クリプトン・フューチャー・メディアの歌声合成ソフト新版「巡音(めぐりね)ルカ」が1月30日に発売される。「初音ミク」(CV01)、「鏡音リン・レン」(CV02)に続く「キャラクターボーカル(CV)シリーズ」第3弾となるルカは、ミクやリン・レンとどう違うのだろうか。
ルカの最大の特徴は、VOCALOIDソフトとして初めて、日本語と英語両方に対応したこと。「日本語データベース」「英語データベース」の2つを収録したため総容量は3Gバイトを超え、日本語と英語の混じった楽曲を自然に歌わせられるようになった。
日本語データベースのみのミクやリン・レンでも洋楽を歌わせることは一応できる。だがその場合、英語歌詞の含まれた楽曲を歌わせるために、例えば「it」なら「イット」、「the」なら「ザ」と入力するなど、発音の“日本語化”が必要。英語としては不自然なカタカナ発音になってしまう。
だが英語データベースもあるルカなら、「it」「the」などもスペルをそのまま入力し、自然な発音で発声できる。
ルカなら英語オンリーの洋楽曲も自然に歌わせられる。ここで問題になるのが「作った楽曲をどこに投稿するか」だ。
「ニコニコ動画」や「YouTube」は、日本音楽著作権協会(JASRAC)と包括契約を結んでおり、JASRACが管理している日本語曲は合法的に投稿できる。だが、この契約には洋楽曲が含まれていない。洋楽曲を無許諾で両サイトに投稿すれば著作権を侵害することになってしまう。
JASRACによると、洋楽曲は動画と音楽を組み合わせて公開する権利を音楽出版社が直接管理しているケースが多く、動画投稿サイトでの洋楽曲利用をJASRACが一括して許諾することはできないという。
声は声優の浅川悠さんが担当し、「クール&ハスキーでムーディな声」を目指して収録。得意な音域はD3〜D5と、中域から高域までをフォローした。
デモソングを聞いてみるとミクのかわいらしい声やリン・レンの元気なイメージとは異なり、低めの落ち着いた大人の声が響く。「ハウスなどの定番ダンス系からディープな電子音楽、ジャジー/ブルージーな大人びたサウンドにも対応する」としており、ポップス系が得意なミクやリン・レンと対照的だ。
− | 初音ミク | 鏡音リン | 鏡音レン | 巡音ルカ |
---|---|---|---|---|
得意ジャンル | アイドルポップス/ダンス系ポップス | エレクトロ&ロック系ポップス/歌謡曲〜演歌系ポップス | ダンス&ロック系ポップス/歌謡曲〜演歌系ポップス | ラテン・ジャズ〜エスノ系ポップス/ハウス〜エレクトロニカ系ダンス |
得意な曲のテンポ | 70〜150BPM | 85〜175BPM | 70〜160BPM | 65〜145BPM |
得意な音域 | A3〜E5 | F#3〜C#5 | D3〜C#5 | D3〜D5 |
浅川さんの声を使った日英バイリンガルのVOCALOID制作は、ミクが企画される前・2007年初旬から検討していたが、スケジュールなどが折り合わず、先にミクの発売が決まったという。ルカは構想から2年で発売にこぎ着けたことになる。
実売予想価格は、英語・日本語両データベースを備えながら、ミクやリン・レンと同じ1万5750円。クリプトンは「シリーズ全体の好セールスからの還元要素を含んだ例外的な価格設定」としている。
巡音ルカという名前には「広い世界を音が巡り、歌が流れる、伝達する」といった意味を込めた。「巡」には「巡り伝わる音」を、「ル」には流れを、「カ」には歌や香りなどが空気中を伝わるというという意味が詰まっている。
「作り手の意図が、より多くの人というよりは、文化の違うさまざまな人が聞いてくれるかもしれないという方向に向かい、新鮮な違和感を運んでくれることを期待している」――開発者の佐々木渉さんは、名前に込めた思いをこうつづっている。
初音ミクの名は「初めての音が未来からやってくる」という意味で付けられた。鏡音リン・レンの「鏡」には、「鏡に写った異性の分身」という意図が込められており、名前は「R」と「L」から発想してリン(Rin)とレン(Len)になったという。
年齢設定は20歳。初恋の年齢をイメージした16歳のミクや、思春期まっただ中・“恋愛直前”のエネルギーを表現したという14歳のリン・レンよりもお姉さんだ。身長も162センチと4人の中で最高。体重は45キロと細身の設定になっている。
− | 初音ミク | 鏡音リン | 鏡音レン | 巡音ルカ |
---|---|---|---|---|
年齢 | 16歳 | 14歳 | 14歳 | 20歳 |
身長 | 158センチ | 152センチ | 156センチ | 162センチ |
体重 | 42キロ | 43キロ | 47キロ | 45キロ |
イラストは従来通りKEIさんが担当。ロングヘアの落ち着いた大人の女性に描かれており、「凛(りん)としたまなざし、冷ややかで真っ白い肌が、温度の低いクールな声の印象とひも付けされている」という。
衣装は、ミクがネクタイとミニスカート、リン・レンがセーラー服とショートパンツだったが、ルカはチャイナドレス風のスリット入りロングスカート。ベースカラーはグレーで、金色のラインや茶色をところどころあしらっている。
ミクやリン・レンの衣装にはそれぞれ、VOCALOIDエンジン開発元でもあるヤマハ製シンセサイザーの名機のデザインが取り入れられており、ミクは「DX7」を、リン・レンは「EOSシリーズ」をモチーフにしていた。
ルカもミク同様、腕の衣装にシンセサイザーのコントロールパネルのようなものが描かれており、ネット上では物理モデル音源を搭載したヤマハのシンセサイザー「VL1」「VP1」がモチーフではと推測する声もある。VL1は実際の楽器が発音する仕組みを仮想化し、楽器の音をシミュレーションして鳴らすシンセサイザーで、特に管楽器の表現に定評があった。
佐々木さんはルカのデザインに管楽器のイメージを取り入れたと説明。管楽器には「音が空気中を巡り伝わる際に最初に通る人間の“喉〜口”と、人工的かつ音楽的な喉もどき」として“巡”のイメージを重ねている。「ふくよかな胸の上に鎮座する金のオブジェは、管楽器(ホルン)と無限(循環器)がモチーフとして掛け合わせた。喉元で青白く輝く宝石は、空気中の重要な要素である水分を、水滴と重ねてイメージ化している」という。
胸が大きいことはVOCALOIDファンの間でも話題に。中国のニュースサイトでルカを「巨乳御姐」と紹介したものもあった。
髪の色は、ミクが緑、リン・レンが黄色だったのに対し、ルカはピンク。ピンクには「管楽器を通る息遣いが高揚したとき、奏者の頬が桃色に赤らむ様子」を表現しており、「彼女のクールさの内側に情熱的な温度があり、それが体の内側から引き出されているイメージ」という。
発表から1日経った1月8日現在、ルカのイラストが数多くネット上に投稿されており、pixivにはすでに1000件以上、ピアプロには400件以上投稿されている。
ルカの3Dモデルを作って公開したユーザーもおり、ソフト発売前から大いに盛り上がっているようだ。
初出時、この3Dモデルを使った動画が公開されていると紹介しておりましたが、この3Dモデルとは無関係の動画でした。お詫びして訂正いたします。
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