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「いかに技術者の心に刺さるか」 ライブドア、自社サービスのソースコード公開を強化

» 2009年02月09日 10時58分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 EDGE src

 ライブドアは、自社開発したサービスのソースコード公開を強化する。2月9日には、ソースコードを公開している自社サービスをまとめた「EDGE src」(エッジ ソース)をオープン。新たに開発したApache用モジュールも公開し、同サイトで紹介する。

 実験的サービスを集めた「livedoor ラボ『EDGE』の取り組みの一環で、今後もソースコードの公開を進めていく計画だ。オープンソース化で「広く知ってもらい、話題になればそれでいい」という考え。収益を得るのが目的ではなく「いかに技術者の心に刺さったかが重要」というスタンスだ。

「コードがきれいに書けたから」

画像 池邉CTO

 公開したApache用モジュールは「mod_access_token」(モッドアクセストークン)。画像やファイルなどをWeb上で公開する際に有効期限を付けられ、Webアプリケーションと組み合わせれば公開範囲を制御できる。Google Code上でMIT Lisenseで配布する。

 すでに同社のコスプレサイト「Cure」で導入しており、アップロードした画像を特定のユーザーだけに公開するといった機能に活用している。

 同社の池邉智洋CTOが自らmod_access_tokenのコードを書いた。公開に踏み切ったのは「コードが意外ときれいに書けたから」だ。櫛井マネージャーは「当社の役員は自分でコードを書くし、飲み会もセッティングします」と笑う。

 EDGE srcでは、レコメンドエンジン「Cicindela」や、Webアプリケーションフレーム「Sledge」、英語版RSSリーダー「Fastladder」など、ソースコード公開中の同社サービスをまとめて紹介する。これまではEDGEのトップページから個々にリンクを張って紹介していたが、まとめページを作って分かりやすくした。

EDGEは「開発者の心に刺さったか」が重要

画像 櫛井マネージャー(左)と池邉CTO

 EDGEは、新技術を取り入れた先進的なサービスなどを公開するサイト。「開発者が公開したいと思ったものを公開する場」で、重要なのは「売り上げやページビューではなく、いかに話題になったか、どれくらい問い合わせが寄せられたか、いかに外部の開発者の心に刺さったかだ」と同社ネットサービス事業部の櫛井優介マネージャーは話す。

 これまで、メモツール「Quill」などのWebサービスと、一般開発者を支援するプロジェクト「EDGE Co.Lab」、ソースコード公開──の3本柱で展開してきた。スパム書き込みの送信元情報を外部から利用できるようにする「スパムちゃんぷるーDNSBL」や、ソーシャルブックマーク「livedoorクリップ」で公開しているURLなどのデータを研究者に提供する「EDGE Datesets」といったサービスもある。

画像 EDGE Datesetsの特設サイト

 スパムちゃんぷるーDNSBLは「かなりメジャーな企業も使っている」(櫛井マネージャー)など反響は上々。同サービスを経由して投稿されるブログ記事は1日当たり数万に上っているという。

 EDGE Datesetsは、専用サイトに2人の「ディタ」「セト」という2人の萌えキャラが描かれて話題に。「クローリングしているヒマがあるなら……論文書いたら?」「べ、べつにアンタの論文が心配なんじゃないんだから! さっ、サーバに負担がかかるでしょ!?」という2人のツンデレ会話が注目を集めた。

 EDGE Datesetsは社会貢献活動の一環だが、「われわれは社会に貢献します」とストレートに言うと裏がありそうに見えてしまうため、萌えキャラを使うことにしたという。1月に公開してから100件以上の問い合わせがあり、手応えを感じている。

オープンソースのすき間、EDGEが埋める

 EDGEの3本柱のうち、今後最も力を入れていくのはソースコードの公開だ。池邉CTOは「エンジニアが、これは検索したら見つかるんじゃないかなと思うようなコードは、公開されていた方がいいと思う。便利なものは遅かれ早かれ、誰かが公開する。ないなら、そのすき間をEDGEが埋める」と話す。

 「当社はエンジニアが多く、オープンソース化は得意分野。1番力もかからず、反響が大きい」(櫛井マネージャー)という面もある。

 反響を得られると、同社にはどんなメリットがあるのか。池邉CTOは「ほかの企業や技術者に使ってもらい、それが縁で協業したり、EDGE以外の当社のサービスも合わせて紹介するといったことができるかもしれない」と期待する。

 求人にも役立つと考えている。「オープンソース化は、会社の内部を見せているようなもの。技術者にとっても、どんなコードを書いているか分からないより、分かる企業の方がいいと思う」(池邉CTO)。実際に採用面接で「EDGEで共感を得られるものが多かった」と話す開発者もいたという。

 「EDGEの効果が出始めるまでには時間がかかるが、Web業界全体のメリットになり、レベルアップに役立てばいい」(櫛井マネージャー)

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