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「STAP現象は有望な仮説」だが――論文指導した笹井氏、不備を見抜けなかった理由は(1/2 ページ)

» 2014年04月16日 21時23分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 謝罪する笹井氏

 「STAP現象は有望だが、仮説に戻して検証し直す必要がある」――理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが英科学誌「Nature」に発表した「STAP細胞」論文が不正と認められた問題で、論文共著者の笹井芳樹 理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長が4月16日午後に都内で記者会見した。

 笹井氏は「わたしが参加した研究論文で多くの混乱や疑惑を招き、心からお詫びします」と謝罪した上で、自らの立場や論文不備を見抜けなかった理由、STAP現象についての見解などについて語った。

 Nature論文での笹井氏の役割は、「作成の最終段階である文章の書き上げの協力」だったという。「複数の共著者が複雑に入る特殊な論文で、チェック機能を働かせられなかった」ため不備を見抜けなかったとした。論文の撤回には同意しているが、「STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータがある」ため、「STAP現象は有望な仮説」という立場を維持している。

 STAP論文著者で理研に所属するのは小保方氏、笹井氏と、丹羽仁史 CDBプロジェクトリーダーの3人。小保方氏、丹羽氏は会見を行っており、笹井氏の会見で、理研所属の論文著者全員が公の場で説明したことになる。

論文には「最終段階で参加」 著者参加は「強い依頼を受けたため」

 笹井氏によると一般に、研究論文プロジェクトには、(1)着想や企画、(2)実験の実施、(3)実験データの解析と図表の作成、(4)論文の文章の書き上げ――の4段階があり、(1)は主にハーバード大、(2)(3)は理研の若山照彦研究室(当時、現山梨大学教授)で行われ、笹井氏が参加したのは(4)の段階という。

 不正が指摘された論文1は、以前、若山氏、小保方氏らがNatureに投稿してリジェクトされたものの書き直し版だ。笹井氏は、CDBセンター長から書き直しの協力依頼を受け、小保方氏の隣に座り、ディスプレイに表示された画像などを見ながら、論文の筋立てに沿って図表を組み合わせるなど協力したという。STAP現象のライブセルイメージング(顕微鏡映像撮影)など一部の追加実験も指導した。

 著者としての参加は、「論文投稿までの2年間のうち最後の2カ月強」のみと強調。責任著者であるハーバード大のチャールズ・バカンティ教授と若山氏から「強い依頼を受けたため」、最終段階で加わることになったという。

論文過誤、見抜けなかった理由は

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 研究不正が認められた2つの実験データについては、ほかの図表やデータとの整合性が高く、問題を見抜くのは困難だった釈明する。

 データが取られた実験は笹井氏が参加する以前に行われており、「生データやノートを見る機会がなかった」とも。小保方氏は笹井氏の部下ではなく、独立した研究リーダーのため、「ノートを持ってきて見せなさいといいったぶしつけな依頼は現実的に難しかった」と釈明する。

 Nature論文は、バカンティ氏、若山氏、笹井氏と「複数のシニア共著者が複雑に入る特殊な共同研究」だったことが「二重、三重のチェックを上手に働かせることができなかった」としつつも、「わたしは文書全体を俯瞰する立場にあり、責任は重大。大変申し訳なく思っている」と謝罪した。

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