ITmedia NEWS > ネットの話題 >

ブログ、ピグ、なう――Amebaが目指すもの

» 2009年12月22日 18時47分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 長瀬さん

 サイバーエージェントが運営するブログを中核としたネットサービス「Ameba」(アメーバ)事業が拡大している。今年に入ってアバターコミュニティー「アメーバピグ」、ミニブログ「Amebaなう」を投入。Amebaシリーズの総登録者数は10月時点で676万人に上る。

 急成長の背景には長期的な拡大戦略があったに違いない。そう考えて同社を取材すると肩すかしを食らう。「中長期的なビジョンはなく、先のことは考えていない」――同社で藤田晋社長とともにAmebaサービスを統括してきた長瀬慶重 新規開発局局長はこう言い切る。

 ただ「ネットを使う全員をターゲットにすえ、国内最大規模のネットメディアを目指す」という目標にはぶれがない。新サービス投入時も、「誰でも迷わず使えるUI」を重視するという。

 流行のサービスも分かりやすくかみ砕き、ユーザーテストを繰り返した上で、誰でも使えると判断できれば公開。人気が出れば機能改善を加え、Amebaシリーズのほかサービスとの連携も強めて主力サービスに育てる――という流れだ。

「なう」はブログやピグのユーザー向け

画像 アメーバピグ

 2月にスタートした「アメーバピグ」は、流行の仮想空間やアバターを、Amebaなりに消化したサービスだ。操作や導入が難しかったSecond Lifeなどと異なり、ITリテラシーの低いユーザーでも使いやすいようインタフェースを工夫。アバターデザインもかわいらしくし、取っつきやすくした。

 ほかのアバターのメニューをワンクリックするだけで相手に興味があることを示せる「グッピグ」など会話のきっかけも豊富に用意。「何をしていいか分からない」「見知らぬ人とは交流しづらい」など迷うことがないよう工夫した。仮想空間で撮影した写真をブログに掲載するなどアメブロとも密接に連携。ブログとの相乗効果もあって、オープン10カ月で会員は180万にまで拡大している。

 ミニブログ「Amebaなう」も、ブログやピグのユーザー向けに企画したサービスだ。「ブログに書くほどでもないちょっとしたことを、瞬発的につぶやくサービス」として設計。つぶやきは1カ月後には消える仕様だ。ピグのアバターをプロフィールに表示するなど、ほかのサービスとの連携機能も備えている。

画像 Amebaなう

 UIはTwitterにかなり似ている。ただまねをしたのではなく、さまざまなパターンでユーザーテストを繰り返した結果、このUIが最も使いやすかったため採用したという。

 なうは、CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)脆弱性をついたいたずらにも悩まされた。長瀬さんによると、この脆弱性はあらかじめ把握していたという。「新サービスは常に外部のセキュリティ企業のチェックを受け、危険度が高い順に対応している。指摘されたCSRF脆弱性は危険度のレベルが最高より1段階低かったため、年明けごろ修正する予定だった」が、問題が起きた翌日には修正した。

中長期的なビジョンは「ない」 個別最適を目指す

画像 Amebaサービスのユーザートップページ

 Amebaサービスは、ブログ、ピグ、なうに加え、ニュースサイト「アメーバニュース」、動画投稿「Ameba Vision」、コミュニティーサービス「グルっぽ」などがあり、それぞれが単体サービスとして使え、お互い連携もしている。

 全体で見るとSNSに近い機能がそろっており、Amebaのユーザートップページもmixiに似た構成。ブログの使用感もmixi日記に近く、友人登録した人限定で公開する「アメンバー」機能や、訪問ユーザーの足あとを確認できる「ペタ」などもある。


画像 アメモバのユーザートップページ

 モバイル版「Amebaモバイル」(アメモバ)のユーザートップページも「モバゲータウン」「GREE」など携帯SNSに似ている。GREEの「クリノッペ」のようにペットをかわいがれる「ブーシュカ」や、無料ゲームも備えている。

 AmebaはmixiやモバゲーのようなSNSを目指しているのだろうか。長瀬さんは「違う」と言う。「SNSを目指すのかとか、将来どうなりたいのかなどよく聞かれるが、中長期的なビジョンはない。どういうサービスを出せば面白いか短いスパンで考えて個別最適を目指し、サービス同士の連携もその都度考えている」

PV倍増へ 広告と課金を半々に

画像 PVは拡大を続けている(IR資料より)

 Amebaサービス全体(PC、携帯含む)の月間ページビュー(PV)は、2008年9月に56億3000万だったが、09年9月には107億とほぼ倍増。10年9月はさらに倍の200億を目指している。

 「PC版AmebaブログのPVはロボットによるアクセスを排除しておらず、ほかのブログサービスよりPVが多く出る仕掛けになっている」という批判もある。同社のIR情報にある9月のPV(約53億)は、第三者機関・ネットレイティングスが計測したPV(約19億)の倍以上だ。だが長瀬さんは「集計の仕方はほかのネットメディアと変わらない」と話す。

 「例えば、FC2の媒体資料を見ると、PVはネットレイティングスベースの2倍〜3倍出ている。それと比べればAmebaブログのPVもおかしくないのでは」

画像 ピグのアバターアイテムは5円〜300円前後。犬や猫などペットも購入できるが、780〜1200円と高価だ。「せっかくお金を払ったから」と愛着を持ってもらい、人に自慢できるツールとして、あえて高価に設定したという

 Amebaサービス事業は09年7〜9月期に初めて黒字化。収入の7割をブログなどに掲載する広告が占めているが、「ピグ」のアバターアイテムからの課金収入も急成長している。今後は課金にさらに力を入れ、広告と課金の割合を半々にしていく計画だ。

 ただ短期的なマネタイズよりは使いやすいサービス設計を優先。ユーザー規模をさらに拡大した上で、「スケールの大きな成功」を目指している。ピグは来春から海外展開するなど、世界を舞台にビジネスを広げていきたい考えだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.