「pixivをきっかけに、お絵かきの世界も変わってきたのではないか」。そんな印象を持っている。pixivで素敵な絵を描いている人がイラスト雑誌でも活躍したり、紙のイラスト集が出たり……ネットの“お絵かき”が個人間の交流を超え、リアルのメディアや場に広がっていった。
同人イベントへの参加も始めた。お絵かき掲示板で知り合った友人と合同誌に3ページの漫画を初めて描き、「短い話なら描けるんだ」と自信が付いて個人誌にも挑戦した。
個人誌で初めて同人イベントに参加したときは、「売れるわけがない」と思っていた。エロでも版権物でもない、女子の日常を描いたオリジナル漫画は“売れ筋”からは遠い。どうやって時間をつぶそうか――そればかり考えていたが、用意した40冊はすべて売り切れた。「自分にはもったいないぐらい来てくださった」
合同誌に年に1回参加し、個人誌は多い時は年4回、出し続けている。「できることなら“ちゃらぽこ”生きていたい」タイプで、怠けたくなってしまうが、“イベントの締め切り”という強制力のおかげで、なんとか描き続けられているという。「継続って本当に大事だなと。本を出すと決めて、どんなものであれ、とにかく描いて出して、それを繰り返すことが自信になった」
漫画は当初、SAIとPhotoshopで描いていたが、イラストコンテストに入賞して漫画制作ソフト「ComicStudio 4.0」(コミスタ)をもらい、コミスタで描き始めた。もし、ケント紙にGペンや丸ペンで描く手描き漫画だったら、「もっと敷居が高かったと思う」。手描きは失敗したら修正が大変だが、コミスタなら何度もやり直しが効くし、枠線なども簡単に引ける。「コミスタやったからなんとか、仕上げまでできた。便利すぎると思うぐらい」
個人誌を出し始めてから1年あまり経ったころ、pixivで届いたメッセージに目を疑った。「ネームコンペに出してみませんか?」。同人誌を読んだスクウェア・エニックスの編集者から、商業誌のコンペに出してみないかという依頼。想像もしなかった誘いだった。
「え、なんで?」。自分に声がかかったことを不思議に思ったが、「あかんかっても描いたら勉強になるし、プロの編集者の方にチェックいれていただけるいい機会」と、受けることにした。人物のアングルや吹き出しの位置、背景の描き込み……編集者から受ける指導は新鮮で、すべてが勉強になったという。
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