米Microsoftがこのところの収益減少とWindows Vistaの不人気という状況に対処するには、Windows 7で実質的な成功を達成する必要がある。多くのSMB(中堅・中小企業)および大企業では、Windows 7を中心としたITインフラの更新が見込まれると指摘するアナリストもいるが、米eWEEKが行った聞き取り調査の結果は、企業でWindows 7が直ちに採用されるとか、誰もがWindows 7を待ちわびているといった状況ではない。
このためらいの背景には2つの問題が絡んでいるようだ。
1つの要因はコストだ。世界的な大不況の最中にあって、企業各社はIT予算を切り詰めており、IT機器更新のための投資にも消極的な姿勢を示している。この状況はPCの販売減少をもたらし、Microsoftのキャッシュフローにも影響を及ぼしている。同社の2009年第4四半期の売上高は、昨年同期比で17%の減少となった。
企業がWindows 7に慎重になっている2番目の理由として、Windows Vistaの影響がある。Vistaのメモリ要件、セキュリティ問題、そして多くのWindows XPアプリケーションとの下位互換性の欠如は、多くのユーザーをがっかりさせた。そしてこれらのユーザーの多くがWindows XPと古くなったPCを使い続けることを選択した。Deutsche Bankが7月に公表した報告書によると、2008年の時点で企業におけるPCの平均使用年数は6.1年だった。
防衛関連大手の米RaytheonでIT管理を担当するゲリー・ハイマン氏は「Vistaに出合わなければよかった。結局、Vistaを削除し、XP SP3と旧バージョンのOfficeに戻した」と話す。
ハイマン氏は、これは同氏の個人的見解であり、Raytheonの公式見解ではないことを強調している。とはいえ、現状ではWindows 7とOffice 2010を採用するつもりはないという。
「ユーザーフレンドリーで総合的なエクスペリエンスを改善する製品をMicrosoftがきちんと作らない限り、Windows 7やOffice 2010に移行するつもりはない。Vistaは利点が非常に少ない製品で、不要なコストを発生させた」とハイマン氏は語る。
こういった不満を抱くハイマン氏は「Appleに乗り換えることを真剣に検討している」と言う。さらに同氏は「Windows 7とOffice 2010に潜在的な価値があるとすれば、それはこれらの製品が従来版よりも高速で使いやすくなった場合だけだ」と付け加える。
Vistaをスキップしたので、Windows 7に直接アップグレードする予定だというIT管理者もいる。ロードアイランド州ウォーウィック市のMIS(経営情報システム)部門でネットワークと通信を担当するマネジャーのレイモンド・マッケイ氏も、そういった管理者の1人だ。新OSに関する当初の報道、そして同製品のプレリリース版を市役所内でテストした結果に基づき、「Windows 7はVistaよりもずっと良いという感触を得た」と同氏は話す。
マッケイ氏のオフィスでVistaを採用しなかった理由は幾つかあるという。予算上の制約に加え、同氏が当時使用していた機器の多くでドライバ問題があることが分かっていたからだ。
「われわれはActive Directoryも利用しており、新OSを管理するためだけにサーバをアップグレードする必要性は感じなかった」とマッケイ氏は語る。
Windows XPから一気にWindows 7に移行するには、ユーザーのデータをサーバにバックアップした上でクリーンインストールを行う必要があるが、マッケイ氏は以前からそのための計画を準備してきた。Windows 7へのアップグレードに向けた最初のステップとして、新OSがプリインストールされたマシンを購入するという形でデスクトップPCを更新し、その次の段階として一部の既存マシンに新OSを導入する予定だ。
これは相当大掛かりな作業になるが、重要なプロジェクトだという。マッケイ氏が管理しているデスクトップは老朽化が進んでおり、18カ月の間、システムの更新を行っていないためにアップグレードが必要となってきたからだ。
またWindows 7の新機能は、大学や研究機関においてIT機器の更新を促す可能性がある。
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