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出版不況でヒット連発 取次なしの“ネット的”出版社「ディスカヴァー21」(2/2 ページ)

» 2010年05月25日 09時12分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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ネットでも読者とつながる

画像 干場社長のTwitter

 社長自らブログTwitterを開設するなど、ネットも活用。読者とダイレクトにつながり、声を聞ける貴重な接点という。「電子書籍の衝撃」著者の佐々木俊尚さんとはTwitter経由で出会い、原稿依頼するなど、本作りにも生きている。

 「ITやネット界にはあまり詳しくない」が、活用し始めたきっかけは、勝間さんの「年収10倍アップ勉強法」が有名ブロガーに取り上げられ、ベストセラーになったこと。それ以来ブロガーと交流を持つようになり、自身もブログやTwitterも開始。Twitterのフォロワー数は1万6000人近くいる。

 内藤みかさんなどがTwitterに書いた140文字の小説を集めた日本初のTwitter小説集「Twitter小説集」も出版。一般ユーザーからTwitter小説を募集するコンテストTwitter小説大賞も開き、2000通以上の応募があった。優秀作は電子書籍化する予定だ。

 「ネット時代に対応できているのは、ネット以前から読者の方を向き、読者とダイレクトにつながることを意識していたからだろう」。干場社長はこんな風に自己分析している。

電子書籍サイトも「読者とつながる」ために

画像 電子書籍サイト

 昨年12月からは独自の電子書籍サイトを構築。電子書籍の販売にチャレンジしている。他社の電子書籍プラットフォームに任せず、あえて独自の電子書籍サイトを構築したのは、直取引と同様、「顧客情報が直接分かり、読者とダイレクトにつながれる」ためだ。

 「電子書籍の衝撃」は自社サイトとApp Storeで配信。自社サイトでは、紙の書籍発売前に110円のキャンペーン価格(定価は電子版が1000円、紙版が1155円)で配信し、Twitterなどでプロモーションした結果、1万のダウンロードがあったという。紙の書籍の売れ行きも好調で、発売から2週間で5万部刷ることが決まった。

 iPadやKindleのヒットをきっかけに電子書籍の話題が盛り上がっているが「まだまだ紙の本で読む人のほうが多いのが現実」という。「『電子書籍の衝撃』も、電子版より紙版の書籍の方が圧倒的に売れている。ただ紙なら読まないが電子書籍なら読む、という人もいるだろう。表現できる媒体が増えるのは、作り手としては面白い」

 新興の出版社の一角として、電子書籍が出版事業参入のハードルを下げることも期待している。「新規参入事業者が取次を通したり、直取引で全国数千の書店に配本するのは大変。電子書籍は流通のためのコストや人件費もいらず、初期投資を軽減でき、参入障壁もなくなる。個人や小さな出版社にもチャンスが広がる」

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