“音楽CD不況”が続いている。カセットテープやMDと違い、CDの楽曲データをコピーするのは簡単。「YouTube」や「ニコニコ動画」にはさまざまな楽曲が動画付きで公開されており、「iTunes」や「着うた」も普及するなど、CDを購入せずに音楽を楽しむ手段が増えている。
「最近の高校生はCDを『マスター』と呼ぶ」――ブログ「小鳥ピヨピヨ」に投稿されたこんな記事が話題になった。CDは「コピー元のマスター」という扱いで、1人が手に入れたらクラス中で回し、PCに取り込むのが当たり前らしい、という内容だ。
実際に今の中高生は、CDにどのように接しているのだろうか。中学3年生男子(15)と高校2年生男子(16)、高校2年生女子(17)の3人と、大学1年生(20)に聞いてみた。
音楽を全く聴かない人から好きなアーティストのCDは必ず購入するという人まで、4人の音楽への接し方はバラバラ。ただCDを「マスター」と呼ぶかについては、「呼ばない、聞いたことがない」と全員が答えた。また、全員が「YouTube」や「ニコニコ動画」の楽曲付き動画をBGMにしているか、そうしている友だちがいると話していた。
「好きなアーティストのCDは新品で購入し、ちょっと好きな場合は中古で買う。見つからなければ借りることもある」――中3男子CDの買い方は、“CD派”の大人と変わらなかった。高2男子も「本当に欲しかったら買う」という。
メジャーな楽曲ならYouTubeなどを通じて聴くこともできるが、好きなアーティストのものならCDで欲しいという。理由は「カップリングが聞きたかったり、グッズとして欲しいから」。着うたは音が悪い上「携帯はいつもマナーモードだから」ダウンロードしないという。
高2男子は「データだけでいい場合は借りるが、本当に欲しかったら買う」そうだ。「音は実体のないものだから、本好きな人が本を買うように、音が好きな人はCDを買う。わざわざ買うというのはアーティストへの尊敬の念」という意識だ。
「いいものはCDで買うが、中途半端なアーティストは買われなくなる。消費者は頭がよくなったんだろう。ネットで落として聞く人は、その音楽に愛情がないんじゃないか」(高2男子)
4人全員が「CDをマスターとは呼ばないし、呼ぶ人をも見たことがない」という。もともと音楽を聴かないという大学1年生(20)は「音楽を聴く友人でも、CDを『マスター』と呼んでいる人はいない」と話していた。
残りの3人は、CDの貸し借りはするものの、クラス全員で回すことはないという。高2女子(17)は「これって、クラス全員が共通のCDを欲しがらないと発生しない状況だよね」と指摘する。好みが多様化した今では想像しにくい状況ではあるようだ。
中3男子は「CDを持っている人は大切にするから、信頼できる人にしか貸さない」と話す。「貸してと言われても、雑に扱う人には『持ってない』と言う」――CDは彼にとって、「楽曲データを運ぶ媒体」以上の価値を持っているようだ。
YouTubeやニコニコ動画をBGMとして利用している中高生は多いようだ。中3女子は、YouTubeから楽曲付き動画ダウンロードし、動画の音声をMP3ファイルに変換して楽しんでいるという。
中3男子も「欲しいCDでも買う余裕がないときはYouTubeで済ませることもある」と話す。ニコ動に投稿されている『作業用BGM』を聞くことも。DVDを買うお金はないから、YouTubeやニコ動で見ることもある」
高2男子は「YouTubeはBGMとして聴いており、音楽のプロモーションビデオをダウンロードすることもある。ただ、音質が良くないのでMP3に変換したりはしない」という。
――今回、話を聞いたのはたった4人。これだけの結果で「中高生はCDを買っている」とか「CDをマスターとは呼ばない」と言い切ることはもちろん、できない。
ただ、若者にCDが売れないのは「コピーが簡単」という理由だけではなさそうだ、と改めて感じる結果になった。
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