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NHK、佐村河内氏「Nスペ」調査報告書を公開 「本人が作曲していないと気づかなかった」

» 2014年03月17日 10時38分 公開
[ITmedia]

 NHKは3月16日、ゴーストライター問題が発覚した作曲家・佐村河内守氏について、「NHKスペシャル」をはじめとした番組で取り上げた経緯などを説明する調査報告書を公開し、検証番組を放送した。「本人が作曲していないことや、全聾(ろう)でないことに気づくことができなかった」としている。

 報告書によると、NHKが佐村河内氏を初めて取り上げたのは2012年11月の情報番組。その後、13年3月のNHKスペシャルなど複数の番組で扱った。NHKスペシャル放送前には、各部局の責任者などが集まる3段階の提案会議で審議。企画提案をした契約ディレクターに職員ディレクターを加えたディレクター2人体制、制作プロデューサーも2人体制と、「強化した」体制で制作したという。

 取材陣は、耳が聞こえない佐村河内氏が作曲していることを描くために、譜面を書くシーンの撮影が重要と考え、楽曲「ピアノのためのレクイエム」が完成する日に佐村河内氏に再三交渉したが、「譜面を書くのは神聖な作業である」と拒否され、撮影を断念した。取材陣はいったん佐村河内氏宅を離れ、12時間後再び訪れたところ、音符が書き込まれている楽譜が音楽室の机の上に置かれていたという。

 譜面を書くシーン撮影の代わりに「全体構成図」を撮影した。曲の完成前、ディレクターが「現段階の曲のイメージを教えてくれないか」と頼んだところ、佐村河内氏はカメラの前で紙の上に線を引き、曲の全体構成をスラスラと書いたという。この全体構成図は、完成した曲の構成とほぼ同じだったため、ディレクターは「これだけ具体的なイメージがあるのだから、本人が作曲しているに違いない」と感じたという。

 その後、佐村河内氏に聞き取り調査したところ、楽曲が完成したとされる前日、新垣隆氏に依頼した楽譜が宅配便で自宅に届いていたという。佐村河内氏は撮影に備え、楽譜を音楽室にある机の引き出しの中に入れ、撮影当日、一晩かけて書き上げたかのように見せかけたという。

 聴力については、医師の診断書と障害者手帳で確認。撮影段階では、佐村河内氏とのやり取りはほとんどすべて手話通訳者を介して行われたため、耳が聞こえないことを疑うスタッフは1人もいなかったという。また、、新幹線での移動中に手話通訳者を介して話していた際、トンネルに入り、騒音で聞き取りにくくなったが、それでも佐村河内氏は同じ声の大きさで話し続けるなどの振る舞いがあり、取材陣は「本当に耳が聞こえない」と思ったという。

 NHKは「番組を制作した時点では、当時必要と思われた検討や確認は行ってきたと考える」としながらも「結果として、事実とは異なる内容を放送したことを真摯に受け止め、反省しなければならない」とし、今回の問題を研修会や勉強会で取り上げるなどして再発防止の取り組みを進めていくとしている。

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