ITmedia NEWS >

米国スタイルで“チャイニーズ・ドリーム”をつかんだ百度現代中国インターネットの覇者たち(1/2 ページ)

» 2014年05月28日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 「米国を抜いて中国が世界最大の経済大国に」――。今年4月に世界銀行が発表した2011年時点の購買力平価(PPP)推計によると、2014年に中国の国内総生産(GDP)がPPP換算で世界一になる見通しとなった。中国の経済成長ぶりは改めて説明するまでもない。鈍化傾向にあるとはいえ、2000年〜2013年にかけて毎年平均で10%近くGDPを伸ばしているのは驚異的である。

中国・北京にある百度本社。最近の北京でこうした青空は珍しい 中国・北京にある百度本社。最近の北京でこうした青空は珍しい

 「城市、让生活更美好」(より良い都市、より良い生活)とは2010年に開催された上海万博のテーマだが、今でも中国の各地で「生活更美好(より良い生活を)」といった言葉を目にする。貪欲なまでの上昇志向と、それに対するエネルギーの大きさはとどまるところを知らない。PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染や格差拡大のひずみなど、急激な発展がさまざまな問題をもたらせているが、今後も巨大なマーケットとしての地位は揺るぎないだろう。

 その中国にあって、特に飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けているのが、インターネット産業である。中国の研究機関である中国互聯網信息中心(CNNIC)によると、中国のインターネット人口は、2000年にわずか2250万人だったが、2013年には6億1758万人にまで増加している。中でもスマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスを活用したインターネットユーザーが急増。2007年の5040万人から2013年には5億6万人となった。インターネット全人口のうち約81%がモバイル経由でのアクセスという割合だ。

 このように消費者の規模や市場の大きさも然ることながら、米国帰りの若者が創業し、欧米流のマネジメントスタイルでビジネスを拡大していく、そうした企業が多いのが、中国におけるインターネット産業の特徴と言えよう。その先駆者として産業をけん引してきたのが、インターネット検索サービスなどを提供する百度(Baidu)だ。

“チャイニーズ・ドリーム”の象徴

 百度は、李彦宏CEOが2000年1月1日に設立。本社は中国・北京で、海外では日本(東京)を含め9拠点に展開している。社員数は3万4600人。2013年の売上高は319億4400万元(約5356億2100万円)、純利益は105億1900万元(約1763億7700万円)で、現在の株式時価総額は約554億ドル(約5兆6386億円)に上る。

 李CEOは北京大学を卒業後、米ニューヨーク州立大学に留学。その後、現地で就職し、米Dow Jonesや米Infoseekなどに勤務する。1997年には百度テクノロジーの土台となる検索アルゴリズムに関する特許を取得したほか、Infoseekでは、検索エンジンの設計や画像サーチエンジンの開発などに従事した。1999年、ベンチャーキャピタル(VC)から120万ドルの資金調達に成功し、帰国。6人の仲間とともに創業した。当初は北京大学隣のホテルの会議室を間借りしたオフィスだったという。

百度の売上高および純利益の推移(2004年〜2013年) 百度の売上高および純利益の推移(2004年〜2013年)

 百度という社名は、宋時代の詩人である辛棄疾が書いた「青玉案・元夕」の一節にある「千百度」という言葉に由来する。換言すれば、「探し求め、見つかったときの喜び、感動」という意味を表わすそうだ。

 2001年にインターネット検索サービス「Baidu.com」を正式リリースした百度は、2003年に画像検索とニュース検索を機能追加するとともに、コミュニケーションプラットフォーム「百度贴口巴(Tieba)」を立ち上げる。百度贴口巴とは、例えば、「音楽」や「ワールドカップ」、「餃子」など検索キーワードごとにコミュニティーを作成。同じキーワードに関心を持つユーザーが集まり、掲示板形式で対話することができるというもの。中国ではこうしたコミュニティーサービスが人気で、同じく中国のインターネット企業・Tencent(腾讯)のインスタントメッセンジャーツール「QQ」が持つコミュニティー機能も高い支持を得ている。

 そして2005年8月、NASDAQに上場を果たす。公開初日に公募価格27ドルでスタートした取引は122.54ドルにまで高騰。米国証券市場のIPO初日に最多利益を上げた株式の1つに数えられている(2014年5月22日現在、約163.97ドル)。アメリカン・ドリームならぬ“チャイニーズ・ドリーム”の象徴的な存在として、今でも百度は君臨しているのである。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.