前編ではiPhoneの画面スクロールやメール機能などを例に、使う人を恍惚とさせるユーザーインタフェースについて動画を交えながら紹介した。iPhoneの最大の魅力が洗練された操作感にあるのは間違いない。
しかしiPhoneにはもう1つ特筆すべきことがある。それは、おそらくこれが世界でも初めての「PCがないと使い物にならない携帯電話」だということだ。
iPhoneは、購入した直後の状態では緊急電話をかける以外の操作ができない。初期状態から電話番号を取得して可動状態にするのもUSB接続したPCからだし、曲や動画データを入力するのもPCからだ。これは一見、不便に聞こえるかもしれない。しかし、PC(特にMac OS X)を使いこなしている人たちにとっては、夢のように便利なアプローチである。
例えば、iTunesでiPhoneを設定し、同期作業が終わったころには、それまでMacで使っていたアドレス帳データや予定表データ、さらには毎日Safariで慣れ親しんでいるブックマークなどのすべてがiPhoneに転送されている。
いまでも携帯電話の買い替え時にアドレス帳を移行してくれるサービスなどはよく行われているが、携帯電話のメーカーが変わるたびに、アドレス帳のグループ分け方法が変わったりといった不都合が生じて、機種変更後の1カ月くらいはかなりの不自由がつきまとう。
一方、iPhoneでは最初の設定と同期が終わった直後には、自分の手に馴染んだアドレス帳や予定表、電子メールのアカウント情報、ブックマーク、そのうえ音楽や動画のデータまですべて入った状態になる。「あのデータをまだこっちのケータイに移していなかった」といった移行のつらさがまったくないのだ。
これはiPod同様、iPhoneがアップルの「デジタルハブ」というビジョンの延長線上で開発された製品だからというのも大きい。
2001年、多くのPCメーカーが「パソコンの時代は終わった、パソコンは絶滅に瀕した恐竜で、これからは家電の時代がやってくる」と言っていた中、アップルは家電の時代になれば、入力しやすいキーボードと情報を編集しやすい大きな画面を備えたPCが家電の中枢(ハブ)としてますます重要になると唱えた。
iPhoneでは、例えばブックマークの並べ替えのような操作にしても、これまでの携帯電話のように小さな画面でチマチマとデータをいじるのではなく、PC側であらかじめ並べ替えをしておき、それを同期させるといった大胆な割り切りをしており、この考え方に慣れてしまえば非常に使いやすい。
逆にこのデジタルハブ的観点から見て、iPhoneはiPodからさらに進化している部分もある。本体だけで同期したビデオを(空きメモリ容量確保のために)削除することができたり、写真やカレンダーの項目を追加できたりすることだ。当然、追加した結果はちゃんとPC側にも反映される。
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