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音楽著作権処理を一元化 JASRACや配信業者など新組織

» 2009年03月06日 16時09分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 ロゴを持っているのは、理事の佐々木隆一氏

 日本音楽著作権協会(JASRAC)や、音楽配信事業者団体などが3月6日、楽曲のネット配信に伴う著作権処理を効率化するための一般社団法人「著作権情報集中処理機構」を共同で設立すると発表した。

 複数の著作権管理事業者の楽曲情報を1つのデータベースに集約。権利者情報の検索や楽曲の使用報告を簡便に行えるシステムを構築・運用する。2010年4月からのシステム本格稼働を予定している。

 配信事業者はこれまで、配信したい楽曲の権利者情報を、JASRACやイーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)など各管理事業者のデータベースで歌手名などから検索し、配信実績を各管理事業者に個別に報告してきた。

 新たに構築するシステムには、各管理事業者が管理している楽曲データをまとめて収録。権利者情報の一元検索から配信実績の報告データ作成まで、ワンストップでできるシステムを目指す。

 フィンガープリント技術も導入。配信事業者のPCに保存した楽曲ファイルを指定すれば、自動で権利者情報を照合してリスト表示し、報告データを作成する――といったことを可能にする計画だ。

 システムは2億円〜2億5000万円かけて構築。2009年5月から実験システムを稼働させ、構築事業者の競争入札を実施。2010年4月の本格稼働を目指す。

画像 設立会見

 管理事業者側は、JASRAC、イーライセンス、JRC、ダイキサウンドが、配信事業者側は、ドワンゴ、第一興商、USEN、サミーネットワークスなどが幹事となって資金を分担する予定。

 設立発起人は、JASRAC、ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)、慶応義塾大学大学院の岸博幸教授、ジャーナリストの木村太郎氏、に・よん・なな・みゅーじっく会長の丸山茂雄氏、渡辺プロダクション会長の渡辺美佐氏。内閣官房や文化庁、総務省の支援も受けている。

JASRACには月7000万〜1億曲もの照合

 音楽のネット配信市場は拡大を続けており、携帯電話向けの着メロなどを含め配信事業者は約1000社、サイトは約1万あるという。機構の理事を務めるJASRACの菅原瑞夫常務理事は、JASRACのデータベースで1カ月に7000万〜1億曲分のもの楽曲データ照合が行われていると話す。

 「照合は、自動化している部分もあるが、新曲や外国曲などでデータベースにない場合、どうしても手作業で権利者を探す作業が発生し、コストがかかっていた。照合できないデータが0.1%だったとしても、1カ月に7〜10万曲というボリュームだ」(菅原氏)――新機構は、手作業で権利者を探す作業も、管理事業者に代行して行う予定だ。

 菅原氏とともに機構の理事を務める、NMRCの佐々木隆一代表世話人も「配信事業者・管理事業者とも権利処理にぼう大なコストがかかり、大きな問題になっていた。夢のようなプロジェクトだ」と新システムに期待する。

 発起人で、コミュニティーFM・湘南ビーチFM社長も務める木村太郎氏は「湘南ビーチFMでは1日300曲ほど放送しており、権利処理専業スタッフが1人必要な状況。フィンガープリント技術による自動化を検討したこともあったが、億単位のお金が必要で断念した。こういう動きは歓迎したい」と話していた。

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