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iPhone/iPad版のVOCALOIDが進化 GarageBandとのコラボ可能に

» 2011年09月12日 12時06分 公開
[松尾公也,ITmedia]
photo iPhone/iPod touchに対応

 VOCALOIDのiOSアプリは2つある。まずiPhone版の「VocaloWitter」。音程をつけたおしゃべりをYouTubeに投稿し、そのリンクをTwitterにつぶやける、お遊び系アプリだ。もう1つは、より本格的なiPadアプリ「iVOCALOID-VY1」。9月12日、後者がバージョン1.4.1から2.0にメジャーアップデートした。開発を担当したヤマハの赤澤英治氏に話を聞いてきた。

 「iVOCALOID-VY1」でまず大きく変わったのは、iPad専用アプリから、iPhone 4、第4世代iPod touchで使えるユニバーサルアプリになったということ。iPad版を買った人は、そのままiPhoneでも使える。iPhoneで使えるVOCALOIDアプリは、「VocaloWitter」と「iVOCALOID-VY1」の2つになった。

GarageBandと連動可能に

 「iVOCALOID-VY1」は機能面でも大幅に前進した。待望のアプリケーション間コピー&ペーストを実装。iOSの楽器アプリで事実上の標準となっているSonoma Wire Worksの「AudioCopy/AudioPaste」を採用し、この規格に対応したアプリにiVOCALOIDの歌声をペーストしたり、他の楽器アプリからバッキングトラックをiVOCALOIDに持ってきたり、といったことが可能になる。

photophotophoto iPad版のコピー&ペースト

 「iVOCALOID-VY1」は、リズムを主体としたバッキングトラックを流す機能を持っている。このトラックに、外部アプリで作成したオーディオをペーストできるのだ。ReBirth、KORG iELECTRIBEなどで作ったトラックをBPM(テンポ)情報ごと「iVOCALOID-VY1」に持ってきて、歌声を入れて完成、といったこともできる。

photophoto iPad版、iPhone版のバックトラック設定

 「iVOCALOID-VY1」で作成した歌声を、他のアプリケーションに持っていくことも、もちろん可能。一番使われるであろう組み合わせは、iPad版楽器アプリの標準と言えるGarageBandだろう。

photo GarageBandのAudioRecorderトラックにペースト

 GarageBandはAudioPasteのみの対応。外部アプリでクリップボードに入れたオーディオを、GarageBandのAudioRecorderトラックにペーストすることができる。GarageBandはドラム、ピアノ、ギター、ベース、シンセサイザーと、あらゆるiPadアプリで最も豊富な音源を8トラックまで編集できて、わずか450円。そこに「iVOCALOID-VY1」で作成した歌声を追加できる。これで、iPad内で歌入り楽曲を一気に完成域まで持っていくことができるというわけだ。

 iVOCALOID-VY1には長さで17小節までの制限がかけられているが、コピー&ペーストを使えば、さらに長い曲を作ることができる。GarageBandと組み合わせれば、多重コーラスも楽々作ることができるし、ピッチを変えたり、リバーブ以外のエフェクトもかけることができる。

photophotophoto iPhoneでもコピー&ペースト
photo 赤澤氏

 おもしろい使い方としては、iVOCALOID-VY1の音声をサンプラーの波形としてペーストすることができる、と赤澤氏。サンプラー機能を持ったNanoStudioなどではこういったことも可能だ。

 バージョン2.0では他のアプリとの連携以外も機能アップしている。縦軸をズームイン、ズームアウトすることが可能になったほか、途中からの再生がダブルタップでできるようになった。

 赤澤氏によれば、将来的にはVSQファイルの読み込みも可能になるという(これまでは書き出しのみだった)。クラウドを利用した楽曲の公開、日本以外でのアプリケーション販売など、やるべき課題は多い。当初から予定されていた、男声VOCALOID、VY2への対応もその1つだ。なお、Androidへの対応は現時点では未定という。

電車でモバイルコンポーザー

 一方、iPhoneアプリのVocaloWitterは600円から170円に期間限定で値下げ。iVOCALOID-VY1は2400円が1800円に、ディスカウントされている。GarageBandの450円と組み合わせても、たったの2250円。これでバッキングからボーカルまですべてiPadで制作することが可能になるのだ。

 これは、PCやMacでVOCALOIDを使うよりもはるかにハードルが低い。動画作成はパソコンに頼らざるを得ないが、楽曲を作るだけならば、iPadやiPhoneだけで、2000円ちょっとでできる。PCならばVOCALOIDだけで1万円以上、バッキングや編集を行うためのDAWを組み合わせるとさらに1万円以上を費やすことになる。「VOCALOID入門者はまずiPadで」も現実的な見方だ。

 今回のバージョンアップにより、外出先でもiPadやiPhoneをスタジオにできる、モバイルコンポーザーになれる。「電車の中でゲームをやっているようで、実は作曲している、そんなことができる」と、取材に同席したVOCALOID開発者、剣持秀紀氏は語る。

 モバイルDTMとしては万能と思われたGarageBandに欠けたたった1つのピースがいま出現した。電車でiPadをいじっている若者が、その日のうちに楽曲を完成させて投稿、人気に……といったことが今日から実現される。もちろんそれはオジサンでもかまわないはずだ。さあ、やってみるか。

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