ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

「企業のインフラ」を目指すGoogle

» 2007年12月19日 19時01分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Googleの経営幹部は、消費者向けの技術がビジネス分野に越境し、ビジネス生産性ツールとなる技術のダイナミズムについてよく語る。

 Googleでエンタープライズ部門副社長兼ジェネラルマネジャーを務めるデーブ・ジルアード氏は、同社におけるこの2つの分野の交差点に立ち、何千人もの従業員を抱える大企業にそうした製品を販売することが、何十億ドルものビジネスになる可能性を熟知している。

 2004年にGoogleに入社して以来、ジルアード氏の担当はGoogle検索アプライアンスの販売から、企業向けのGoogle Appsスイートの販売へと広がっている。

 Googleは7月9日、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)型セキュリティサービスを手掛ける新興企業のPostiniを6億2500万ドルで買収することで合意し、エンタープライズ市場で大手に対抗していく姿勢を鮮明にした。この買収は基本的に、Google Appsにセキュリティレイヤーを追加する(そして、その信頼を高める)ことを目的としていた。

 ジルアード氏は12月12日、米カリフォルニア州マウンテンビューのGoogle本社でeWEEKのシニアエディター、クリント・ボールトンの取材に応え、エンタープライズ市場でのPostini、Google Apps、SaaSの展開について語った。

―― Gmailは、Googleのアプリケーションの中でPostiniの資産が初めて活用され、ポリシー管理やメッセージリカバリに加え、設定しやすいスパムおよびウイルスフィルタリングといった機能が追加されました。Postiniの技術をDocs、Spreadsheets、Presentationsなど、Google Appsのほかのアプリケーションに追加する計画がありますか?

ジルアード氏 その可能性は大いにあります。Postiniは、SMTP、電子メール、インスタントメッセージング(IM)に関する技術を柱として成長してきましたが、そのポリシー強制や、送受信されるものの検知といった考え方は、DocsやSpreadsheetsをはじめGoogle Apps全体に当てはまります。それらはAPIを使って実現できる機能です。しかし、そうすることで製品を改良できる明らかなチャンスがあるわけですが、われわれは今のところ取り組んでいないのです。

 今の時点ではほとんどの人が「そんなばかな」と思うかもしれませんが、わたしは基本的に、情報はサードパーティー、つまりGoogleがホスティングする方が、企業が自社でホスティングする場合よりも安全になると考えています。企業データの最大の流出源はノートPCです。また、大抵の場合、データは過失のために流出します。例えば、わたしがあなたに間違ってスプレッドシートを送ってしまった場合、それを取り消すことはできません。しかし、アップロードしてあるスプレッドシートを見てもらおうと案内を出して、1分後に、「しまった、あれはeWEEKの人だった。送ってはいけなかった」と気付いたら、わたしはそのファイルへのアクセスを禁止して、あなたに見られないようにすることができます。

 われわれは、消費者向けアプリケーションとして開発されてきたアプリケーションをビジネス環境に移すこと、そして、それを非常に生産的な方法で行うことから、新たな可能性が広がると考えています。それが現在われわれが行っている取り組みの中心テーマです。われわれはそのテーマの下でインフラをサードパーティーに開放し、彼らがアプリケーションを構築できるようにしています。われわれはGoogleガジェットやMapsのAPIといったものに関して、こうした取り組みを推進しています。これからもこの試みがもっと拡大するのを見ていただけるでしょう。

―― その試みは企業にとってどのように役立ちますか。わたしがサードパーティー企業だとして、Googleのインフラを使うと何が得られるのですか?

ジルアード氏 現在では、例えば、会社のすべての運送トラックとその位置を追跡する地図アプリケーションを1日で作成できます。それを可能にするのは、われわれのMaps APIのエンタープライズ版です。いずれは、建設業界用のプロジェクト追跡アプリケーションを独自に開発しようという企業も出てくるかもしれません。そうなったら、Googleのインフラ上でそれを運用できるようにすれば歓迎されるはずです。仮想化技術を使っても、データセンターを構築してサーバを導入するのはコストがかさみますから。人々がわれわれのインフラを利用してできることを、長期的にどんどん拡充していくつもりです。

―― Google Appsは、コラボレーションソフトウェアでSaaSモデルを採用しています。GoogleがSalesforce.comのように、オンデマンドCRMやSaaS型ERPを提供する可能性もあるのですか?

ジルアード氏 われわれは、何でもできるわけではないことをわきまえていると思います。われわれにとっては、消費者分野のノウハウの応用が利くことを手掛けることが、非常に理にかなっています。消費者がGmailのような製品を、何のために、どのように使っているかということから、実に多くを学びます。CRMに関しては、われわれにはそうしたアドバンテージや洞察はないわけです。そのためのインフラは持つでしょう。しかし、Salesforce.comはCRM事業で大きな強みを発揮していると思いますし、われわれは彼らのような企業と組むことになる可能性が高いと思います。

―― 企業向けGoogle Appsの2008年の目標は何ですか?

ジルアード氏 われわれは目覚ましい勢いで小規模な企業の支持を集めており、大企業にも支持が広がりつつあります。Google Appsの評価やパイロット運用を行っている大企業があることも分かっています。そうした企業は「IBMやMicrosoftの製品に代わる選択肢として、Googleのような各種のソリューションを手に入れておかなければならない」というビジョンに共鳴しています。

 AccentureやIBM Global Servicesなど、大手企業はどこもSaaSに目を向けていますが、SaaSは彼らのやり方にあまり合いません。彼らは、「SAPを導入して、スタッフに研修を受けさせてください。われわれは1年間、御社に担当者を派遣します」といったやり方に慣れているのです。SaaSはそれとは違って、もっと簡単です。わたしは、今後数カ月の間に、Google Appsを本格的に利用している大企業の事例が登場し、広く知られるようになることを願い、期待しています。

関連キーワード

Google | Google Apps | SaaS | Gmail


Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.