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Windows 7のデモはMSお得意のまやかしか?(2/2 ページ)

» 2008年05月29日 16時36分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK
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またしても、まやかしか?

 Microsoftはマーケティングを有利に進めるために言葉のまやかしを使うことで有名だ。モスバーグ氏もその点はよく承知している。同氏が「デモで披露された機能はすべてWindows 7に含まれるのか」と尋ねると、ラーソン−グリーン氏は何度も「イエス」を繰り返した。

 だがわたしはその後ビデオ(ビデオはこちら)を再生していて、あることに気付いた。デモの際には気付かなかったことだが、ラーソン−グリーン氏がLatitude XTを使って披露したのは、ペイントや写真など、マルチタッチ機能のなかでもごく一部の限られた機能だけだった。iPhoneや一部のMacのユーザーであれば、特に驚きもしないような程度のものばかりだ。Latitude XTはグラフィックス統合型チップセットATI Radeon Xpress 1250を搭載するタッチスクリーンタブレットだ。このグラフィックスアクセラレータで本当にマルチタッチ機能をすべて処理しきれるのだろうか? わたしには疑問だ。

 ラーソン−グリーン氏はデモの途中でマシンをLatitude XTから別のタッチスクリーンディスプレイに切り替えた。このディスプレイは見えないところに置かれたPCに接続されていた。この切り替えはごく自然に行われ、流れとしては、マルチタッチ機能とハードウェア要件に関する質問に対する反応のようにも見えた。だが水の動きをシミュレーションしたり、ピアノの鍵盤をたたいたりといった、マルチタッチ機能のなかでも特に華やかな機能を実行するために使われたのは、実際のところ、このディスプレイに接続されたデスクトップPCの方だったのだ。

 前のページでリンクをはったビデオは27日のデモの様子を録画したものだ。一方、次にリンクをはったビデオはMicrosoftが用意した公式の動画だ。公式の動画では最初はLatitude XTが使われているが、マルチタッチマッピングのようにグラフィックスの要素の強い操作に関しては、PCに接続されたディスプレイに切り替わっている。わたしが思うに、ラーソン−グリーン氏が途中で高速マシンに切り替えたのは、「Windows 7のマルチタッチ機能をフルに活用するためにはどれだけのパワーが必要なのか」を十分に強調したかったからなのだろう。つまり、Latitude XTを持っている人、そしてこれから買おうかと検討中の人、皆さんは既に警告してもらったということだ。

LeopardのドックとWindows 7

 デモの動画とMicrosoftが用意した動画には大きな違いがもう1つある。Microsoftの動画にはWindows Vistaと同じスタートメニューのツールバーが映っている。27日のデモでは、Mac OSのドック風のハイブリッドなツールバーが表示されていた。モスバーグ氏はこの違いに目を付けた。

 「タスクバーがタスクバーのように見えないけれども、これもタッチして操作するものなのか? どうなっているの?」と同氏は画面を見ながら質問した。

 この質問に対し、ラーソン−グリーン氏は少しきまり悪そうに、「それはWindows 7用に開発中のものだけれど、今日はそれについては話すことにはなっていない」と答えた。この「Windows 7用に開発中のもの」はMac OS Xのドックに非常によく似ていた。確かモスバーグ氏だったが、誰かがこのドック風のバーにタッチしたところ、すぐに何か反応があったのだが、わたしはそれをはっきり確認できず、その様子はデモの動画にも収められていない。

 Windows VistaはMac OS Xとよく似ているが、なかでも特に際立った共通点は「半透明」である点だ。一方、Windows 7が搭載するマルチタッチ機能はAppleが最初にデモを行い、Appleが最初に市場に投入した機能だ。恐らくMac OS X 10.6はWindows 7よりも先にリリースされるだろうから、先にOSでマルチタッチ機能を実現できるのはMicrosoftではなくAppleということになるはずだ。そしてWindows 7にドック風のインタフェースが搭載されることになれば、Windows 7はますますMac OS Xの模倣ということになるだろう。

 ラーソン−グリーン氏はすぐ近くにいたモスバーグ氏からの鋭い質問をうまくかわした。Dカンファレンスでデモを行うということは、スウィッシャー氏とモスバーグ氏の厳しい目にさらされるということであり、ITベンダーにとってはそれなりに勇気のいる決断だ。Dカンファレンスではルールもほかの多くのイベントとは大きく異なる。Dカンファレンスでは、参加するITベンダーではなく、共同オーガナイザーであるスウィッシャー氏とモスバーグ氏がすべてを管理しているのだ。動画を見ても分かるように、両氏はどのデモにも非常に積極的に参加している。

 わたしはその後、ディナーの席でラーソン−グリーン氏に出くわした。「デモでは緊張した様子だったね」とわたしが声を掛けると、彼女も「そうね」と認めた。そして、「でも当然でしょ?」と聞き返してきた。実に当を得た反応だった。

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