違法ダウンロードに刑事罰を導入する改正著作権法について、文化庁は7月12日、改正内容についての見解とQ&Aを同庁のサイトで公開した。違法ダウンロードの刑事罰化に伴い、権利者団体が告訴する場合には「事前に警告を行うなどの配慮が求められる」などとしている。
改正著作権法は6月20日に成立。違法にアップロードされた有償の音楽ファイルや映像ファイルを違法であることを知りながらダウンロードした場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科す(親告罪)。またDVDのCSSやBlu-ray DiscのACCS、B-CASなどのアクセスコントロール技術を解除して行う複製、つまり市販DVDのPCへのリッピングなどは違法となる(罰則なし)。違法ダウンロード刑事罰化やDVDリッピングなどの違法化は10月1日から施行される。
一方、「写真の背景にイラストが写り込んだ」「街角の風景を動画で撮影したところ、流れていた音楽がたまたま録音された」といった場合、こうした写真・動画をネットで公開しても法的には問題ないとする規定を導入。また新製品や新技術の開発に著作物を使用する場合や、「動画共有サイトで様々なファイル形式で投稿された動画を提供する際、ファイル形式を統一するために必要な複製行為」なども法的に問題なしとした。
違法として刑罰の対象となるダウンロードは、(1)私的使用の目的で、(2)有償著作物の著作権・著作隣接権を侵害する自動公衆送信(サーバにファイルを違法アップロードして一般公開すること)を受信することで行うデジタル方式の録音または録画(ダウンロードとファイル保存)を、(3)その事実(有償著作物であること、違法にアップロードされたものであること)を知りながら行う場合──が当てはまる。
有償著作物とは「録音され、または録画された著作物または実演などであって、有償で公衆に提供され、または提示されているもの」。Q&Aは、例として「CDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されているような音楽作品や、DVDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されているような映画作品」を挙げている。
ドラマなどのテレビ番組は「DVDとして販売されていたり、オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品の場合」は有償著作物に当たるが、「単にテレビで放送されただけで、有償で提供・提示されていない番組」は当たらない(ただしこうしたファイルのダウンロードは刑事罰はないが違法になる)。
ネットでは漫画を撮影した動画が公開されていることもあるが、「漫画作品自体が録音・録画された状態で提供されているものではない」として有償著作物には当たらないとしている。また画像やテキストは「録音または録画」ではないため、ネットからコピーしても私的使用の範囲であれば違法ではなく、刑事罰の対象にはならない。
Q&Aでは「友人から送信されたメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルをダウンロードした場合」について、「自動公衆送信」に当たらず、違法でもないので刑罰の対象にはならないとしている。自動公衆送信とは、公衆(一般のユーザー)からのリクエストに応じて自動的にファイルの送信などを行うものをいい、一般的なWebサーバやWinnyなどのP2Pもこれに当たる。
違法配信されている音楽や映像を視聴するだけなら「録音または録画」が伴わない(ファイルを保存しない)ので違法ではなく、刑罰の対象外としている。YouTubeなど動画共有サイトの閲覧の際にPC上に作られるキャッシュについては「違法ではなく、刑罰の対象とはなりません」としている。だがその根拠となる条文(47条の8)の解釈次第では違法になる可能性も指摘されている。
音楽や映像が適法なものかどうかは「サイトに『エルマーク』が表示されているかを確認するという方法がある」と紹介。ただエルマークの普及は進んでいない現状もあり、「エルマークの表示されていないサイトにおいて配信されているコンテンツが全て違法であるということではない」としている。
違法ダウンロード刑事罰化で「インターネットを利用する行為が不当に制限されてしまうのではないか」という質問に対しては、処罰の対象が故意犯であり、「有償著作物であること」「違法にサーバにアップロードされたものであること」を知らなかった場合は対象にならないとしている。また参議院の付帯決議などで「政府と関係者は、インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならない」とされていることを挙げている。
このため(1)警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮する、(2)関係者である権利者団体は、仮に告訴を行うのであれば事前にしかるべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられる──という見解を示している。
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