「お金をもうけろと言われたので……。嫌ですね、不景気って。みんなすさんできちゃって」――@niftyの人気サイト「デイリーポータルZ」(DPZ)のWebマスター・ニフティの林雄司さんはつぶやく。
DPZは、どうでもいいことを真剣にリポートする日刊更新のWebサイトだ。月間ページビュー1800万、月間ユニークユーザー80万人の一大メディアだが、広告もほとんど掲載されておらず、お金の匂いがしないのが特徴。記事内容も、でっかいたばこの箱を作って隣にあるものが小さく見えるかを実験したり、食べ物を青くすると本当に食欲がわかないか試したりなど、身近でお金のかからないものばかりで、ギラギラしたネットビジネスの世界とは縁遠い。
収入源は、記事の下に申し訳程度に張ったAdSense広告と、TシャツやDVDなど、思いついたら作るグッズぐらい。はっきり言って大赤字だが、「これまでは会社からもあんまり、お金もうけろと言われなかった」ので問題なかった。
だが今年に入ってそうも言っていられなくなった。「上の人から、マネタイズを考えろと言われて……」。もうける姿勢を見せなくては、DPZの存続も危ういという。広告を入れるか、読者にお金を払ってもらうか考えた末、有料の携帯サイトをオープンし、読者から少しお金をもらうことにした。
「偉い人には『ファンクラブを作って寄付を募れ』と言われたんですが、読者を『ファン』と呼ぶのも偉そうかなと思って」、有料サイトの名前は「デイリーポータルZ友の会」。読者はファンではなく「友だち」と、対等な感じを出した。
友の会は月額105円。9月28日にまず、iモード向けでオープンし、年内にau、ソフトバンクに対応する。
PC版で日々更新している記事は無料で公開。有料会員向けには、記事の企画会議の議事録「うらデイリーポータルZ通信」や、本編記事の撮影のために同行したライター視点からの独自リポート、オリジナルFlash待ち受けなどを提供する。
議事録には、さまざまな企画の案や、それに対するほかのライターの反応が書かれている。これまで、ライター間でメールでやりとりしていたが、「面白くて、外に出したいなと思っていた」もの。「頭をものすごく使ってやせるダイエット」とか「インドのデリーに行って、デリーの小ネタ満載の『デリーポータル』を作る」など、会議の場での受け狙いで、いかにも無理っぽい面白企画案も満載だ。
Flash待ち受けは、林さんがActionScriptを学んで手作り。記事の名場面写真のスライドショーや、一定時間が来ると放流するダムの画像(林さんがダム好きなので)などを用意した。静止画もあり、DPZのオリジナルキャラクター「Zくん」のイラストなどをダウンロードできる。
会員向けコンテンツのアイデアは、ほかにもいろいろあったという。「会員がサイト上の区切り線を拡大すると、自分の名前が書いてあるとか、入会すると家に手紙が届くとか考えました。でも、コストが合わないのでやめました」
月額105円という価格は、ニフティの有料携帯サイトで最安値だ。「本当は80円とか90円にしたかったんです。デイリーに払うとしたら、まぁ、100円ぐらいですよ」と林さんはあくまで謙虚。「情報らしい情報もないので、情報料というのはおこがましい。サイトへのおひねりというか投げ銭というか、里親制度みたいな感じ」で、“友だち”からの温かい支援に期待する。
現在、DPZの収入源は、AdSense広告で月間60〜70万円、グッズが月間20万円ほどで、合計すると月80万円程度だ。友の会で会員が1万人集まれば、1万人×105円で105万円の収入が見込める。
対するDPZの運営コストは、ライターに支払う原稿料が月間200万円と、社員などの人件費が月間600万円程度。合わせると約800万円になる。友の会に1万人が入ったとしても総収入は200万円足らず。大赤字のままだが、「原稿料ぐらい出るといいなぁ……」
社内のほかのサイトと連携したタイアップ記事も始めた。「今年の春に、社内のサービスと仲良くして人を流し込みなさいと、上からすっごく言われた」から。「タイアップと友の会をやるのでDPZを続けさせてくださいと上に言っている」そうで、DPZの存続もかかっている。
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