携帯電話やPCのサイト上に自己紹介を掲載する「プロフ」と呼ばれるサイトが中高生の間で爆発的な広がりを見せている。特に携帯サイトは、中高生が新学期に自己紹介代わりに自身のIDを交換し合うというくらい普及しているという。
プロフというサービス名は報道などで知られてきているものの、ビジネスとしてどう成り立っているかはあまり知られていない。プロフサイトの現状はどうなっているのだろうか。
「なぜ流行ったのか、いまだに誰も理由がわからないんです」と楽天執行役員インフォシーク事業長・濱野斗百礼氏は困惑した表情で語る。前触れもなく急成長したプロフの現状に、当事者たちも戸惑いを隠せないようだ。
ネット上にあるプロフサービスのうち、現在会員数が最も多いとされるのは、楽天の「前略プロフィール」(前略プロフ)というサイトである。
運営開始は2002年4月。もともとアクセス解析・掲示板サービス「CGIBOY」を運営していたキープライムが始めたごく小規模なコンテンツだった。同社は楽天に子会社化され、2003年には吸収合併された。運営は楽天のポータルサイト・インフォシークが引き継ぎ、現在に至っている。
前略プロフのコンテンツは、会員専用ページだけ。しかもそのページは個人用の掲示板と60問程度の質問がテキストで羅列しているだけという非常にシンプルなものである。
SNSと違い、「足あと」など個人間をつなぐような仕組みは何もない。会員同士がサイト内を検索し、見つけた相手の掲示板に書き込みでもしなければ、互いのやりとりは発生すらしないのである。
そんなシンプルなサイトであるにもかかわらず、現在では中高生を中心として、総会員数は445万人以上(2007年10月31日現在)、うちモバイル会員数は315万人を超えるという巨大サイトとなっている。
それほどの巨大サイトだが、今まで宣伝活動をほとんどしていない。口コミだけで拡大したというのだ。
人気に火がつき始めたのは、各社がパケット定額制を導入し始めた2003〜04年ごろ。中高生の間で口コミでどんどん広がり、今年の春休みの時期には一気にPVが倍増するなど、急激な伸びを見せたという。
プロフのビジネスモデルとはどのようなものなのか。前略プロフの場合は今のところ、サイト上に掲載するテキスト広告のみが収入源である。
収入源がこれだけとはいえ、そもそも人件費もあまりかからず、投資をほとんどしていないサービス。この広告枠は非常に人気があるようで、今年末の分まですべて買い切られている状況であることから考えれば、十分利益が出ているとみられる。
無論、今後は前略プロフと楽天グループのサービスと連携させていきたいと考えているようだ。
だが、今まで楽天グループ内には、これほどの規模で中高生の会員を持つサイトはなかった。そのため、彼らがどんな消費行動を起こすのかがまだわからず、どう誘導したらよいか模索しているのが現状である。
そこで、まずは試みとして、前略プロフ内で読者モデルのオーディションを行ったり、来年春には楽天店舗と共同でイベントを企画するなど、運営者サイドからの仕掛け作りを行っているところだ。ユーザーの8割が女性とみられるため、女子中高生をターゲットとした企画を打ち出していく構えだ。
ただし、プロフはあくまでも若年層ユーザーを捕まえてくる「入口」であると、濱野氏は強調する。
「大人は最終的にはお金になるような仕組みばかりを考えてしまって、このようにトラフィックを捕まえているコンテンツに投入するサービスは、いいものを作れていないと思う。今はユーザーが離れないようにどうやって運営していくかが重要だ」と慎重な姿勢だ。
目下の目標は1億ページビュー/日、会員数700万人の達成。実現不可能な数字ではないという。濱野氏は「いつか前略プロフを『15歳になったら誰もが使うサービス』といわれるようなものにしたい」と語る。
プロフサービスは数あるが、前略プロフが「1人勝ち」しているのが現状だ。“プロフ業界”は今後どうなっていくのか――
実は前略プロフの勢いに追随するかのように、今年に入ってから、7月に携帯コンテンツ大手のインデックス、9月にはライブドアが参入するなど、大手企業が続々とプロフサービスに進出してきているのである。
インデックスの携帯プロフサイト「フラプロ!」は、プロフィールページをFlashで作成できることが特徴だ。Flashで待受画面、ゲーム、時計、カレンダーなど多彩なコンテンツを提供し、他のプロフとの差別化を図っていくようだ。公式サイト中心の同社がいわゆる「勝手サイト」としてサービスを開始したのも特徴といえよう。
こちらも収入源としてはやはりサイト内広告を想定しているが、画面のテンプレートをポイントで購入するようにしたりするなど、広告以外の利益を上げるような仕掛けも取り入れている。「今のところ目標は会員数30万人。半年後には黒字化したい」と同社のコンテンツプロダクト局DC2部マネージャー・安倍義人氏は息巻く。
今後プロフサイトはどう広がっていくだろうのか。前述の濱野氏は「できれば前略プロフを“卒業”した後の受け皿になるようなものを作れたらと思っている」という。プロフを自社サービスに取り込み、収益につなげていくためには、会員になる層をどこまで広げられるかが重要になってくるのかもしれない。
また、プロフは新規参入が簡単なため、サービスの質は玉石混交。いかに中高生のコミュニケーションツールとしてブランド化するかも問われてくる。
コドモの気持ちをつかめるオトナが現れたとき、プロフは真価を発揮するに違いない。
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