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「作ろう」を、若年層に届けたい 「初音ミク×Tカード」に込めた、クリエイター育成への思い(1/2 ページ)

» 2013年06月28日 11時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 初音ミク×Tカード公式サイトより

 全国のTSUTAYAやファミリーマートなどで使えるポイントカード「Tカード」が初めて、キャラクターと本格的にコラボレーションした。初音ミクのイラストが入った「初音ミク×Tカード」の発行受け付けをこのほど開始。TSUTAYAで申し込みできるTカードと、ファミリーマートで申し込み可能な「ファミマTカード」があり、それぞれ券面にミクのイラストをデザインしている。

 券面にキャラクターをあしらう試みは銀行カードやクレジットカードなどでよく行われているが、今回のTカードは、ただのキャラクターカードでは終わらない。「音楽や映像のクリエイターを増やしたい」。Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と、初音ミクの開発元・クリプトン・フューチャー・メディアは、初音ミク×Tカードにこんな思いを込めている。

少額ポイントでクリエイター向けツールが当たる

 企画のキモは、「Tポイント」をためると応募できる、カード利用者限定の特典だ。5〜39ポイント(5〜39円相当)という少額のポイントで、音楽やイラスト制作に利用できるハードやソフトのクーポンがもらえたり、初音ミクグッズのプレゼントに応募できたりする。クリエイター向けツールの還元率を大きくすることで、「クリエイターを増やしたい」という思いを形にした。

 例えば、5ポイント使えば、クリプトン・フューチャー・メディアが販売する音素材販売サイト「SONICWIRE」の500円割引クーポンに応募可能(当選者数1000人)。10ポイントならイラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」のダウンロード版(通常5000円)を3939円(1061円割り引き)で購入できるクーポンや、人気クリエイターのイラストの制作過程が分かる「イラストPDFブック」プレゼントに応募できる。当選者数は3939人とかなり多く、“全員プレゼント”になる可能性も高い。


画像 ポイントで応募できるクリエイター向けツール
画像 人気クリエイターのイラストの制作過程が分かる「イラストPDFブック」も

 VOCALOIDソフト「初音ミク」「初音ミク Append」のセット(実売3万円前後、当選3人)や、ペンタブレット「Bamboo Fun small」(実売9000円前後、当選3人)といった、比較的高額なソフト・ハードの抽選にも39ポイントで応募可能だ。音楽やイラスト制作に興味はないが初音ミクが好き――という人のためにも、39ポイントで抽選に応募できるミクグッズを多彩に用意した。特典は今後も継続的に追加していく予定だ。

 ポイントプレゼントやクリエイター向けサイトは序章に過ぎない。まずはユーザーの反応を見て意見を聞きながら、次のステップに進んでいきたいという。

「作ろう」を、若年層に届けたい

 歌声を制作できるVOCALOIDソフト「初音ミク」誕生から6年。歌の制作をもっと気軽にし、まるでブログを書くように、誰でも気軽に曲を作るようになってほしい――開発元のクリプトン・フューチャー・メディアはそんな思いで、ミクのムーブメントを支えてきた。

 この6年間、キャラクターとしてのミクへの注目も高まり続けてきた。昨年から今年にかけては、ファミリーマートドミノ・ピザなど大手チェーンとのコラボレーション企画が成功を収め、ファン層は小中学生にも拡大。ドラえもんやキティちゃんのような、「生活動線に入るキャラクター」としても受け入れられる可能性があると、クリプトンの佐々木渉さんは感じている。

 「小中学生が動画や音楽を作りたいと思った時、ツールを提示したい」――Tカードとのコラボレーションには、そんな思いがある。ミクの歌声やキャラクターに興味を持った小中学生に自分で作り始めてもらうため、音楽やイラストを作るためのハードやソフトを、少額のTポイントと引き替えに提供したいという。

 以前は、音楽やイラストを作るためのハード・ソフトは家電量販店でも目立つ場所に置かれていたが、「最近はすごく隅にある」(佐々木さん)という。TカードやTSUTAYA、ファミリーマートといった「人目につく」場所でクリエイティブツールを使った企画を行うことで、「物作りを始めましょうというキャンペーンを打ち、若い、思春期の子に届けたい」と佐々木さんは話す。

Tポイントという“仮想通貨”でクリエイターに還元を

 ネット上の創作やコンテンツ消費が盛り上がる一方で、コンテンツを無料で利用するのが当たり前になり、創作者への金銭的な還元が大きな課題になっている。コンテンツ消費に「Tポイント」が介在することで、クリエイターへの新たな還元の仕組みを築けないか――「理想論」としながらも、佐々木さんはそう述べる。

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