ドワンゴと日本将棋連盟が主催する「第3回将棋電王戦」第2局で使用される将棋ソフト「やねうら王」が対局直前のバグ修正によって棋力が向上した可能性があるとして、「ルール違反では」と批判が相次いでいる。開発者は「棋力には影響しない」としていたが、対戦相手の佐藤紳哉六段は「明らかに別物」と述べ、他の将棋ソフト開発者からも批判の声が上がる事態になっている。
「第3回将棋電王戦」は、現役プロ棋士5人が将棋ソフトと対戦する団体戦。ソフトは昨年11月に行われたソフト同士のトーナメント戦で事前選出されており、参加ルールとして「第3回将棋電王戦には本大会で出場したソフトで参加すること」「大会終了1週間後まで対プロ棋士用の乱数調整などの変更は可能。主催者に提出した後は一切変更できないものとする」と記載されていた。プロ棋士には、研究用に本番と同一ソフトの貸し出しを行っていた。
だがドワンゴが3月15日に発表した告知が物議を醸すことになった。22日に開催する電王戦第2局に出場するソフト「やねうら王」について、バグ修正とソフト入れ替えを3月1日に行った結果、ソフトの棋力が変わった可能性があると発表したのだ。
同社によると、局面によっては対戦中にフリーズする恐れがあり、「“棋力や指し手に影響を与える思考部には手を加えない”という事を条件」に修正を許可したという。だが対戦相手の佐藤紳哉六段から「修正されたソフトの指し手は以前とは別物であり、かなり強くなっている」という指摘を受けたという。同時に公開された公式プロモーションビデオ(PV)には、佐藤六段が「向こうは汚いことをやってきているが、馬鹿みたいに正々堂々戦ってとにかく勝ちたい」「今後将棋に携わるのはやめてほしい」などと電話口で怒りをあらわにする音声もおさめられている。
同ソフト開発者のやねうらおさんは、自身のブログで一問一答方式で経緯を説明。公式PVでは佐藤六段に挑発的な態度をとっているような場面もあるが、「私が見ていても(自分がしゃべっている内容に)気分が悪くなるもの」「『ひどい悪意のある編集だなぁ』と思う一方、今回の件で佐藤紳哉六段や関係者の皆様にご迷惑をおかけしていることは事実であり、どう編集されていようと、そこはすべて受け入れる所存」と書いている。
その上で、ソフト入れ替えは棋力向上のためではなくあくまでバグ修正のためであったことを強調。「元のコードに根の深いバグがあったので、探索の部分にそれ相応に手を入れました。棋力が変わっているとしたら、その影響」と説明し、「(佐藤六段に)事前研究していただいた内容は無駄になって欲しくないですし、フェアに戦いたいので、この部分が問題になるなら、本番では古いバージョンのほうで40手目ぐらいまで進めて、そこから新しいバージョンに指しつぐなどでも構いませんと私はドワンゴ側に提案」したものの却下されたことも明らかにしている。
これに対しネット上では「安定性も含めてソフトの実力」「一度でも修正を認めた運営側の問題」「悪意がないんだか、悪意がないふりをしてるのかわからない説明」「興行的にはフリーズしたら困るのはわかるけど……」などさまざまな反響が。同じく電王戦に出場予定のソフト「Ponanza」の開発者である山本一成さんは「レギュレーション違反であり、失格を望む」旨をツイートしている。
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