中国最大手の検索サイト「Baidu.com」の日本語版「Baidu.jp」が1月23日、正式スタートした。
Baidu.jpは昨年3月にβ版を公開し、Web検索や画像、動画検索サービスを提供してきた。同日新たにブログ検索を追加したほか、トップページを日本独自デザインにリニューアル。話題の動画や画像をピックアップして紹介したり、検索キーワードランキングを表示する。「流行を気にするユーザーが多いという日本の特徴に合わせたデザイン」と、日本法人・百度の舛田淳取締役は言う。
Baidu.comは海外進出第1弾として06年に日本法人を設立した。Yahoo!JAPANとGoogleで検索シェア8割を占める日本市場にあえて参入した理由を、舛田取締役はこう説明する。
「もっと楽なエリアに進出すれば良いのにと言われることもあるが、日本は経済大国で、安定した高速ネットワークもある。アジアでBaiduの検索エンジンの存在感を示し、リーダー的役割を担っていくためには、まず日本からと判断した」。
日本の検索市場には、まだ入り込むすきがあるという。同社が20〜30代のビジネスパーソン481人を対象に昨年12月に行ったアンケートによると、「検索サービスに不満がある」と答えたのは19.3%だったが、全体の66.9%が複数の検索サービスを利用しており、51.8%は「今後別の検索サイトに乗り換える可能性がある」と答えていた。
「複数の検索サービスを使っている日本のユーザーが多いのは、検索精度が不十分と感じていることの表れだ。日本市場はまだ打ち止めではない」(舛田取締役)
中国でもYahoo!ChinaやGoogleが先行していたが、後発のBaidu.comは開設から3年後の04年に検索シェアナンバーワン(44.7%)を奪取。07年のシェアは69.5%に上る。
来日した中国Baiduのロビン・リーCEOは同日の会見で、後発でも勝てた理由を4つ挙げる。「1つは『Go local』。世界を見るのではなく、その国のユーザーが何を求めているかを見極めてきた。2つ目は『Serve the users』。他社はマイクロソフトをやっつけるためにアプリを開発するが、われわれはユーザーのニーズを満たすものを提供している。3つ目は『Popular products』。かっこいい製品ではなく、ユーザーが必要とするものを出している。4つ目は『Market driven』。最新テクノロジーではなく、マーケットに耳を傾けている」(リーCEO)
日本でもユーザーの声を聞きながらサービスを改善し、ユーザーに評価してもらえる検索サービスを目指す。「まずは『セカンド検索エンジン』としてBaiduを使ってもらいたい。時間がかかるかもしれないが、日本でも評価してもらえるはず」(舛田取締役)
リーCEOは「中国でもゼロから始め、7割以上のシェアを取るまで8年かかった。日本でも同じくらいかかって構わないので、忍耐力を持ってやっていきたい」と意気込みを語った。
中国で人気のMP3検索は、日本で提供しない予定だ。「日本と中国では法制度も異なる。対策が十分でない限りは、実施すべきではない」(舛田取締役)
広告から収益を得る予定だが、広告掲載はまだ始めていない。本格的に広告を導入するのは2010年ごろの予定だ。「ユーザーの評価が得られなければ、ビジネス化しても仕方ない。早急に事を急ぐ必要はない」というのがその理由だ。
「携帯サイト検索は各社が力を入れているがまだまだ精度は低い」(舛田取締役)とし、今後は携帯電話向け検索サービスの開発も検討する。実験的なサービスを開発する部署もあり、「Baiduはふざけているのかと思うような、無邪気なサービスを今後公開していく」という。
日本法人のスタッフは33人。オフィスは東京・六本木ヒルズに構えた。「ある程度コストのかかる場所だが、しっかりと腰を据えて日本版サービスをやっていくという意思表明」という。
「ネットがなくならない限り、検索サービスはなくならない。検索エンジンはまだまだ不十分で、これから技術革新が起こるだろう。Googleが登場した時にある種のパラダイムシフトが起こったが、1〜2年の間にまた新たなパラダイムシフトが起きるのではと考えている。それを起こすのがBaiduでありたい」(舛田取締役)
Baiduは、前ソニー会長の出井伸之さんを社外取締役に迎えている。出井さんは会見で「日本企業がたくさん中国に進出しているが、Baiduの日本進出は2国間の距離を縮める意味のある進出。日本では検索サーバ1つ置くこともできないが、今その状況が変わろうとしている。Baiduが日本に来て市場が広がるのは良いことだ」と話した。
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