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広がる「スマホ小説」 “1億総クリエイター”の時代に(2/2 ページ)

» 2011年10月27日 15時43分 公開
[小林伸也,ITmedia]
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photo 小説にとどまらず、多彩な作品を投稿できる

 合弁で運営しているドコモにとってはUGC(User Generated Content)サイトの運営は初めてだったが、現状には手応えを感じている。ドコモとしての新規事業の開拓と携帯電話の利用の促進が狙いだったが、「ユーザーの隙間時間に携帯を利用するユーザーにUGCがぴったりだった」とNTTドコモの田中慎二さん(スマートコミュニケーションサービス部ポータルサービス担当部長)は話す。ドコモが発売するスマートフォンのいくつかにはE★エブリスタのアイコンを置いて、お客様がたどり着きやすくするなどし、アプリをプリインストールできる強みも生かし、「今のところ非常に順調にいっている」という認識だ。

 収益源の多くは有料サービスからの収入で、スマートフォン会員の急成長が追い風となり、業績も好調だという。

 同様の作品投稿サイトには「魔法のiらんど」(アスキー・メディアワークス)や「野いちご」(スターツ出版)などがあるが、サイトごとにユーザー層や投稿作品の傾向に違いもある。「ライバルというよりは一緒に文化を創っていく仲間。その中でも、バッティングしている強豪はいないので、自分たちにしかできないことをやろうと思っている」という。

 今後、ソーシャル的な仲間募集機能などを実装していく予定だ。例えば小説の書き手が挿絵を描くイラストレーターを募集するといったことが簡単にできるようにする。実はこの機能、現在のコミュニティー機能などを使ってユーザーが既に実現してしまっているという。UGCサイトらしい動きだが、こうしたユーザーの活動をサイトの機能としてサポートしていくことが運営側の役割という考えだ。

個人の力をレバレッジ

photo ドコモの田中さん(左)とエブリスタの池上さん

 「ケータイ小説」といえば女子高生など若いユーザーを思い起こすが、E★エブリスタは当初から40〜50代の利用も期待し、写真や俳句など高年齢層の趣味としても人気のあるメニューをそろえた。実際、40代以上の利用は閲覧・投稿とも活発になっている。

 ドコモの田中さんも短歌を投稿した経験があるという。「そんなことをやる歳でもないのにと思ったんですが、コメントがついて、ランキングで2位に入ったんですよ。体験したことないうれしさでした」と振り返る。「そういう喜びを提供してくれるプラットフォームになったんだなあと……ランキングからは一瞬で落ちましたが」と笑う。

 「E★エブリスタ」というサイト名には、「みんな(everyone)がスターになれる」という意味が込められている。「電子書籍に限らず、個人の自己表現を支援するサービスになりたい。認めてもらいたいという欲求は誰しもあると思う。そうしたものをかなえられる、“1億総クリエイター”に夢を提供するプラットフォームになりたい。書籍など、他メディア展開もその1つ」と池上さんは話す。

 池上さんは「個人の力をレバレッジ(てこ)していく時代」だという考えだ。「国のために、殿様のために死ぬ時代があり、ちょっと前はそれが会社だったと思う。ようやくやってきた個人の時代は日本人にとってはとまどいがあるかもしれないが、こういったサービスで個人の成功事例があると、会社などのためにではなく、自分のために自分の才能を花開かせていけるようになるのでは」

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