「Mobage」(ディー・エヌ・エー)と「GREE」(グリー)というソーシャルゲームプラットフォーム最大手2社が相次ぎ「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)を廃止する方針を打ち出した。両社とも、両プラットフォームにゲームを提供している外部会社(サードパーティ)に対してもコンプガチャの終了を要請する方針。成長著しいソーシャルゲーム業界を揺るがしたコンプガチャ問題だが、社会の視線は厳しくなっており、問題がこれで収束するかどうかは不透明だ。
「ただちに法令に違反するという考えは持っていないが、社会的な問題提起もされている状況をかんがみ、今後、コンプガチャを順次廃止していく」。DeNAの守安功社長は5月9日午後、都内で開いた決算説明会で、コンプガチャを廃止する方針を明らかにした。今後ガイドラインを策定し、サードパーティ製ゲームを含めてコンプガチャを順次終了する。
それから数時間後。前日に「指摘があれば真摯に取り組む」と繰り返していたグリーも「コンプリートガチャの取り扱いに関するお知らせ」というニュースリリースを公表。コンプガチャを5月末までに既存タイトルを含めて全廃する方針を明らかにした。
「現行法上ただちに違法性があるものとは考えておりませんが、多くのお客様にご利用いただいているサービスを提供する社会的責任を負っている企業として、各方面からのご示唆を受けて、真摯に検討した結果、お客様に対するサービスの内容の向上を図るため、停止することとしました」──という説明は、実質的にほぼDeNAと同じ内容になっている。
それから1時間以上がたったころ、両社とミクシィ、NHN Japan、サイバーエージェント、ドワンゴの6社で構成する連絡協議会が5月末までにコンプガチャを廃止する方針を表明し、プラットフォーム各社からの“コンプガチャ追放”が決まった。サードパーティのKLabも「監督官庁から指導・要請される前に、業界側が自主的に規制することが望ましい」として、5月末までの廃止を公表していた。
倍々ゲームで増えていく売り上げと利益。急成長をとげたソーシャルゲーム業界だが、その裏では「当局が注目しているようだ」と規制問題もささやかれるようになっていた。
今年2月、グリーの人気タイトル「探検ドリランド」のバグで表面化したリアルマネートレード(RMT)問題を受け、各社はRMTの防止や青少年の利用額制限を設けるなどの対策を進めてきた。
だが4月24日、福嶋浩彦・消費者庁長官が、コンプガチャについて「場合によっては、景品に当たるということも考えられる」と景表法に抵触する可能性を指摘。コンプガチャは「ガチャ」と呼ばれるゲーム内アイテム販売システムを使い、ランダムに出るアイテムやカードを一定種類そろえる(コンプリートする)と、さらに貴重なアイテムやカードがもらえる仕組みだ。「射幸心をあおり、高額課金になりやすい」として批判が出ていた。
景表法は、過去に野球選手カードなどで社会問題化した「絵合わせによる懸賞」を禁じており、福嶋長官はコンプガチャがこれに抵触する可能性があるとの認識を示した形だ。さらに5月の連休に入り、一般紙が「消費者庁が景品表示法上、コンプガチャを違法と判断し、中止を求める」と報じて問題に着火。連休明けの株式市場は関連銘柄が一斉に暴落する“コンプガチャショック”とも言える状況になった。
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