ITmedia NEWS > ネットの話題 >

ひろゆき氏と夏野氏に聞く、ニコ生の可能性と「リアルタイム中傷」

» 2008年07月16日 00時05分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ネット上のコメントとリアルタイムのイベントが一体化する――そんな試みが、7月4日に開かれたニコニコ動画のイベント「ニコニコ大会議2008」で行われた。

 イベントが映像ライブ配信「ニコニコ生放送」で中継され、ネットの向こうのニコニコユーザーがコメントを書き込み、そのコメントがリアルタイムで会場の大きなスクリーンにも映し出されたのだ。

画像 イベントで生放送のコメントが流れたスクリーン。質問した一般ユーザーに辛らつなコメントが飛び、ひろゆき氏がフォローした場面もあった

 コメントはポジティブなものも多かったが、中には野次や中傷も。画面に映った一般のユーザーに対して「ハゲ」「おっさん」といったコメントが飛び、それを見た会場のユーザーが笑うといったシーンもあった。

 イベント終了後、この様子がネット上で議論に。「新しいタイプのいじめだ」と非難する論調もあった。ハゲと言われた本人はそれを見て「自分は楽しかったが、精神の弱い人がこれを食らっても大丈夫か、という意見に対しては正直わからんね」と告白している(「ニコ生」コメントで「ハゲ」と書かれた男性 「面白かった」)。

 イベントとニコ生コメントを連動させる試みや、中傷コメントについて、運営側はどう思っているのだろうか。イベントで司会を務めたドワンゴ顧問の夏野剛氏とニワンゴ取締役の西村博之氏に聞いた。

――ニコ生とイベントを連動させるという試みをどう感じましたか

夏野 中傷とか否定的なコメントについては別にして、ニコ生そのものについては、エンターテインメントの1つの形になっていると思いました。ネット上の書き込みを見て会場がどよめいて、それを見てまた書き込みがあってと、キャッチボールが起きていて、複数の空間が一緒になっている感じがして。

画像 夏野氏(左)とひろゆき氏

 ああいうものをきちんとしたエンターテインメントイベントにできるのではないかなと感じましたね。あの形で音楽ライブやったらものすごく盛り上がるだろうと。

 例えば、アーティストのファンクラブの方に限定した生放送なら、否定的なコメントもあまり付かないと思うので、十分ありえるんじゃないだろうか。そういう、新しい楽しみ方を見た感じがする。

 中傷とか否定的なコメントも出たけど、それに対して「やめとけ」というコメントもいっぱい飛んでいたと思うので、自浄作用というか自重作用というか、そういうのがあったのは良かったなと。

 ただ危うさはあると思います。(ハゲと書かれた)あの方がたまたまいい人だったから良かったですけど、ああいうものをどう処理していくかは、これからの課題です。

「プロレスの野次のようなもの」

夏野 (ひろゆき氏に対して)2ちゃんねる(2ch)で中傷が激しくなるとどうなるの? 流行らなくなるの?

ひろゆき いや、2chではよくあることです。まぁその時のノリですからね。プロレスとかで観客がヤジ飛ばした、その観客に対して、ほかの観客がヤジで応戦するというのはよくあること。でもネットをやっている人たちにとって“観客がネタをやる”というはあまり見たことないのかも。

 ニコニコ大会議もプロレスと同様、閉じられた空間で、現実とはまったく離れた世界でした。そこを出れば「ハゲ」と言われた人が誰だったか分からなくて追跡のしようもなくて――という。

 ただ終わった後に関係ない人がネットで騒ぎだし、いわば“2次災害”のようなものが起きてしまうかもしれないのが、ネットの微妙なところです。誰かがコメントによる“被害”にあったとして、それを広げたがる人がネット上にはたくさんいるじゃないですか。

 本人は「大丈夫」と言っているのに「あれはひどい」と言い出し、「彼はどこでブログをやってる」とか「あの人はあそこであれやってる人だ」と追跡されたりして。たまたま(「ハゲ」と書かれた)彼はネット上に痕跡がなかったのが良かったのですが。

 テレビとかだと、放送が終わってしまえばその後は誰も話さずに忘れてしまうんだけれど、ネットは残って広がるというのがあるので、広がらないようのな形を考えてやらないといけないかなと。

夏野 確かにああいう形はまったく新しいから、どう社会に受け入れられるかという、最初の段階なんでしょうね。

 そもそも新しいものは何でもそう。昔カメラが出てきたとに「写ったら魂を取られる」とか言う人もいたし。最初は反発もあって騒ぎもあるんだけれど、徐々に当たり前になっていくんだろうね。

――夏野さんが立ち上げた「iモード」も、それまでにはないまったく新しいメディアでした。ニコ生と同様な経験はありますか

 フィルタリングの議論はその最たる物ですし、迷惑メールもそうでしょう。ドコモ時代は「そんなもの、なんで作るんだ」と言われたこともよくありましたし。「そもそも中学生にメールをやらせないほうがいいのでは」「携帯は不要なんじゃないか」という議論が出てきているのも、1つの反作用ですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.