていいか分からないくらいくらい」(中村社長)

 新料金プランなら販売奨励金(上半期は1端末当たり約3万5000円)も抑えられれる。「販売奨励金は、代理店に対して値引き原資として出しており、奨励金のうちどの程度を値引きに使うかは代理店判断だった。新料金プランの割引は、当社から直接割り引く形になる。値引きの定義そのものが変わる」(同社の坪内和人財務部長)。

端末販売数は「1割も減らないのでは」

 「1つの端末をできるだけ長く使ってほしい」と中村社長は言うが、買い換えペースが落ちると携帯電話の販売数が減り、同社や端末メーカーの経営にダメージを与える恐れもある。「台数はマイナス方向に行くだろうが、そう大きく減らないのでは。1割以上減るとは考えていない。メーカー側も“1円端末”は悲しいと考えていると聞く。どこかで変えなくてはならないモデルだった」(中村社長)

 売れ筋の端末も変わると見る。「従来は、高機能は不要でも『手に入りやすい価格だから』と高機能端末を購入していた人もいただろう。そういう人は今後、必要な機能を判断して買うようになる。売れ筋がどちらに振れるか分からないが、低価格端末をいかに供給できるかは、従来に増して重要になるだろう」(中村社長)

 KDDIも新料金プランを発表したものの、その姿勢はドコモと逆。端末価格を大幅に割り引きし、2解約できない「フルサポートコース」をメインに打ち出している。「フルサポートコースは従来通りの料金体系。そこはものの考え方の違いだろう」(中村社長)

純増数苦戦、新プランで巻き返しを

 同社はMNP(番号ポータビリティ)商戦で一人負け。「純増数は厳しい状況」と中村社長も認める。ただバリューコースで割賦販売を選べば、端末購入時の初期費用が抑えられ、他2キャリアに比べて高いとされてきた端末にも割安感が出る。「初期投資が小さくなり、端末購入の抵抗感が取れるだろう。これをテコに巻き返していきたい」(中村社長)

中間期は減収減益

 同日発表した2007年9月中間期連結決算(米国会計基準)は、営業収益が前年同期比2.4%減の2兆3251億円、営業利益が21%減の4085億円、税引き前利益が21%減の4109億円、純利益が同20.4%減の2465億円。

 割引プラン「ファミ割★MAX50」「ひとりでも割★50」などが想定以上に人気で収益を圧迫。契約者数は9月末時点で1310万と年間目標だった1200万を上回ったため、年間目標を1900万に大幅上方修正した。

 通期の業績見通しは、営業収益のみ610億円下方修正して4兆6670億円に。コスト削減などで利益減を補う計画で、利益の見通しは変えない。

グループ内再編も

 グループの再編も行う。ドコモ関西やドコモ九州など地域会社を、来年度7〜9月をめどにドコモに統合。経営効率化につなげる。

 「携帯電話の拡大期は、ドコモ本体が、地域ごとの客と離れた場所から意思決定できるメリットもあったが、今は地域間でネットワークのアンバランスが出るなど問題が見えてきた。各地域会社ともそれぞれでサポート部署などを持っているが、それらを統合して効率化できる」(中村社長)

 子会社統合後、孫会社も統合していく方針だ。

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