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iPhone 3G講演詳報――ジョブズと仲間たちが伝えた「iPhoneプラットフォーム」

» 2008年06月10日 12時53分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 6月9日午後、Appleのスティーブ・ジョブズCEOはWWDC(Apple Worldwide Developers Conference)の基調講演ステージで大きな喝采を浴びた。ジョブズ氏は5200人を集めた基調講演が満席になってしまったことをまず謝罪。うわさ通り、Mac OS X 10.6(Snow Leopard)のプレビューはWWDCで行われることになったが、基調講演では披露されなかった(守秘義務契約が必要な内容のため)。

新しいiPhone

 「これは電話を永遠に変えてしまった電話だ」とジョブズ氏は初代iPhoneについて述べた。顧客満足度は90%で、98%がWebブラウザを使い、94%がメールを使っている、と同氏。

 「きょう、われわれはiPhone 3Gを発表する」とジョブズ氏が宣言すると観客は喝采。この携帯は「驚くほど速い」と同氏は説明し、Nokia N95と比較してWebページのダウンロードが36%高速だと述べた。

バッテリー持続時間

 待機時300時間、2G通話10時間、3G通話5時間、Webブラウズ5〜6時間、ビデオ再生7時間、オーディオ再生24時間。うわさ通り、iPhone 3GはGPS内蔵。iPhone 2.0ソフトウェアに含まれているロケーションベースサービスの一部をサポートする。

販売

 iPhone 1.0は6カ国で販売された。AppleはiPhone 3Gでまず12カ国、最終的には25カ国を目標としている。「It's a Small World」の歌をバックに、地図に次々と国が追加され、最終的に70カ国になった。ジョブズ氏は「今後数カ月以内にこれらの国々が対応する」と語った。ヨーロッパは29カ国、アジア太平洋は9カ国だ。

 iPhone 3Gは7月11日に22カ国で同時出荷予定。

 Appleは価格を200ドル引き下げた。8GバイトのiPhone 3Gは199ドル、16Gバイトは299ドル。「399ドルが199ドルになるというすごいニュースだ」とジョブズ氏。16GバイトのiPhone 3Gには背面が白のバージョンがある。背面が黒のバージョンは8Gバイト、16Gバイトの両モデルにある。

 今朝空港でタクシーに乗ったらイスラエル人の運転手が、Appleは新しいiPhoneを発表するのかどうか聞いてきた。彼はよく中東に行くらしい。その運転手は間違いなくiPhoneを欲しがるだろうが、400ドルではちょっと。「200ドルならいい」と彼は言った。きっと手に入れることだろう。

iPhone 2.0ソフトウェア

 ジョブズ氏は「Appleは3つに分けられる」と言う。Mac、音楽、そしてiPhoneだ。この基調講演はiPhoneにフォーカスしたものだ。「25万人の人々」がiPhone SDKをダウンロードし、2万5000人が有料のデベロッパープログラムに登録した。

 iPhone 2.0ソフトウェアの新機能をジョブズ氏は紹介した。カット、コピー、ペースト。iWorkとOffice 2008のサポート、関数電卓、ペアレンタルコントロール、多言語への対応(少なくとも16言語)、手書き漢字認識。iPhone 2.0ソフトウェアは7月初めにリリース予定で、iPhoneユーザーは無料で、iPod touchユーザーは9.95ドルでアップデートできる。

 新設のApp Storeは62カ国で利用でき、すべてのiPhoneが対応。デベロッパーはアプリケーションの価格を設定し、売り上げのうち70%を取得する。アプリケーションはFairPlay DRMが適用される。10Mバイト未満のサイズのアプリケーションはWi-Fi経由、携帯ネットワーク、iTunesのいずれでもダウンロードできる。それ以上のサイズのアプリケーションはダウンロードに携帯ネットワークは利用できない。企業はiTunesを使ってアプリケーション配布ができる。音楽プレーヤーを使ってエンタープライズアプリを配布するという仕組みは混乱を来しそうだ。別の同期方法として「Ad Hoc」も用意されている。

