カリフォルニア大学サンタバーバラ校で環境科学・管理を担当するジェフ・ドージア教授が米eWEEKに語ったところによると、Windows 7の起動プロセスの改善と64ビット技術は同氏のプロジェクトで今後重要になってくるという。
「わたしはMATLABを利用しているのだが、32ビット版のWindowsではメモリが不足することがある」とドージア氏は話す。MATLABというのは、第4世代のコンピュータ言語だ。
Windows 7では、MATLABの64ビット版とSQL Server Expressを利用できるようになるのに加え、きめ細かなユーザーアカウントコントロールといった重要な機能が搭載されている。「Windows 7では、わたしのノートPCを普段は標準アカウントに設定しておき、管理者権限が必要なときには、パスワードを入力するだけでアカウントの切り替えができる」と同氏は期待する。
ドージア氏は、Windows 7のライブラリー機能にも魅力を感じている。
「わたしはファイルとフォルダを論理的に整理しており、これらは物理的な保存場所に対応する必要はない」とドージア氏は語る。同氏はリリース候補版(RC2)が出た後で同OSのテストを行ったという。「わたしが作業するフォルダと同期化している」と同氏は話す。
ドージア氏はWindows 7に移行する予定だが、Vistaも気に入っており、皆がこのOSをけなす理由がよく分からないという。
「Vistaがこれほど批判される理由が分からない」とドージア氏は話す。「わたしはVistaの新機能とユーザーインタフェースにすぐに慣れた。ただ、旧バージョンのWindowsの使い方を忘れてしまい、ユーザーからサポートを求められたときに困ることもある。Vistaでは、同期化機能がWindows XPと比べて改善されている」
中堅・中小企業も、IT機器の更新の必要性に関しては、大企業や大学と状況は変わらない。しかし不況の影響でIT予算の削減が続く中、これらの企業ではWindows 7を含めたシステムのアップグレードにはやや消極的なようだ。
ロサンゼルスの歯科医院でオフィスマネジャーを務めるジュディス・フリード氏は、「わたしの知っている歯科医院のほとんどは、今でもXPを使っている」と話している。「歯科医療プログラムがバージョンアップされて新OSが必要になれば、各医院ともVistaであれWindows 7であれ、サポートされているOSに移行するだろう。しかし新しいソフトウェアを採用するというのは、トレーニングのためにスタッフの時間が取られ、しかも、スタッフが操作に慣れるまで混乱が生じることを意味する。だから誰も急いではいない」
フリード氏の経験では、Vistaは比較的セキュアなOSだったという。
「わたしが管理するすべてのコンピュータを、ソフトウェア方式とハードウェア方式の両方のファイアウォールの内側に置いて、各種のウイルス対策プログラムやスパム対策プログラムを試してみた」と同氏は語る。「問題はほとんど起きなかった。ユーザーが不用意に悪質なプログラムを立ち上げてしまっても、問題はそのコンピュータに限定されることが多かった」
フリード氏は、オフィスのシステムをWindows 7に更新するのは、しばらく様子を見てからにするつもりだという。同OSに関する情報は収集してきたが、まだテストしていないからだ。「ほかのユーザーがバグと問題をすべて洗い出すまで待ってから、Windows 7が組み込まれた新規コンピュータを購入するつもりだ。恐らくProfessionalエディションを選ぶことになるだろう」と同氏。
Deutsche Bankの7月の報告書によると、Windows 7が10月22日リリースされれば、企業ユーザーはITインフラの大規模な更新に取り掛かる見込みだ。これに伴い、Microsoftのエコシステム内のハードウェアおよびソフトウェアベンダー各社の売り上げ増加が予想されるという。
「IT業界からの以前のフィードバック、ならびに当社が独自に実施したCIO(最高情報責任者)調査の結果は、大成功したWindows XPよりもWindows 7の方が普及が速く進む可能性が高いことを示している」と同報告書は結論で述べている。「これに伴うアップグレードサイクルは、全世界のソフトウェアおよびハードウェアベンダーの収益拡大につながる強力なけん引力となる可能性がある」
全世界の120社のITバイヤーを対象としてDeutsche Bankが実施した今回の調査では、Windows 7はWindows XPやWindows 2000よりも急速に市場に浸透する可能性があることが示された。回答者の約34%は、Windows 7がリリースされ次第、あるいは「比較的早期」(リリース後12〜18カ月以内)に同OSを導入するつもりだと答えている。これに対し、Windows XPとWindows 2000では、35%の普及率に達するのに丸2年かかった。
だがWindows 7の採用に関するそのほかのデータは、それほど芳しいものではない。これらのデータは、eWEEKが取材した企業ユーザーが示した迷いと符合しているようだ。
米ScriptLogicが7月に公表した調査結果によると、10社に6社の企業が10月のリリース時点でWindows 7を購入する予定はないと答えた。調査に協力した1000社の企業の5.4%が2009年末までに自社のITインフラに同OSを導入する予定であるのに対し、34%の企業が2010年12月までに新OSを導入する予定だとしている。
回答企業の35%は、すぐにWindows 7にアップグレードしない主な理由として経済状況を挙げたのに対し、42%の企業は「時間とリソースの不足」が第一の理由だと答えた。
景気が好転してこういった消極姿勢が転換するかどうかは不明だが、Microsoftは大幅な値引きや販促キャンペーンを通じてWindows 7を精力的に推進している(同社では、新OSのリリース前にVista搭載PCを購入したユーザーを対象としたWindows 7 Upgrade Option Programも展開している)。ちなみに、同社の2008年の収入の3分の1(約200億ドル)はWindowsの売り上げによるものだった。
Microsoftにとっては、収益減少に歯止めをかけるとともに、OS市場でAppleとGoogleの追撃を退けるためには、中堅・中小企業と大企業にWindows 7を早急かつ大々的に採用してもらう必要がある。しかしリリース日が迫る中、これらの企業が新しいWindows OSを受け入れるのか、従来版のWindowsシステムを使い続けるのか、それとも別のOSプロバイダーを検討するのか、状況は依然として不明だ。
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