7月11日にソフトバンクグループが開催した法人向けセミナー「SoftBank World 2012」。ソフトバンクグループのパートナー企業やユーザー企業がiPad・iPhoneの導入事例、活用ソリューションを紹介する中、やや異色の講演を行ったのがヤフー代表取締役社長の宮坂学氏だ。日本のインターネットサービス事業者の草分けである同社が掲げる「スマホファースト」という新たな方針と、法人向けサービスの注力分野であるO2O(Online to Offline)戦略について説明した。
ヤフーは1996年に「Yahoo! JAPAN」を開設して以来、16年にわたって日本のインターネットサービスのトップブランドの座を守りつつ、サービスの拡充を図ってきた。宮坂氏は、インターネットを利用する全ユーザーの活力となるサービスであり続ける「ユーザーファースト」の方針はこれからも変わらないとし、その一方で、新たな取り組みとして「スマホファースト」を掲げていると話す。
宮坂氏は、今まさにスマートフォンの世界で起こりつつある産業構造の変化を、PCのインターネットの世界で起きた現象を振り返りながら説明。それは、これまでインターネットサービス事業者の多くは、既存の産業にインターネットの力を組み合わせることで新たな市場を開拓してきた――ということだ。
例えば、消費者や企業がインターネットを通じて商品を売買するEコマースの市場は、20年前には世の中に存在すらしなかったが、Windows 95の登場とそれに伴うインターネットブームを経て、わずか15年ほどの間に約7.8兆円の巨大市場に成長した。これは小売業という既存産業とインターネットが結びついたことで生まれた市場である。
同様に、広告の世界では、ネット広告の市場が、ゲーム産業ではネットワークゲームやソーシャルゲーム、出版業では電子書籍といった具合に、インターネットの力によってさまざまな産業で新たな市場が生まれている。スマートフォンが国内で2000万人、世界で6億人に使われるようになった今、既存産業とモバイルの組み合わせによる新たなビジネスが登場しており、ヤフーでもこの流れへの対応を急ぐ考え。“PC向けサイトでサービスを立ち上げてからスマートフォンに対応させる”という従来の展開ではなく、“スマートフォンでの利用を前提としてサービスを開発する”というのが「スマホファースト」の考え方だ。
Yahoo! Japanの実績でも、PCからアクセスするユーザー数はほぼ横ばい、フィーチャーフォンからのそれが漸減傾向であるのに対し、スマートフォンはかつてない勢いで伸びている。携帯電話からのページビューを見ても、今年に入って既にスマートフォンからのアクセス数がフィーチャーフォンを上回っているという。つまり、“モバイルインターネットの主役はスマートフォン”といって差し支えない状況になりつつあるわけだ。
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