MobileMe

 MobileMeに関するうわさは本物だった。Appleのマーケティング責任者であるフィル・シラー氏はMobileMeを「Exchange for the rest of us」と表現した。この同期サービスはクラウドの中に情報を収容し、情報のアップデートをiPhone、Mac、Windows PCなど複数デバイスに対して行う。カレンダー、コンタクト、メール、写真の同期サービスも含む。そう。OutlookとPCがサポートされるのだ。

 シラー副社長はMobileMeを「Web2.0インタフェースのブレイクスルー」と称した。デモで示されたAjaxベースのインタフェースはすばらしい印象だった。しかし実際に触ってみないと信じられない。これはMicrosoftがLive Meshで約束したことを実現しようとしていると言わざるを得ない。Microsoftを待つことはできるが、Appleの方が早く実現する。

 前にも言ったように、同期はWeb2.0の世界におけるキラーアプリケーションだ。AppleはMobileMeの価格を年額99ドルに設定し、.Macを置き換える。MobileMeは7月に、iPhone 2.0ソフトウェアで利用できる。

iPhoneプラットフォーム

 基調講演の最初の部分はiPhone SDKと開発の容易さに関するもの。別のブログエントリーで書いたように、AppleはiPhoneをプラットフォームとして大きく推進しようとしている。プラットフォーム戦略の意義は極めて明快だ。

 大ニュース――AppleはiPhoneのプッシュ型の通知サービスをデベロッパーに提供する予定。このサービスはバックグラウンドプロセスではなく常時IP接続を使い、インスタントメッセージング(IM)などをサポートする。

 セガのイーサン・エインホーン氏はiPhone用のSuper Monkey Ballをデモ。iPhone App Storeのスタートと同時に9.99ドルで発売される。eBayのケン・スン氏によるデモでは、iPhoneはeBayオークションを利用するモバイルデバイスのナンバーワンであるとして、iPhone用のオークションアプリを披露した。

 Looptのサム・アルトマン氏は、iPhone 2.0ソフトウェアを使ってロケーションベースのサービスを使う様子をデモ。Looptは多くのモバイルプラットフォーム向けに開発しているが、「これは最高で最も強力だ」と述べた。

 TypePadのマイケル・シッピー氏はiPhone用のブログ投稿アプリケーションを紹介した。TypePadは既にiPhone対応ページを用意している。この新しいアプリはその先を行くもの。わたしもTypePadを使ったことがある。新アプリには多くの機能があるが、その1つが、写真を画面タッチでリサイズするものだ。Associated Pressのベンジャミン・モス氏はMobile News Networkを披露。iPhone SDKはデスクトップ開発環境に近いものだとコメント。

 保険関連ソフトのデベロッパーであるマーク・テリー氏は、Moo Cow MusicのBandというアプリを紹介した。2週間前、MicrosoftはWindows 7のマルチタッチUIのデモで、画面タッチによるピアノを見せた。2、3週間以内に入手可能になるテリー氏がデモした音楽アプリは、来年登場するMicrosoftのアプリの先を行くものだ。

 MOB.comはiPhone向けの最初のモバイルアプリケーションを開発した。試合のハイライトビデオを、試合の後ではなく、試合中に視聴することができる。ModalityのS・マーク・ウィリアムズ博士は解剖学を学ぶためのアプリを披露した。「これをほかのモバイルデバイスで開発したらいったいどうなるか」と言うと、会場から「ダメだろ!」との声。聴衆は爆笑した。

 2週間前、Digital Legends EntertainmentはiPhone SDKを使った開発を始めた。ザビエル・カリーヨ・コスタ氏はiPhoneへのゲーム移植を4日間でやってのけ、その後でiPhoneの機能に最適化したというアプリを披露してみせた。

余談

 この記事はスティーブ・ジョブズ氏がステージに上がってから15分後に書き始めた。このイベントはメディアにとって混沌の場だ。12時48分に、元副大統領のアル・ゴアがWall Street Journalのテクノロジーコラムニストであるウォルト・モスバーグ氏と話しているのを見掛けた。モスバーグ氏は最前列で、Appleの取締役であるゴアは2列目だった。

 基調講演の前にもうわさは続いていた。Guardianは小型で安いiPhoneが発表されると報じていた。

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