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Twitterは政治や報道を変えるのか(1/2 ページ)

» 2009年07月01日 14時14分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 橋本議員のTwitter

 ここ最近、Twitterへの注目が急速に高まっている。ネットレイティングスの調査によると、4月月間の日本のユニークユーザー(UU)数は52万人と2月から倍増。坂本龍一さんなど著名なアーティストや国会議員も使い始めている

 先行する米国では、バラク・オバマ大統領やデミ・ムーアさんをはじめとした政治家や芸能人、メディアなどが広く活用しており、Twitter上での有名人の発言がニュースになることも珍しくない。4月のUUは1708万と日本の30倍以上だ。

 国際政治に関わる動きも。大統領選に絡む混乱が起き、情報統制が敷かれているイランでは、改革派の若者がTwitterを活用して世界に情報発信。米国務省はイランからの情報流入を途絶えさせないよう、Twitterに対してメンテナンスを延期するよう求めたとも報じられている。

画像 左から橋本さん、津田さん、山崎さん

 Twitterは政治や報道の形を変えるのか――6月30日、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)で「Twitterと政治を考えるワークショップ」が開かれ、Twitterを活用しているジャーナリストの津田大介さんと自民党衆議院議員の橋本岳さん、リサーチャーの山崎富美さん、GLOCOM主任研究員の庄司昌彦さんが、事例を紹介しながら議論した。

 ワークショップの聴講者のうち数人が、Twitterで様子を実況中継。もう1人の“Twitter議員”である衆議院議員の逢坂誠二さんも、北海道から議論の行方を見守り「参加したかった」と書き込むなど、Twitterらしいやりとりも行われた。

イランで何が起きたのか 情報戦とTwitter

画像 山崎さん

 イランで起きている大統領選をめぐる混乱で、改革派の情報交換ツールとしてネットが活躍している。イラン人留学生から話を聞いたという山崎さんによると、首都テヘランに住む知識層の若者が、情報統制をかいくぐり、TwitterやFacebook、FriendFeedを使って情報交換しているという。

 イランでは情報統制が厳しい。電話はデモが行われる夕方は使えなくなり、日本から電話しても「ムサビ(改革派の元首相)」や「選挙」といった言葉を発すると回線が切断されるそうだ。テレビは国営放送しか見られず、ニュースは改革派のデモをほとんど報じないか、「テロリストが暴れている」といった扱いという。

 海外ニュースを見るためのチューナー設置は違法で、海外メディアも取材禁止。新聞や雑誌は検閲され、削除された部分の白紙が目立っているそうだ。テヘランは私服警官や私服民兵だらけ。カメラを持ち歩くことはできず、現在出回っている国内の画像は、携帯電話で撮影したものという。

 ネットの利用も制限されている。回線速度が絞られ、動画はほとんど見られない状況。TwitterやFacebook、FriendFeedもアクセス禁止となっているが、改革派の若者たちは、海外のプロキシ経由で制限を逃れているそうだ。

 情報はTwitterの「ハッシュタグ」や「ReTweet」といった交流機能で米国など海外のネットユーザーにまたたく間に広がり、米国のTwitterにも改革派支持勢力ができている。米国の支持勢力は、アイコンの色を変えて支持を明確にしたり、プロキシを立ててネット利用をサポートしたり、イラン政府のアクセスブロック状況を解析しているという。


画像 Twitterに投稿されたイラン情報のまとめサイトも。国民の6割が30代以下という
画像 アイコンを緑色に変えて改革派サポートを表明

 イランからの情報発信が著しく制限されているため、米国のメディアはTwitterなどネットからの発信を注視し、それをそのまま報じることもあるという。米国国務省もTwitterに注目しており「Twitterがメンテナンスするとイランからの情報が入ってこなくなるので、メンテの延期を要請したと報じられている」(山崎さん)。

 イランをめぐる情勢は、ネット上での情報戦の様相を呈している。現職のアフマドネジャド大統領は地方での支持が高く、その政策に反対する改革派の若者は少数派だが、彼らがネット上で発信することで国際社会に強くアピールし、数の上での不利を逆転しているとみることもできる。情報源として頼られているだけに、意図的・意図的でないにかかわらず、デマも高速に流通する。

 日本にいるイラン人留学生は、改革派の戦略に賛否両論。「海外からの圧力を助長し、内乱を誘発する」と否定的な人もいたという。

 ネット情報を活用したイラン報道は、米国で議論を呼んでいる。New York Timesは29日付けの記事で、「Journalism Rules Are Bent in News Coverage From Iran」と題し、イランに関する報道は、ソースを確認して掲載するというジャーナリズムのルールを変え、TwitterやYouTubeなど、ネットに公開された情報をまず報道し、その内容を読者に検証してもらう――というスタイルが生まれていると紹介。報道規制がしかれた国の情報を個人が引き上げ、世界に伝えるという流れが生まれている。

米国では70人の上院・下院議員が利用

 “Twitter先進国”米国では、議員の利用も進んでおり、上院19人、下院51人が使っている。オバマ大統領の就任演説や、議場の様子を生中継した議員もおり、「新しい透明性が生まれた」「いや、不真面目だ」という賛否両論がわき起こったという。

画像 庄司さん

 庄司さんによると、米国政府はネット活用に積極的。Twitterに限らず、YouTubeやFacebook、Flickerなどで情報発信しており、政府のCIO(最高情報責任者)は「マスメディアに情報を出すより先に、Webの一般的なツールを使って国民に直接伝える」という戦略を示しているという。

 マスコミでのTwitterの扱いも「日本とはずいぶん違う」。有名人の発言がニュースで取り上げられるケースも珍しくないほか、「TIME」など雑誌でも頻繁に特集が組まれているそうだ。「人が変化した。ソーシャルウェアの使い方を分かっている人が増えた」――庄司さんはネット研究者、ハワード・ラインゴールドの言葉を引いてこう話す。

Twitter実況中継と政治、報道

画像 Twitter実況中継は、津田さんのTwitter ID(tsuda)から「tsudaる」と呼ばれることも。「この呼び方は嫌だったりするんですが……」(津田さん)

 日本の状況はどうだろうか。登録ユーザー数は明らかになっていないが、津田さんは8万人程度がアクティブに利用しているとみている。日本語の面白い発言をピックアップする「ふぁぼったー」がクロールした有効アカウントが8万程度だったことがその根拠。ユーザー数が拡大するにつれ、趣味の近い人同士が「クラスタ」としてゆるやかにつながっり、オフ会を開くことも。Twitterで知り合って結婚したという事例もあるそうだ。

 津田さんは2007年から、Twitterを使って審議会やシンポジウムなどを実況中継してきた。「ネットは政策などへ反応が遅すぎる」という問題意識があるため。Twitterでリアルタイムで状況を伝え、問題を指摘することで、できるだけ早いタイミングでネットユーザーに対応を促したいという。

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