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「ソニー復活を象徴するような製品を」──エレクトロニクス再建への道のりは

» 2012年04月12日 19時30分 公開
[ITmedia]

 「ソニー復活を象徴するような、世界中をあっといわせるような魅力的でイノベイティブな商品・サービスを市場に投入する」──就任したばかりのソニー・平井一夫社長は4月12日、エレクトロニクス事業の再建計画を説明した。

photo 平井社長(左から3人目)らソニー経営陣

 デジタルイメージング、ゲーム、モバイルの3領域をコア事業に位置付け、エレクトロニクス事業の目標に掲げた「14年度に売上高6兆円・営業利益率5%(3000億円)」のうち、3分野によるコア事業で売上高の約70%・営業利益の約85%の創出を目指す。

 一方、赤字が続くテレビ事業はコストカットを進めて13年度の黒字化を目指す一方、新技術「Crystal LED Display」を採用した新製品の投入も計画する。

デジタルイメージング──レンズ交換式は成長を

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 デジタルイメージング領域はイメージセンサーとデジタルカメラ、放送用機器をカバー。特に裏面照射CMOSセンサー「Exmor」を代表とするイメージセンサーはスマートフォン向け採用を進めるなどしてさらに拡大を図っていく。

 コンパクトデジタルカメラは「スマートフォンの普及で大幅成長を見込むのは難しい」(平井社長)が、「高いシェアを維持することで確実に利益を見込める」。レンズ交換式カメラは成長市場とみて、「市場の伸び率を上回る成長」を目指していく。

 今後、コアとなる技術を監視カメラなどのセキュリティ分野や医療用機器などにも広げ、カバー範囲を拡大していく。14年度にデジタルイメージングで売上高1兆5000億円、2けたの営業利益率を目指す。

ゲーム──PS3は収穫期

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 ゲームでは、プレイステーション 3(PS3)、PlayStation Vitaを中心に「圧倒的なエンタテインメント体験を提供するハード・ソフト」で確実に稼ぐとともに、PlayStation Network(PSN)などネットワークサービスの強化で全体を拡大していく。14年度に売上高1兆円・営業利益率8%を目標に掲げる。

 「ソーシャルゲームやカジュアルゲームが台頭し、事業モデルやユーザー意識は変化している。その中でもニーズを見極めながら、没入感あるゲームを提供していく」と平井社長は話す。発売から6年を経たPS3は「まさしく収穫期にある」。昨年発売のVita、新興国では需要があるというプレイステーション・ポータブル(PSP)の3プラットフォームを中心として「確実な利益を創出していく」。うわさも出てきているPS3の次世代機については言及しなかった。

 ネットワークサービスでは、PSNでのダウンロード販売の拡大や定額課金サービス「PlayStation Plus」の強化、Androidでプレステのソフトを楽しめる「PlayStation Suite」対応機器の拡大などを図っていく。

モバイル──半分の時間で製品投入

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 モバイル領域はスマートフォンのほか、Sony TabletやVAIOも含む。「Xperia」を開発してきたSony Mobile Communications(SMC)を完全にグループに取り込んだことで、各製品の開発から設計、販売・マーケティングまでを一体化。新商品の投入や新しいビジネスモデルの構築を進め、14年度に売上高1兆8000億円と収益性改善を目指す。

 スマートフォンは「ネットワーク対応を進めるコンシューマーエレクトロニクス製品のハブになる製品。クラウド化が進めばますます重要性は高まる」として強化していく。「SMCがリーディングポジションを獲得するにはスピード向上が必要」と改革に着手し、主要製品の開発から販売に至るリードタイムを従来の半分に短縮、スピーディーに市場投入していく。

 SMCの社長には、ソニーグループのエレクトロニクス事業全般を担当する鈴木国正執行役EVPが就任。XperiaとSony Tablet、VAIOの融合も進める。SMCの通信技術とノウハウにソニーグループのコンテンツなどを組み合わせ、「よりイノベイティブな製品を投入し、シェア拡大を図っていく」という。

テレビ黒字化へ モデル数削減も

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 8年連続で赤字に陥る見通しのテレビ事業。その黒字転換は「喫緊の課題」だ。

 既に昨年11月に収益改善プランを公表、韓国Samsung Electronicsとの液晶パネル製造合弁の解消によるパネル調達コスト削減などを進めているが、さらに見直しを進めてコストカットを徹底。13年度の固定的費用は11年度比で6割削減を目指す。オペレーションコストも3割削減を目標に、テレビのモデル数を12年度は前年度から4割削減。サプライチェーンの見直しなども進める。

 一方で「当面のボリュームゾーンは液晶テレビ。この領域でしっかりビジネスに勝ち抜く」と、リソースを投じて高画質化・高音質化と地域ごとのニーズを取り込んだ商品投入を継続。時期は未定ながらCrystal LED Displayなど次世代ディスプレイの商品化や、モバイル製品との融合による差別化など、魅力的な製品作りも進めていく。

 平井社長は「テレビはあらゆるコンテンツを楽しめるものとして家庭の中心にある。テレビはソニーのDNAでもある」としてテレビ事業の継続を宣言。「さまざまな可能性を検討していく」として、他社と提携する可能性も排除せず、幅広く考えていくとした。

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