ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

「ロボットにとっては大きな一歩」──「KIROBO」、8月にISSへ打ち上げ 若田飛行士の相棒に

» 2013年06月26日 19時13分 公開
[ITmedia]
photo KIROBOを手にする高橋さん

 人型ロボット「KIROBO」が8月4日、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられることが決まった。KIROBOは音声認識によって会話機能などを備え、宇宙飛行士の若田光一さんの“相棒”として、世界初となる宇宙での会話実験に挑む。6月26日に都内で開かれた完成発表会で、KIROBOは「これは小さな一歩ですが、ロボットにとっては大きな一歩です」と自らあいさつ。プロジェクトメンバーは「ロボットと共生する夢の未来を宇宙という舞台から世界に発信したい」と意気込んでいる。

 電通と東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力で進めてきた「KIBO ROBOT PROJECT」が開発。宇宙に打ち上げられる「KIROBO」と、バックアップ用の地上用ロボット「MIRATA」の2体で、それぞれ身長34センチ、重さ約1キロ。デザインなどは数々のロボットを手がけてきた高橋智隆さんが代表を務めるロボ・ガレージがまとめ、トヨタが音声認識や自然言語処理による知能化を、電通がコンテンツなどを担当した。双葉電子工業なども参加しており、日本のモノ作りへの「KIBO」も込められている。

photo 電通の西嶋褚親さん(左)、高橋さん、MIRATAを持つトヨタの片岡史憲さん

 KIROBOは8月4日午前4時48分ごろ、ISSへの補給機「こうのとり」4号機に乗り、H-IIBロケット4号機で種子島宇宙センターからISSに向けて打ち上げられる予定。到着後、宇宙で初めてKIROBOが発話する様子が披露される予定だ。11〜12月には若田さんがISSに到着、会話実験を開始。来年12月以降、地球へ帰還する予定だ。

 ISSでは、KIROBOが若田さんに実験の手順を伝えたり、日常の会話を通じてコミュニケーションが育まれるのを期待する。コミュニケーションの様子はKIROBOのカメラで記録し、希望する研究者に対しデータを提供することも検討するという。

photo
photo

 KIROBOはISS内で電源ケーブルに接続して稼働する。バッテリーはISS内部での持ち込み規定などが厳しく、ケーブル接続による稼働が最も有効だと判断したという。また微少重力下では熱による空気の対流が起こらず、熱い空気がたまったままになってしまい故障のおそれがあるため、ファンを内蔵して強制的に空気を循環させる構造にしているという。打ち上げ時の振動試験、無重力試験など、KIROBOは宇宙に滞在するためにさまざまなハードルをクリアしてきた。

 パナソニック「EVOLTA」のロボットなどを手がけてきたロボ・ガレージの高橋さんは「画面の中のバーチャルなキャラクターでいいのではないかという人もいるだろうが、画面上で動くキャラでは感情移入が難しい。現在は実体のあるリアルなものに戻ってきつつあり、今は大きな転換点にあるのではないか」とみる。

 iOSの「Siri」など音声認識によるエージェント機能が相次いで登場しているが、「期待されていたほど使われていない。四角い箱に向かって話すことに抵抗感があるのではないか」という。「人との関係性を築いていく上で、ヒューマノイドロボットにとってデザインはとても大切」とし、「物理作業をしないのであれば力持ちである必要はなく、小型のほうが好ましい。小型のほうが能力が相対的に高く見えるメリットもある」という。

 高橋さんが描くのは、ロボットがパートナーとして人間と共生する社会。「世界初のプロジェクトを成功させ、ロボットと暮らす夢の未来を宇宙と日本から発信したい」とKIROBOに希望を託す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.