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» 2007年12月13日 16時58分 公開

Second Lifeはてな版? 仮想世界「はてなワールド」β公開 (2/2)

[岡田有花,ITmedia]
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画像 近藤社長と、「はてなワールド」「はてなわんわんワールド」を開発した草野太輔さん

 「同じコストでより豊かな表現ができる媒体があれば、人はそちらを使うと思う。例えば、ブログのコメント欄で話し合っていた人が『らちが明かない』とIMに切り替えたり、隣にいる人とはPCでIMせず、直接話しかけたりする――というように」

 テキストだけのチャットと、動くアバターを使った仮想空間のチャット。後者のほうが表現力は高くて楽しいなら、人は後者を利用するはずと考えた。「はてなワールドでIMを置き換えたい」

 IMは強制力が強い。忙しい時にいきなり話しかけられると、わずらわしくても返事しなくては失礼に当たる。会話の終え方も難しく、「さよなら」「バイバイ」「またねー」など別れのあいさつがだらだら続き、きっぱり終了しにくいこともある。

 「IMのステータスを変えるのは面倒だが、アバターで忙しそうな姿勢を取れば、話しかけない方がいいタイミングも分かってもらえるだろう。IMは切ってしまわないと会話を終えにくいが、仮想空間なら歩いてその場を離れることもできる。オンかオフか、ゼロか1かではなく、よりなめらかで現実社会に近い表現ができ、ストレスの少ないコミュニケーションが可能になるのでは」

 ネット上ではよく知っているけど、直接メールやIMするほどの仲ではない――そんな相手にも気兼ねなく話しかけられるツールにもなる、と考えている。

自分で描くアバターはゲームへのアンチテーゼ

 オリジナルのアバターを自作してほしくて、お絵描きツールも1から作った。「下手でもいいから、自分のキャラクターは自分で描いて欲しい」。オリジナルアバターは、与えられたプロの作品をただ使わせてもらう「ゲーム的仮想世界」へのアンチテーゼでもある。

 「ネットコミュニティーは、自分の力でものを作ってそれを発信できる。苦手でも下手でもいいから、自分だけのアバターを描いて欲しい。こぎれいで同じものが並んでいるよりは、へたくそでいいから全部違うキャラクターが並んでいる方が面白い」

 インターネットは、素人が気軽に発信する文化をつちかってきた。文章のプロでなくても、ブログなら軽い気持ちで世界に情報発信できるように、絵が苦手でも軽い気持ちでアバターを描き、ネットに公開してもらいたい。個性的なアバターが、ネットの世界に増えると楽しい。

 どうしても描きたくない人は、デフォルトのアバターを利用できるほか、他ユーザーのアバターを“奪える”。「アバター素敵ですね、借りていいですか?」「ありがとうございます」――そんなコミュニケーションのきっかけにもなると期待する。

気軽なチャットも“検索可能”に

 会話の内容は、近くにいる人なら誰でも見られる。その場の会話は、一定時間は地面に落ちているから拾い上げて参照することもできるし、すべてHTML化され、Webから検索可能だ。

 IMやゲーム内チャットは、会話した当人以外は知り得ず、その場限りで流れてしまう。「でもせっかくWebだから」、チャット内容もオープンにした。ログがそのまま残り、HTMLページでも参照できるから、ミーティングや打ち合わせなど実用目的にも使える。会話ごとにパーマネントリンクが生成されるため、ログを他人に知らせる際にも便利だ。

 「ゲームのチャットは他人に見えないから、当事者以外には意味を持たないし『検索からログにたどりつく』というネット的な発想にはなかなかつながらない。遊びならそれでいいのだが、長期的に使ってもらえるインフラとなるためには、ログが時系列で残るという実質的な利用価値も必要と考えた。パーマリンクを付ければ、面白い会話をソーシャルブックマークに投稿するなど、新しいコミュニケーションも生まれるだろう」

地図の豊かさは他社に任せる

 仮想世界を手がけるほとんどの企業が、フィールドをオリジナルで作っているが、はてなワールドはGoogle Maps APIを利用し、現実社会の地図の上を歩けるようにした。「Second Lifeの地形は、やたらと海がちだったり島が多かったりするけれど、その地形には理由がなく、恣意的で面白くない。現実のマップを利用した方が面白い」

