人々が生まれた時に電話番号の割り当てを受ける世界。顧客が携帯端末にはお金を払わず、ネットワークサービスだけにお金を払う世界。――そんな世界がいつか実現するだろうか?
11月5日に発表された携帯電話プラットフォーム「Android」とOpen Handset Alliance(OHA)は、携帯電話業界の将来についてさまざまな憶測を生んでいる。中にはかなり奇妙なものもあるが。
少なくとも、Androidが地位を確立した携帯電話メーカーとキャリアに、ビジネスモデルの見直しを強いることは確かだ。
5日の発表は、特定の端末メーカーよりもエンドユーザー向けのソフト開発に重点が置かれており、それはいい方向への変化だと、フィンランドのLinux企業Movialのジャリ・アラ−ルオナCEOは語る。
「モバイルユーザー体験は、Webに対応する必要がある」(同氏)
検索マーケティング自動化を手掛けるSEMDirectorの上級検索マネジャー、マット・ストレイン氏は、Androidは開発コストを引き下げ、その恩恵は消費者にももたらされると語る。
顧客には、この先もっとスタイリッシュな携帯電話が登場するというメリットもありそうだ。Google幹部はAppleのiPhoneに熱中していることで知られており、また彼らが5日の発表でいわゆる「gPhone」に触れなかったことから、一部の観測筋は、GoogleはAppleのデザインに倣った端末メーカーに大きく肩入れするのではないかと解釈している。
Sterling Market Intelligenceのアナリスト、グレッグ・スターリング氏は、iPhoneをまねようとするAndroid端末も幾つかあるだろうが、その努力はほとんど成功しないだろうと指摘する。
「だが重要なのは、Googleが業界全体を動かそうとしていることと、モバイルインターネットの本格的な発展が始まっていることだ」(同氏)
スターリング氏と同様の見方を、元MIT(マサチューセッツ工科大学)Media Labの研究者で、現在はボストン大学に籍を置くヒュン・リー氏も示している。同氏は、Androidの存在自体がApple、Microsoft、AT&TやVerizonなどのキャリアに、コンピューティングとモバイルが融合する世界にどう適応するかを考えさせると指摘する。
またOHAは、ソフト開発者に新たな可能性を開く。ストレイン氏は、アプリケーション開発と収益化の機会があると言う。
Movialのアラ−ルオナ氏は、OHAは「モバイル開発で可能な限りWeb開発に近い」環境を提供すると語る。
同氏は、現行のソフト開発キットには、同氏がAndroidとOHAに期待している機能が幾つか欠けていると言う。
Movialはモバイルソフト分野では、NokiaがInternet Tablet向けに初のオープンモバイル開発プラットフォームを構築するのを支援したことで知られており、Linux関連のモバイルコンソーシアムにも幾つか参加している。アラ−ルオナ氏は、MovialもOHAに参加すると話しているが、時期は明らかにしていない。
冒頭で述べたような無料の携帯電話は実現するだろうか?
Googleのモバイルプラットフォームディレクターで、Androidの立役者アンディ・ルービン氏は、広告サポート付きの本格的な携帯電話の開発は当面ないだろうと語った。
だがほとんどのアナリストは、Googleはこれからも広告収入で運営するというルーツに忠実であり続け、それが無料のサービスや端末につながる可能性があると予測している。
ストレイン氏は、GoogleがいずれAdWordsなどの広告オプションをAndroidプラットフォームに組み込むと推測している。
「AdWordsがいつかこのプラットフォームを強化できるかもしれない。そうなれば、開発者は容易に収益化できるアプリケーションを構築して、報酬を得られるだろう」(同氏)
リー氏は、コンテンツを検索して利用するユーザー向けに、コンテンツと一緒に広告を表示するために、企業はお金を払うだろうと語る。コンテンツの脇にWebクリップや関連するメール広告が表示されるなど、Gmailで見られるような目立たない広告表示になるかもしれない。
同氏はまた、Androidをサポートする端末をT-MobileのSidekickにつなぐと、常時サービスに接続した状態になるだろうと言う。
「居場所に応じて、エンドユーザーに広告が送られてくるのを想像してみてほしい。食料品を買っているときに、5ドルの食品クーポンをクリックしたくならないだろうか? これはつまり、キャリアが分単位でサービスパッケージに課金するのではなく、ISPのように接続プロバイダーになるということだ」(同氏)
すべてのアナリストが、Androidが業界にとって万能の解決策だと考えているわけではない。一部には、Googleが新プラットフォームでモバイルOS市場をさらに分断するのではないかとの懸念もある。
ストレイン氏は、一部のパートナーがオープンソースモデルに関心を持たないかもしれないなど、多数の懸念材料を挙げている。また、Googleがあらゆる市場のあらゆるものを目指しているのではないかと考えているパートナーには、Googleがあまりに脅威的に見えるかもしれないとも同氏は示唆する。「Googleは次はPV市場に乗り込んできて、Microsoftと競争しようとするのではないだろうか」と同氏は考えている。
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