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SEから世界一に返り咲き 「TED 2013」に唯一出演した日本人・BLACKさんのヨーヨーと“再起”(3/3 ページ)

» 2013年06月07日 14時36分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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社長や教授、VIPが続々と…… AIMで磨いた英語力でしのぐ

 「すばらしいパフォーマンスだった。ラスベガスに呼びたいからメールアドレスを教えてほしい」。本番終了10分後、見知らぬ人からこんな連絡を受けた。「TED Connect」という参加者同士のSNSで届いたメッセージ。Amazonに買収された靴の通販「Zappos」CEOのトニー・シェイ氏からのものだった。

 その後の休憩時間や夕食会でも、賛辞と質問を浴び続けた。「会社を辞める決断どんな気持ちだったの?」「情熱を持つというテーマで、教育関係に力を貸してほしい」「これからの時代のロールモデルになってほしい」。話しかけてくるのは、ほとんどが会社社長か、大学教授だ。取材攻勢も激しく、米CNNなどから取材を受けた。


画像 会場で質問攻めに
画像 CNNから取材も

 BLACKさんの英語力は「ギリギリ。超疲れました」と笑う。中高生時代は赤点すれすれの成績だったという英語。会話ができるようになったのは、大学生のころ「世界のヨーヨー仲間と話したい」と、メッセンジャーソフト「AIM」のIDを国際的なヨーヨー掲示板にさらし、英語でテキストチャットを始めてからだ。「時差があるので、海外の人と会話できるのは夜中。大学の授業中は爆睡していました」と振り返る。

TEDで「世界が広がった」 日本からの反響は……

 TEDのパフォーマンスがきっかけで、世界各地の企業のパーティーやイベント、カンファレンスに呼ばれるようになった。以前、ヨーヨーでテーブルクロス引きをする動画をYouTubeにアップして人気となり、台湾など海外から呼ばれたこともあったが、今回は規模が違った。米国、メキシコ、コロンビア、ドバイ、マカオ、インドネシア、マレーシア……パフォーマンスやプレゼンの依頼だけでなく、教育関連事業に関わってほしいという依頼まで受けた。

 「呼んでもらえるステージが一気に変わった」と実感している。ヨーヨーそのものが認められただけでなく、自らの半生を振り返ったプレゼンが評価され、教育に生かせる可能性まで認められた。「一気に世界が広がった。ヨーヨーという狭い業界にとらわれていたかなと思った」

 最近は、「毎日、迷惑メールのフォルダをチェックしている」という。英語のメールが迷惑メールに振り分けられていないか確認するためだ。

 一方で、日本での反響は「ほとんどなかった」という。「海外が好きというわけではないが、評価してもらえる場所が海外しかないから、結果的に海外になってしまう。国内でもオファーがあれば、出る気はまんまんなのだが……」

 日本でも、TEDの経験をシェアしたいと話す。プレゼンのやり方や、TEDのようなイベント開催のノウハウなど、話したいことはたくさんあるという。

「一番の悩み」は……

 これからやりたいことは?――そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。「それが一番の悩みです」

画像

 TED出演が決まる前、シルク・ドゥ・ソレイユの舞台や、ヨーロッパで開かれる「サーカスフェスティバル」出場を目標に技を磨いていた。だが急遽、TEDに出演し、成功を収めた。「TEDは目指していた場所よりさらに上。その上が見つからない」

 「新たな“世界チャンピオン病”にかからないかと不安」と明かす。「世界大会で優勝した時と違い、評価はされているが、そのせいでモチベーションが下がらないかが不安。仕事の依頼はたくさんいただいているし、やったことのない分野の仕事もある。背伸びするぐらいの依頼を受けることで成長し、その中で次の目標が見つかれば」

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