薄くなった髪が増えて見える。モナリザに好きなせりふをしゃべらせられる。自分の顔で福笑いができる。そう、あの技術を使えば……。
1枚の顔写真から多彩な表情の3Dアニメーションを作り出す「MotionPortrait」(モーションポートレート)の活用が広がっている。開発当時「何に使えばいいんだろう」と思われていた技術に今、光が差している。
顔写真を3Dアニメ化し、録音したせりふに合わせて自動で口を動かすiPhoneアプリ「PhotoSpeak」は、昨年10月の発売直後から話題となり、6万ダウンロードを突破した。
イギリスの警察がMotionPortraitを使ってモンタージュ写真を3Dアニメ化したいと依頼してきたこともあった。同社が断ったため実現しなかったというが、使い道はまだまだありそうだと感じさせる出来事だ。
開発したモーションポートレートの藤田純一社長が「ぶったまげた」というMotionPortraitのあのリアルさが、さまざまな分野で生きている。
MotionPortraitは、ソニー木原研究所が開発した技術を同社が引継いで事業化した。技術の詳細は秘密だが、“肝”は独自の顔認識エンジンだ。
1枚の顔写真から目や鼻など特徴点を自動抽出し、3D画像へ変換。さらに、まばたきや微笑みといったリアルな動きを付けてアニメーション化する。特徴点は無数にあり、顔の各パーツの位置や形も詳細に検出できるという。顔写真から作成した3Dアニメに眼鏡を合成したり、瞳の色を変えるといった装飾も可能だ。
アデランスの増毛シミュレーションサイト「ヘアTRY」など、2008年度は15件のキャンペーンで採用された。PSP用ソフト「涼宮ハルヒの約束」でも活用されているほか、客の顔写真にさまざまな髪型を合成して見せる試みを店頭で行っている美容室もある。「髪を切るときもMotionPortraitで“インフォームドコンセント”が可能」(藤田社長)だ。
日本のテレビ番組で逃亡犯の顔写真を3Dアニメ化して見せたこともある。イギリスの警察からモンタージュ写真を動かしたいという依頼もあったが、「本人の顔と全く同じ表情を再現するわけではないため、エンタメ以外の用途は慎重に進めたい」と藤田社長は考えている。
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