下3枚の写真は「あかつき」の一番大事な部分で、5台のカメラが全部付いており、この面が金星を向く。つまり、全カメラが同時に金星を見るわけだ。写真1のコーナーには、上から順に中間赤外カメラ、紫外線イメージャ、1μメートルの赤外カメラ、2μメートルの赤外カメラが付いている。また、90度回ったコーナー(写真3)には、雷・大気光カメラがある。赤外カメラと紫外カメラの視野角は12度にそろえられている。カメラの解像度は1024×1024ピクセル(100万画素)で思ったほど高くないが、観測精度とデータ転送量との兼ね合いで決められたものだ。また、カメラを一定温度にする必要があり、2μメートルカメラは65ケルビンまで冷やす。
これらの開発には非常に苦労したそうだ。宇宙での実績のないカメラやセンサーが多いので、手探りで試作と試験を繰り返し、担当者達は何度徹夜したか分からないという。
さて、90度回った面(写真3の左面、写真4、写真5の右面)、それぞれの正反対の面は、銀色になっている。ここには日が当たらないので、内部からの放熱を行うのだ。逆に金色の部分は、日が当たるので外部からの熱を遮断するようになっている。太陽に近い金星だけに熱の扱いが厄介だったそうだ。アンテナも、通常のパラボラアンテナは放射器などに熱が集まってしまうので、使われていない。
また90度回ると(写真5のコーナー部と写真6)、メッセージパネルが取り付けられているのが見える。パネルの下に、姿勢制御や軌道制御(逆噴射)用の小型ロケットエンジン(スラスター)が写っている。写真2の面がきちんと金星を向くように姿勢制御するのだ。ただし、スラスターは頻繁には使わず、普通は衛星内部にあるモーメンタムホイール(大きなコマ。ハッブル宇宙望遠鏡などにも使われている)を使う。
さらに90度回った下の写真では、太陽電池パドルや大きな2つのスタートラッカー(恒星の検知器)が見える。金星で太陽光が強いので、太陽電池パドルは地球周回軌道上の衛星よりも小ぶりだ。また、写真には写っていないが、パドルの下(衛星の上面)に高利得アンテナがある。「あかつき」から地球へ32kbps〜4kbpsの速度でデータを送れる。
以上で述べた以外にも、計画の立ち上げや、トラブルを起こさないよう考え尽くした設計など、苦労話は枚挙にいとまがないそうだ。筆者も技術者なのでそうした話は想像・共感できるが、1つの目標に向かって10年間も努力し続け、1回の打ち上げに成否を賭けるというのは、とてつもない事だと素直に思う。
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