今回のWWDCでは、2時間弱の基調講演でMacが登場したのはたった2回だけ。1つはコードネーム「Snow Leopard」と呼ばれる次期Mac OS Xについて、スティーブ・ジョブズCEOが基調講演後の技術セッションで紹介すると語ったことだ(この技術セッションは、秘密保持契約下のセッションのため、公式メディアは取材できない)。
そしてもう1つは、アップルのインターネットサービス、「.mac」が新た「MobileMe」と改名され大幅に機能を強化した、というコンテクストの中でだ。
「MobileMe」は、いつでもどこでも、MacからでもWindowsからでも、iPhoneからでも、さらにはWebブラウザ(他の人のパソコン)からでも、自分宛のメールや写真、連絡帳、カレンダーなどの情報を利用可能にするというサービスだ。
「.mac」同様、年間99ドル(9800円)のサービスとなる。Mac付属のiPhoto '08によく似た写真管理用のWebアプリケーションを使って、パーティーなどの写真を簡単に親戚や友達と共有したりもできる。
「Snow Leopard」と「MobileMe」の紹介以外の時間は、すべてiPhoneに費やされた。スティーブ・ジョブズCEOは、iPhoneには4つの課題があったと語り、今回それらの課題すべてをクリアしたと発表した。
まず1つは3G対応、2つめは企業情報システムへの対応、3つめは他社製アプリケーションへの対応、そして4つめは、iPhoneをより多くの国で発売するという課題だ。
今回、新発表されたiPhone 3Gは、その名の通り3G通信に対応し、ジョブズ氏が3G対応することの最大の意義とする通信スピードでも圧倒的パフォーマンスを示すようになった。
ジョブズ氏はこれまでのiPhoneのGSM+EDGE通信と比べて2.8倍、他社の3G携帯と比べて36%高速なWebアクセスや、従来のiPhoneに比べて3.6倍高速なメール添付のダウンロード/表示といった特徴を紹介。このほか、GPSを内蔵したこと(これまで通り無線LANや携帯電波を使った位置検索もできる)やアドレス帳の検索、iWorks '08やMicrosoft Officeの書類を開く機能、メールで受信した写真をフォトアルバムに保存する機能など、多岐にわたる機能強化を紹介した(→詳細なスペック)。
2つめの企業情報システムへの対応では、MicrosoftのExchange Serverをサポートしたほか、CISCOのVPNや、企業システムで必須とされるさまざまな通信規格への対応を挙げた。
4つめの多国対応では、当初予定されていた12カ国を大きく上回り70カ国の携帯電話キャリアと契約を結んだことを明らかにした――日本のソフトバンクについても簡単に紹介された。
アップルがこの70カ国の中で、特に重要と考えているのが日本を含む22カ国で、iPhone 3Gは、これら22カ国では7月11日から発売が開始される予定だ。価格もぐっと押さえられ、199ドルになる。米国以外の国々でも、これとほぼ同水準の価格になるということだ。
ちなみにソフトバンクの孫正義社長は、今回もジョブズ氏の基調講演を前の方の列で聞き、講演を終えた後のジョブズ氏とも直接話をしていた。
今回の基調講演で最も多くの時間が割かれたのが、他社製iPhone用アプリケーションの紹介だ。
SEGAやeBay、Six Apart、Associate Press、MLB(米国大リーグ連盟)など10の有名企業がiPhone専用アプリケーションを開発中で、iPhone用アプリケーションを販売する「AppStore」のオープンとともにソフトを提供予定であることを明らかにした。
SEGAのスーパーモンキーボールなど、ゲームソフトの紹介が多かったが、これらのゲームの価格はいずれも9.99ドル(約1000円)で、ニテンドーDSなどのゲームタイトルと比べても安い。それに加えて、eBayやMLBなど無料の実用アプリケーションを提供している会社も多い。
アップルは、こうした優れたサードパーティ製アプリケーションをたくさん紹介することで、iPhoneがもはやただの携帯電話ではなく、ニンテンドーDSやPSPと渡り合える強力なコンテンツプレーヤープラットフォームともなったことをアピールしたかったのかもしれない。
駆け足で紹介したが、基調講演で紹介があった各ソフトウェアの内容など、講演の詳細については追って報告する予定だ。
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