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ベンチャー投資、今こそ好機――サイバーエージェント、合宿型ビジコン開催 藤田社長が審査、最大3億円出資

» 2013年12月03日 11時40分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 「1泊2日で運命が変わる会社がいくつも出てくると思います」――サイバーエージェントは12月3日、創業2年未満のスタートアップ企業を対象とした合宿型ビジネスプランコンテスト「第1回 スタートアップ版あした会議」の参加者の募集を始めた。藤田晋社長自らが事業計画へのアドバイスと最終審査を行い、優秀プランには最大3億円の投資を行う。

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 同社が2006年から年2回実施している、経営陣による新規事業の立案や経営戦略に関する決議をする合宿「あした会議」のノウハウを生かし、スタートアップ向け企業向けにカスタマイズする。3月に1泊2日の合宿形式で行い、15社程度の規模を想定。インターネット関連企業に限らず、幅広い業種から募集する。

 子会社の社長などゼロから新規事業を立ち上げた経験のあるメンターが各チームに1人ずつ入り、事業計画にアドバイス。ビジネスモデルのブラッシュアップはもちろん、仮に資金提供を受けた際の用途、採用計画など現実的で具体的な課題についても検討する。事業プランは藤田社長をはじめとする経営陣が自ら審査し、優秀プランには最大3億円の投資を行う。代表者だけでなく2〜3人のチームでの参加を推奨し、単なる資金獲得ではなく事業全体の今後の展望を描く場にしてほしいという。

 審査で重視する点は「やりきる力」。価値があるのはアイデアではなく実現可能性を高める努力であり、聞きたいのは「想像や願望ではなく今ある現実や課題にどう向き合うか」(藤田社長)だという。すでに事業化しているチームだからこそ直面している具体的な壁に対して、ひとつずつクリアしていく道筋を評価する。

「ベンチャー投資に適したタイミング」

photo 藤田晋社長

 同社は10月、ベンチャーキャピタル(VC)子会社のサイバーエージェント・ベンチャーズと別に、藤田社長直下に「投資事業本部」を設立。第1号案件のECショップ作成サービス「BASE」に続き、ミドル・レイターステージのネットベンチャーを中心に支援していく予定だ。スマートフォン関連ビジネスが成熟し競争が激しくなる中、これから立ち上がる企業にもきちんとした事業の展望を求められる今こそ「ベンチャー投資に適したタイミング」(藤田社長)と話す。

 「ライブドア事件から数年はお金の動きも鈍かったが、未上場の会社に対するリスク意識も大きく変わってきた。むしろ今はVCの資金がだぶつき、有望な案件に過剰に集中しがちな傾向すらある。スタートアップ支援も含めた生態系全体を活性化していくためにも、まずは見込みのある芽を増やしたい。今回のプロジェクトは、事業立ち上げの経験者が深く入り込んだアドバイスをすることで有望事業のタネを“化けさせる”試み」(藤田社長)

 藤田社長がサイバーエージェントを創業したのは1998年。今年で設立15周年を迎えた。「長く続けるのは何より難しい、常に危機感はある」としながら、激動のネット業界の中で成長し続けている理由として「時流を読んで早めに判断する姿勢」を挙げた。

 「新事業開始や子会社設立も含め、プレスリリースで知らせる内容のほとんどは『あした会議』で決議している。日々の業務で先送りにしてしまいがちなことに腰を据えて向き合うことで、大きな判断を迷わず先んじて出来ている」(藤田社長)

 自らの歩んできた道を振り返って「投資の有無に関わらず、エネルギーのある経営者が近くにいたことは大きかった」と話す。「正直、自ら事業を立ち上げた経験がない人でもそれなりに理屈の通ったアドバイスはできてしまう。とはいえ、実際にピンチをくぐりぬけてきた人の話を聞くのは全然違う。この合宿でのメンター制度もそんな出会いになれば」とつながりの今後の広がりにも期待を見せている。

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