販売奨励金分離、SIMロック解除、MVNO推進──最終報告書案を提示「モバイルビジネス研究会」第10回会合(1/2 ページ)

» 2007年09月19日 20時23分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo 最終回ということで、総務大臣の増田寛也氏も挨拶した

 総務省は9月18日、今後のモバイルビジネスのあり方を議論する「モバイルビジネス研究会」の第10回会合を開催した。最終回となる今回は、これまでの議論や通信事業者からの意見、モバイルビジネス研究会報告書案に対するパブリックコメントなどを踏まえてまとめた最終報告書案の内容を確認した。

 最終報告書案では、第8回会合で提示された報告書案にあったとおり、現行の垂直統合型ビジネスモデルは、モバイルビジネス市場の成熟化や市場シェアの固定化、料金プランの複雑化、端末・サービス一体型の事業展開、ハイエンド型中心の携帯端末市場、モバイルコンテンツ市場や法人市場の持つ潜在成長力などと密接に関連していることを問題視する、同研究会開始当初の姿勢を堅持。現行のビジネスモデル以外の選択肢が登場しうる、オープン型のモバイルビジネス環境を実現すべきとして、これを実現するためのさまざまな施策を、一定のタイムスケジュールとともに提示した。

端末価格と通信料は分離して明示を徹底、SIMロック解除は2011年までに結論

 ここで改めて最終報告書案の内容をまとめておくと、オープン型モバイルビジネス環境実現までのロードマップを「直ちに取り組むべき措置(第1フェーズ)」と「2011年時点で実現すべき措置(第2フェーズ)」に分け、段階的に移行するプロセスと、今後取るべき各種施策を細かく提示している。

Image モバイルビジネス活性化に向けたロードマップ(モバイルビジネス研究会報告書案より)

 第1フェーズでは、まず「端末価格と通信料金が区分された分離プランの導入」と、「利用期間付きの契約の部分導入(2008年めど)」を検討することとした。

 分離プランでは、端末価格と通信料金を利用者に分かりやすく明示し、端末価格と通信料金を重要事項として契約時に十分説明することを求める。またユーザー側に見える部分だけでなく、端末の販売奨励金と通信の販売奨励金を分計して販売奨励金支払いの適正化を図るため、電気通信事業会計規則を改正し、2008年度から施行することも盛り込んでいる。

 こうした施策は電気通信役務の原価から販売奨励金が除外されることになるため、接続料や卸電気通信役務の料金、固定発携帯着の通話料金の低下などが期待されている。これはMVNOが新規参入するためのハードルも低くなることを意味する。

 またSIMロックに関しては、利用期間付きの契約を導入することで、SIMロックはその実効性を失うと報告書は指摘している。ただし、現状ではドコモとソフトバンクモバイル、イー・モバイルがW-CDMA(HSDPA含む)、KDDIがCDMA2000 1x EV-DO(Rev.A含む)と、異なる通信方式を採用しており、直ちにSIMロックを解除すると事業者間の競争をゆがめる可能性があるため、SIMロックそのものの解除は2011年の第2フェーズをめどに法的に義務づけるべきとした。ただし最終的に結論は、2010年の時点でWiMAXなどのBWA(ブロードバンド無線アクセス)や3.9G(LTE、UMBなど)の動向、市場実態を踏まえて考えるべきだとしている。

 MVNOの新規参入を促進する措置の第1フェーズでは、前述の電気通信役務の原価から販売奨励金を除外することに加えて、MNO(既存キャリア)が卸電気通信役務に関する標準プランを早期に策定することに期待を寄せた。また2007年度中にMVNO事業化ガイドラインの再見直しを行い、MVNOに関連した法制上の解釈にかかるFAQを公表すること、継続して市場のモニタリングを行うことなどを盛り込んでいる。第2フェーズでは、新規システムなどへの周波数の割り当てを行う際に、MVNOへの配慮を行うべきことも明記している。

プラットフォーム機能の共通化や消費者保護策の強化にも踏み込む

 このほか、競争を促進するだけでなく、モバイルビジネス活性化(特にMVNO推進)のための市場環境の整備という観点から、プラットフォーム機能の連携強化策や消費者保護策の強化も検討すべき課題としていくつか例示した。

 プラットフォーム機能の連携という点では、利用者の利便性向上を理由に、MVNOにも認証・課金機能やプレゼンス情報などを適正な対価で利用できるように環境を整備すべきだとする。特にユーザーIDのポータビリティは、キャリアを変えても同じコンテンツプロバイダからサービスを受ける際などに有効であり、2010年までに実現すべきものの1つに挙げた。

 同様の理由でGPSや基地局などから取得される端末の位置情報も、MVNOに対してMNOから適正に提供されるよう、情報提供のための枠組みを用意する。また現状ではMNO以外は利用が難しいプッシュ型の配信機能も、MVNOがオープンに利用できるようにすべきだとしている。

 消費者保護策としては、料金比較などを行っている情報サイトなどの信憑性を行政当局が認定するようなシステムの導入を提言。さらに販売代理店などの販売員の資質向上を図るため、新たな資格認定制度の導入について触れている。

 既存キャリアは、すでに独自の資格認定制度を持っていることから、重複や販売店の負担増などを懸念し、新たな資格認定制度の導入には難色を示しているものの、「キャリア横断的な説明をする販売員や相談員がいない」「店頭ではどこに所属し、どういう素性の人か分からない販売員から端末やサービスを購入しなくてはならず不安」といった理由から、キャリアからは中立な資格を導入することを強く求めた。

 構成員の高橋伸子氏は「英国では、金融商品を販売する際、一社専属の販売員なのか、乗り合いで複数社の商品を勧められる立場にあるのか、最初に顧客に相対したときに明示する必要がある。どの商品を売るとどの程度の手数料がもらえるかといった情報まで開示されている」といった例を示し、認定制度だけでなく、身分の表示にも踏み込んでほしいとの意見も述べた。

施策の実行は「モバイルビジネス活性化プラン評価会議」で

 なお細かな施策を総合的に取りまとめ、着実に実施するため、総務省は報告書案にのっとって「モバイルビジネス活性化プラン(仮称)」を作成する予定だ。このプランは「新競争促進プログラム2010」の見直しにも反映させる。

Image モバイルビジネス活性化プランの概要(モバイルビジネス研究会報告書案より)

 モバイルビジネス活性化プランは、その実行にあたり、モバイル市場をモニタリングし、各種施策の進捗を評価するプロセスを明確化するとともに、その結果を年に1回程度公表することを義務づける。そのためこれら施策の展開を中立的に評価する、学識経験者や有識者による「モバイルビジネス活性化プラン評価会議」を組織することになる。評価会議は報告書が提示した施策の進捗状況を常に検証するほか、追加施策などが必要な場合にはその検討も行い、オープン型モバイルビジネス環境の構築へ向け、常に監視を続ける。

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