米Microsoftは、多くの人々がインターネットと聞いて連想する企業ではない。この巨大ソフトウェアメーカーは、何年も前からOS、Webブラウザ、オフィスプロダクティビティスイートを提供してきた。これらのソフトウェアは同社の事業基盤であると同時に、同社が四半期ごとに何十億ドルもの収入を稼ぎ出している最大の源泉でもある。Microsoftは自社のソフトウェアルーツに忠実な姿勢を貫いてきた。
Microsoftはこれまで幾度となく、WindowsとOfficeが同社の事業の中核であり、この状況はすぐには変わらないという考えを繰り返し語ってきた。ある意味では、Microsoftがこの戦略に従うのは正しい。同社にとってソフトウェア市場は依然として堅調だ。
しかしこの状況も近いうちに変わるだろう。
Microsoftにとって現在の戦場はインターネットだ。業務をクラウドに移行する企業が増えてくるのに伴い、Microsoftはこれらの企業を受け入れる態勢を整え、彼らが必要とするすべてのサービスを同社から購入させるようにする必要があるのだ。
Microsoftはこれまでに、Web上での事業展開に向けて、Azureの発表やBingの改良など幾つかの施策を実施してきた。しかし同社がインターネットで成功するためには、もっともっと多くの取り組みを実行する必要がある。米Googleは万全の態勢を整えて、Microsoftを粉砕しようと待ち構えているのだ。正しい戦略を打ち出さなければ、ソフトウェア業界の巨人は検索企業の新たな犠牲者になってしまうだろう。MicrosoftがWebで成功するための課題とは何だろうか。
インターネットの未来はクラウドにある。Microsoftはそれを知っている。Googleもそれを知っている。企業もそれを知っている。問題は、大多数の企業がいつ、業務処理をクラウドに依存し始めるかということだけだ。幸いにも、MicrosoftはAzureをWebに投入したことで、自社のオンラインビジネスに弾みをつけることができた。しかしそれだけでは不十分だ。企業とコンシューマーがクラウドへの移行を望んだ場合に、同社はそれを歓迎するという姿勢を鮮明に打ち出す必要があるのだ。クラウドベースのサービスでは、今のところGoogleが先行している。Microsoftはこの状態が続くのを許してはならない。
BingはMicrosoftのWeb戦略で最も重要な要素の1つだ。同社のこの検索ツールは、この1年間で市場シェアを拡大してきた。その結果、Googleは自社の計画の見直しを余儀なくされ、Bingと驚くほど外観が似ている新しい検索画面デザインを投入した。Microsoftは今後も、Bingでプレッシャーを与え続けなければならない。同社の検索エンジンはWebユーザーの琴線に触れており、同社が提供する多数の関連サービスは大きな効果を発揮している。Bingが成功すれば、MicrosoftはWebで成功するだろう。
Microsoftはこの転機に際して、Googleがインターネット上で一体何をやろうとしているのか理解することが重要だ。バルマー氏と同社が耳をふさごうとも、GoogleがWebのリーダーであることは事実だ。そしてこの状況はすぐには変わらないだろう。Microsoftはそのことを踏まえた上で、あらゆる分野でGoogleよりも一歩先に行かなければならない。同社が先行しているかどうかを知る唯一の方法は、GoogleのWeb戦略の本質を見極めることだ。確かにそれは容易なことではない。Googleはアイデアを秘密にしていることが多いからだ。それでもMicrosoftは見極める努力をしなければならない。自社の計画よりも先を行くことをGoogleに許すようであれば、Microsoftのオンライン分野での成功はおぼつかないだろう。
Microsoftは企業買収に乗り出す必要がある。何十億ドルもの現金を保有しているにもかかわらず、MicrosoftがWeb企業を積極的に買収してこなかったというのは理解に苦しむ。その理由は、Googleと比べると、MicrosoftがWebをあまり理解していないというのが真相のようだ。Webをよく理解しているWeb企業は何社かある。これらの企業は、Web分野でのMicrosoftの取り組みに大きく貢献する可能性がある。Microsoftが具体的にどの企業を獲得すべきかというのは、同社自身が判断することだ。しかし盛りだくさんの機能を提供するWebサイトを獲得することによって検索とWebサービスを充実させるというのが、最初のステップとしてふさわしいように思える。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR