かつてはオタク専用のポータブルな小型ノートPCと思われていたNetbookがここにきて、PC市場で重要なセグメントになりつつある。米調査会社ABI Researchのアナリストによると、今年末までに3900万台のNetbookが出荷される見込みだ。一方、米市場調査会社IDCでは、今年のNetbookの販売台数は2100万台になる見通しだとしている。いずれにせよ、この市場が急拡大しつつあることは確かなようだ。その一方で、2008年はノートPCとデスクトップの販売が落ち込み、多くのアナリストは2009年もこの傾向が続くとみている。
NetbookがPC業界の救世主になるかもしれないという期待が高まる中(話題だけが先行している感もあるが)、全世界の企業がデスクトップとノートPCをどのような形でリプレースするのか(リプレースするかどうかではなく)という点に注目が集まっている。
Netbookは会社から客先へ手軽に持ち運べるので、企業に向いていると主張する人もいる。また、企業ユーザーが本当に求めているもの、すなわち、Hewlett-Packard(HP)、Dell、Lenovoの高価格ノートPCに代わる安価な選択肢をNetbookが提供するという人もいる。しかしこれらは、企業の重要なニーズを考慮していない議論だ。コンピュータをオフィスからオフィスへと持ち歩けるかどうかは、企業にとってそれほど重要な関心事ではないのだ。安価というのも確かに重要なポイントだが、それよりも重要なのはその投資の効果だ。
Netbookに関していえば、投資効果はあまり高くない。
ASUSやAcerなどのメーカーが提供するさまざまなNetbookが市場に出回っている。これらのメーカーの多くはWindowsを搭載したNetbookを販売しているが、Linuxが標準で搭載されているNetbookもある。Linuxモデルと比べると、Windowsモデルはやや割高だ。その差は大した金額ではないが(通常、WindowsマシンとLinux搭載Netbookの価格差は50ドル以下)、多くの企業にとって困るのがWindowsのバージョンだ。ASUSの「Eee PC」にバンドルされているのはWindows XP Homeエディションだ。Windows XP Professionalがバンドルされているのは、Acerの「Aspire One」シリーズの1機種(Aspire One Pro)だけだ。それ以外のエディション(Windows Vista Businessエディションなど)を必要とする企業の場合、Netbookは考慮の対象外とならざるを得ない。
Netbookにはもう1つ問題がある。Windows Vistaのようにリソース要求の高いOSを動作させるパワーがないのだ。Netbookはパワーが甚だしく不足しているのだ。例えば、ASUSのEee PCシリーズの最上位モデルは、1.6GHzのIntel AtomプロセッサとIntelの統合グラフィックスチップを搭載する。メモリは1GバイトでHDDは最大160Gバイトという構成だ。しかしDVDドライブは備えておらず、OSはWindows XP Homeエディションが標準となっており、リソースを酷使する各種のエンタープライズアプリケーションを動作させる力はない。
これはパワー不足に起因する深刻な問題だ。確かに、NetbookはWebサーフィン用としては素晴らしいデバイスだ。また、電子メールの送信や簡単なドキュメントの作成といった基本的なタスクを実行することもできる。しかし重要なエンタープライズアプリケーションを開こうとする段になったとき、Netbookの実用性は著しく低下することになる。ノートPCやデスクトップのような能力を提供できないのだ。ビジネスの世界ではノートPCはWebサーフィン用のオモチャではない。
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