蔵書を電子化する“自炊”を業者などが代行することを許諾する代わりに著作権使用料を徴収するなどのルール作りを検討する「Myブック変換協議会」(正式名称:蔵書電子化事業連絡協議会)を作家や漫画家の団体などが設立した。Facebookページもオープンし、意見を募っている。
日本文芸家協会、日本写真著作権協会、日本漫画家協会とヤフーが幹事団体として設立。作家の三田誠広さん(日本文芸家協会副理事長)が会長を務める。
同団体では、(1)蔵書電子化についてルールを策定し、(2)これに従う事業者に対して電子化の許諾を与える取り組み──を検討していく。許諾は日本文芸家作家協会の作家を中心に賛同する作家が許諾する形とし、また違法流通対策として、代行業者に対しては電子化済み書籍の処分や電子ファイルの厳重管理を行うなどを求めていく考えだ。具体的には今後議論していく。
Webサイトには「これまで著作者はわがままだと言われてきました。でも、実はそんなにわがままじゃないんですよ。なので、今回は著作者が言い出しっぺでこの会を作りました」といった率直な説明が掲載されている。
紙の書籍をスキャナなどで電子化する“自炊”は、持ち主が自ら行う場合は著作権法が認める私的複製の範囲内だが、業者に電子化の代行を依頼する場合は私的複製とは言えず、著作権侵害に当たるとして、東野圭吾さんら作家が代行業者を訴えたケースもあった。
協議会は、
「私たちは、電子ファイルが違法に流通することを何としても止めたい、と強く思う一方で、家庭の本棚の蔵書を電子ファイルに変換して、みなさまご自身により便利に使っていただけるようにすることによって、日本の読書習慣をデジタル化時代にふさわしい形で維持発展させていくことにつながるのではないか、とも考えています」
──と趣旨を説明。また会長の三田さんは、
「『便利になった』という利用者の実感を無視して、規制を強めるだけでは、多くの利用者を敵に回すことになります」
「処分する本をただ廃棄したり、古書店に回したりするのではなく、費用を出してでも電子ファイルとして残したいという人は、本当に本が好きな人ではないでしょうか」
──と電子化の代行を依頼する読者に理解を示し、
「単に批判したり法律で規制するだけではなく(法律を改正しても過去の書籍には遡及しないという問題もあります)、利用者の利便性を確保しながら、権利者の権利を守る新たなシステムを構築できないか。そのことを著作者、出版社などの権利者と、利用を促進しようとする業者とが、共通のテーブルについて、真剣に議論したいというのが、わたしたちの協議会の趣旨です」
──と説明している。
4月19日には、「蔵書電子化の可能性を探る」をテーマにしたシンポジウムを東京・秋葉原で開催し、三田さんらが参加する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR