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「タイムシフト目的の録画でも、製作者にフィードバック必要」――映像ソフト協会

» 2008年06月19日 15時39分 公開
[ITmedia]

 「映画はタイムシフト目的の録画であっても、製作者へのフィードバックが必要」「ダビング10は妥協の産物」――映像制作会社や映像ソフトメーカーなどで構成する日本映像ソフト協会(JVA)はこのほど、私的録音録画のあり方についての考えを発表した。

 まず前提として、映画の著作物を自分の好きな時間・場所で鑑賞したい消費者は「パッケージを購入・レンタルいただくか、有料配信を受けていただくことが原則」と主張する。

 その上で、テレビで放送される映画について「タイムシフト目的での録画など一定限度でコピーされることは避けられない」としながらも、「映画製作者に何らのフィードバックがないままコピーされるのは正当ではない」とし、タイムシフト目的だとしても「映画を鑑賞するための私的録画は、映画の経済的価値を利用・享受するもの。製作者に対してフィードバックがあってしかるべき」と主張した。

 アニメ番組については、放送そのものによって資金回収ができないためDVDなどのパッケージ商品によって回収しているとし、「放送されたアニメ番組が大量に私的録画されると、パッケージ商品の販売に耐え難い悪影響が生じる」と述べる。

 放送よりもパッケージ商品の販売が先行することが多い映画についても「私的録画による何らかの逸失利益は生じていると考えられる」と主張。「直接的な売り上げ減が生じているかどうかに関わらず、著作物の経済的価値を享受する行為からは、製作者に対するフィードバックが必要」とした。

 映画のパッケージ商品からの私的複製も「許容する必要はない」とし、「パッケージ商品による鑑賞を希望するユーザーには、対価をお支払いいただき、映画製作への投資に還流させることで、継続的な映画製作が可能にしていくことが必要。これを実現するためには、パッケージ商品をコピー不可とすることが好ましく、コピー不可としてもユーザーに不利益は生じない」と主張している。

「ダビング10は妥協の産物」

 録画補償金が不要となる場合については、(1)映画製作者がどのような範囲で私的複製を許諾するかを個別に選択でき、私的録画が技術的に制限され、(2)技術的制限を回避して私的録画する行為が違法とされる場合に限られる――と主張する。

 「ダビング10」については「妥協の産物であって権利者の意志に基づき採用されたものではなく、権利者が私的録画補償金を得られることを前提にしたもの」と解釈。「ダビング10では権利者が作品ごとに複製可能な回数を選択できないため、各作品の権利者が私的複製を許諾する意志があったとみなすこともできない。これは将来、ダビング10がダビング5になったとしても事情は同じ」とした。

 (2)については、技術的制限を回避して行われた私的複製を違法としなければ「技術制限はいわゆる“ざる”になってしまい、複製可能数を権利者がコントロールする――ということを実現できなくなる」とする。

 現行の著作権法では「著作物の技術的保護手段が狭く定義されているため、明らかに複製をコントロールすることを目的とした手段でありながら、定義に当てはまらないのではと疑義が生じる場合がある」と指摘。現行法では不十分で、法改正の必要があると説いている。

 JVAにはウォルト・ディズニー・ジャパン、NHKエンタープライズ、角川映画、小学館、松竹、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、パラマウントジャパン、バンダイビジュアルなどが正会員として参加。映像ソフトに関する調査や研究などを行っている。

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