画像 はてなわんわんワールド

 同じくGoogle Maps APIを使ったはてなわんわんワールドでは「東京駅で待ち合わせる」とか「大文字山に集まって犬で『犬文字』を作る」といった、現実社会をモデルにした遊びが生まれた。携帯電話のGPSを利用し、今いる場所にアバターを登場させるなど、現実社会と連動した新サービスへの可能性も広がる。

 Google Mapsの航空写真地図やGoogle Earthなど、よりリアルな地図を使うアイデアもあったが、今回は見送った。航空写真地図は、自分がどの地域にいるか分かりづらいため、Google Earthは専用クライアントが必要で、利用のハードルが一気に上がってしまうためだ。

 「ぼくらは専門エンジニアが作った以上の地図は作れないから、独自の地図にはこだわっていない。重要なのは、その上でいかにたくさんの人が楽しんでくれるかということ」――ネット上に開放された資源を活用することで、得意分野に特化して進化を続ける。

ビジネス化は「外的要因」も

 当面のビジネス化は考えていない。広告など従来の仮想世界にあったビジネスモデルは導入可能だし、検討もしている。ただ「ビジネスは必ずしも内的要因だけではない」という。

 「例えば、はてなキーワードの主な収益源になっているAdSenseは、キーワードのリリース後に登場した。今後、コミュニケーションの一定量が仮想世界に移行すれば、そういった外的要因でビジネスモデルが形作られることもありうだろう。仮想世界専門の広告代理店も出てきているようだから、新規性のある商品も出てくるのでは」

 機能も進化させていく。アバターのステータスや姿勢を変えられる機能などを検討していく。

 「ものを作ったり、作ったものを売買できたり、自分の家を建てて中に入れたり、土地を開拓できたりなど、従来の3D仮想空間にもある機能の検討はしている。ただやみくもに他のサービスの真似のような機能をくっつけても、無個性で面白みに欠けるものになってしまうから、慎重に判断していきたい」

「弱者の革命」――ネットコミュニケーションの存在意義

 仮想世界が発展し、ネットコミュニケーションがどんどんリアルに近づいていくとすれば、それはネット上である必要はあるのだろうか。ネットは結局、リアルの再現を目指していたのだろうか――

 近藤社長は言う。「ネットだからこそのメリットもある。例えば、場所を拘束されないこと。ぼくがアメリカ支社にいてもはてなワールドで渋谷のオフィスに行けば、まるで隣にいるかのようにコミュニケーションできる」

 とするとネットは、空間を越える手段に過ぎないのだろうか。記者の疑問に、近藤社長はこう答える。「ネットは弱者からの革命だ」と。

 「米国でいろんな人に会い、日本のネットがいかに小さい世界か感じることもあった。よく見ていた日本語のサイトもいつの間にか見なくなっていて、見なくても困らない自分に気付いた。日本のネット上の言論の質の低さを感じたこともある。でも批判ばかりしていても意味がない。

 リアルな社会でバリバリ動いている人は、ネットコミュニケーションをやっている暇はないから、ネットのヘビーユーザーは、現実社会では人となじめなかったり、人前に出るのが辛いという人が多いかもしれない。日本のネットコミュニティーは弱者主体で、ネットはそういう人にこそ求められているのだと思う。

 最近、人間の筋力をサポートしたりするサイボーグが発達している。もともとはサイボーグは、手を動かせない人向けの義手などとして発達しているが、将来は、一般の人が重いものを運ぶの際に当たり前に利用する、という社会がやってくるかもしれない。そんな便利な社会作りに貢献したのは、サイボーグに対する切実な要請を持っていた、体の不自由な人だろう。

 いまのネットは、現実社会のコミュニケーションが苦手な人を助けるツール。そういう人たちと向き合って居場所を作り、コミュニケーションできる環境を作ることに意味はある。そういった人たちの声に向き合えば、いずれ一般の人にも使ってもらえるようになるだろう。

 はてなダイアリーでも、人前ではとても意見が言えない人が発言し始めている。批評家ぶっているとか、批判すると逆上するとか、幼さも見えるが、そういう人が口を開き始めたということに意味がある。

 リアルのコミュニケーションが最良であるとは限らない。現実社会でも本音を言わない人は多いし、知り合い以外の他人にはまったく無関心な人も多い。ネットの方が本音を言いやすいとすれば、ネットの方が言論が発達する可能性もあると思う。ネットのいいとろころ見つけ、それをどう広げていくか考えたい」


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