「講義の合間に3Dプリンタで友人へのプレゼントを出力」――近未来小説のような情景が現実になりつつある。慶應義塾大学義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のメディアセンター(図書館)に4月から3Dプリンタ「Cube」が4台設置され、1階中央部にカラフルなおもちゃのような機材が並ぶ。簡単な利用手続きをすれば、学年や専攻に関わらず自由に使える。
出力したいデータは3Dモデリングのソフトで作成し、専用のアプリケーションを経由して3Dプリンタから出力する。一般的な画像やテキストを変換して小物やアクセサリーを作ったり、デザイン系や建築系の学生が講義の課題などを制作している例もある。人気があるのはiPhoneケース。ネット上にすでにデータとして共有されているものをダウンロードして使えるため、3Dプリンティング初心者でも比較的挑戦しやすいようだ。
市民が自由に使える工房の設置を進める「FabLab Japan」の発起人でもある同大環境情報学部の田中浩也准教授が「全学生が日常的に触れられる場所」に3Dプリンタを導入することを提言したのが昨年秋。米国では全公立小学校への設置が決まるなど世界的にトレンドとなっているが、日本ではまだなじみは薄い。「最初は何ができるのか、どんなものなのかわからなかったが、一目見て面白いと思った」(SFCメディアセンターの長島敏樹事務長)。
半年間の準備期間を経て、4月8日に4台の3Dプリンタを設置した。多くの学生の目に触れるよう、1階中央部に「ファブスペース」を作ったが「とりあえず置いてみたものの、どれくらい使われるかまったく見当がつかなかった」(マルチメディア担当の長坂功さん)。通りがかりに立ち止まり、物珍しそうに眺めていく人は目立つものの、稼働率が低い日々が続いた。
使い始めたのは、ゼミや研究室で利用経験のある学生が中心。3Dプリンタを中心に「『何やってるの?』『どうやってやるの?』と友人同士で会話が発生」(長坂さん)し、輪は広がっていった。のべ利用者数は4月は42人、5月は66人。入学したばかりの1年生も含め、学年による偏りはほとんどない。満席で待ち時間が発生することも増えてきたという。
長島事務長が「自分の専攻や研究とは直接関係ない学生にこそ使ってもらいたい」と話すように、プロジェクトの目的は考えや構想をアウトプットしたりプロトタイプを制作する手段の1つとして身近に使ってもらうこと。「レポートを紙で印刷するように、課題を3Dプリンティングするのが当たり前になるかもしれません」
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