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ヘビーユーザーの帯域制御、事業者団体がガイドライン公表

» 2008年05月23日 18時44分 公開
[ITmedia]

 P2Pファイル交換ソフトなどを使う一部ヘビーユーザーがネットワーク帯域を圧迫している問題で、日本インターネットプロバイダー協会など電気通信事業者4団体は5月23日、一部ユーザーに対し帯域制御を行う際の基準となるガイドラインを公表した。帯域制御はあくまで例外的な対応だとした上で、実施の場合にはユーザーの同意や情報公開が必要だとしている。

photophoto ガイドラインより

 総務省の試算では、昨年11月時点の国内ブロードバンド契約者のトラフィック総量は約800Gbpsで、3年で約2.5倍に急増した。ただ、全体の1%に過ぎないユーザーによる通信が、バックボーン帯域の約50%を占めているというデータもあり、常時起動しているP2Pファイル共有ソフトなどが原因とみられる。

 ヘビーユーザーによる帯域の占有が一般ユーザーの速度低下につながっているとして、ヘビーユーザーの帯域制限に乗り出すISPが出てきている。ガイドラインはこうした状況に対応し、日本インターネットプロバイダー協会、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟が昨年9月から検討し、一般からの意見募集などを経て公表した。

 ガイドラインは、帯域制御を実施する際の最小限のルールをまとめた「行動の指針」。従うかどうかは事業者の判断になる。ただ、ガイドラインに沿って帯域制御を行うことで、通信の秘密を形式的に侵害する形であったとしても、「正当業務行為として違法性が阻却されるとの判断がなされることが期待される」としている。

「個別かつ明確な同意」が必要

 トラフィックの増加に対しては、「本来、ISPはバックボーン回線など設備増強で対応すべき」であり、「帯域制御はあくまでも例外的な状況で実施するべき」とした。

 その上で、帯域制御が認められるケースを、「特定のヘビーユーザーのトラフィックがネットワーク帯域を過度に占有している結果、他のユーザの円滑な利用が妨げられているため、当該ユーザーのトラフィックまはた帯域を占有している特定のアプリケーションを制御する必要があるといった一定の客観的状況が存在する場合」に限定。客観的データによる裏付けも求めた。

 帯域制御の方法は(1)P2Pファイル交換ソフトなど特定のアプリケーションに対して制御を行う場合、

(2)ユーザーごとの転送量の基準を設定し、超過したユーザーについて帯域制限や契約解除を行う場合──の2種類とした。

 帯域制御は通信の秘密の侵害に当たる可能性があるため、一般的には当事者の「個別かつ明確な同意」がない限り実施できないとした。約款上の規定や、サイト上での周知だけでは「個別かつ明確な同意」があったとは見なせず、新規加入時の契約書で明示的に確認したり、既存ユーザーに対して個別にメールを送信して帯域制御に同意するとの返信をもらうなどの方法が必要になるとしている。運用方針などについての十分な情報開示も重要だとした。

 今後の検討課題として動画コンテンツの増加を挙げており、動画トラフィック増加によるネットワーク帯域の圧迫にどう対応すべきか検討すべきだとしている。ISP間のコスト負担の公平性問題やヘビーユーザーへの追加課金の是非といった課題も、「改めてベストエフォートの基本原則と受益者負担原則との関係を軸に検討を行う、論点の整理などを進めることが必要」とした。

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