自分の掲示板も作ったが、非公開設定で1人黙々と描いていた。お絵かき掲示板のペイントツールは描きやすかった。Photoshopと違い、メニューに迷わず動作も軽く、PCが落ちることもなかった。下書きしてペン入れし、色を選んで塗って……1枚完成させるのに長い時で7時間かかったが、何とか完成まで持って行けた。
絵を描くことはあくまで「自己満足」。だが、彼女の才能が世に知れ渡ることに期待する夫からは、「人に見せなくては意味がない」と叱られた。でも怖かった。「ヘタレなんです。描いたものに対して責任を持つべきという思いがあって。不用意に嫌な思いをさせてしまったり、批判されたらどうしようと。絵って、全部が個性なので、張り合うような世界でもないですし」
結局夫に根負けし、「モジモジしながら」お絵かき掲示板に描きに行き、自分の掲示板も公開した。掲示板に描くと、自分のところにお礼に描きに来てくれる。そのお礼にまた描きに行く……掲示板仲間との交流を深めていった。
お絵かきソフト「SAI」を使い、ローカル環境での作画もできるようになった。「お絵かきに特化していて、塗りや線のタッチは設定をいじらなくても出したい感じが描けた」ため、Photoshopのようなストレスはなかったという。
「イラスト系のSNSができるよ」。お絵描き仲間から教えてもらったサイトがpixivだった。「わ、これはすごい」と一見して思った。「お絵かき掲示板より規模が大きくて、作画ツールも画像サイズも無制限。いろんなタイプの描き手がめいめいにアップしている。世界がぐっと広がりました。ネットは広大だ……と」
レベルの高い絵が大量に集まるpixivは、「見て学ぶ」最高の教材だった。「せっかく素敵な絵がいっぱいあるんだから、もっといろんな方の絵を見て勉強したい」。気に入った絵をひたすら見た。線の強弱、輪郭の色、塗りのタッチ、光の表現……見て、見て、見て、まねして描いて、見て、見て……「pixivからは見ることの恩恵を受けました」。
投稿するのは怖かった。お絵かき掲示板でも緊張していたのに、はるかに広大で、うまい人がたくさんいるpixivは「緊張が半端なかった」。だがここでも夫に強く背中を押され、イラストを投稿した。コメントをもらって交流したり、pixivで知り合った人と同人イベントで挨拶するなど交流も広がった。
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