「漫画版YouTubeを」――絶版漫画を無料公開するサービス「Jコミ」は7月11日に「絶版マンガ図書館」に改名し、新サービスを始める。ユーザーが持っている絶版漫画の電子書籍ファイルを預かり、作者の許諾を得た上で広告を付けて無料配信する仕組みをスタート。絶版漫画のラインアップを拡充し、作者に利益を還元しながら、ネットにはびこる絶版漫画の海賊版撲滅につなげる狙いだ。漫画のセリフ検索機能の導入や広告配信の効率化など、利便性・収益性も強化する。
Jコミはこれまで、絶版漫画を作者から預かり、スキャン・電子書籍化して無料公開してきた。新たに、読者が持っている絶版漫画の電子書籍ファイルも預かり、作者の許諾を得て無料公開。あらゆる絶版漫画がそろう、文字通り「絶版マンガ図書館」を目指す。
ユーザーが手持ちのファイルをアップロードすると、Jコミ独自の「絶版判定アルゴリズム」と、Jコミ代表で漫画家の赤松健さんによる目視で、絶版作品かを確認。絶版と分かれば、ランダムな5ページに「サンプル」などのすかしを入れて公開し、作者からの公開可否の連絡を待つ。作者から公開OKと連絡があれば、従来のJコミと同様、広告を付けて無料配信し、広告収益を全額、作者に支払う。公開NGならファイルは削除する。
ユーザーは作者に無断でファイルを送信し、Jコミも数ページ分を無断公開することになるが、作者から許諾を得るための資料としてのアップロード・公開であり、著作権法30条の3で認められた「検討の過程における利用」になるため、著作権侵害には当たらないとしている。
「絶版漫画が欲しい読者は、Amazonマーケットプレイスやブックオフで買ったり、ネットで海賊版を入手してしまうが、作者にとっては1円にもならない」――赤松さんは、苦い思いを打ち明ける。
赤松さんは、自身の作品「ラブひな」の海賊版ファイルの検索・ダウンロードを実演して見せながら、海賊版の実態を解説。WinnyやBitTorrentなどファイル交換ソフトの利用は減り、「サイバーロッカー」と呼ばれるオンラインストレージからのダウンロードが主流になっているという。
新サービスを通じ、作者公認の絶版漫画ファイルを無料で大量にそろえることで、サイバーロッカーからユーザーを奪いつつ、作者にも収益が返ってくる仕組みを構築する狙いだ。「絶版漫画の海賊版を、完全に撃滅したい」と赤松さんは意気込む。
公開した漫画の海賊版を見つけた場合、米デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づくGoogleへの削除申し立てをJコミが代行するほか、Kindleへの登録を請け負ったり(作者印税30%、Jコミ手数料5%)、作者が電子透かし入りのDRMフリーファイルを販売できるストアを出店できるようにするなど(販売額1万円以下なら手数料0円)、絶版漫画の収益化も手伝う。
作者やファンが作品の解説を自由に書き込める「マンガ専門Wiki」も公開。これまで赤松さんが1人で書いていた作品解説をオープンにし、情報を充実させていく。
出版社は、利益が見込める人気作のみ電子化・有料配信する傾向があり、派手に打ち切った作品や、大人の事情であえて単行本しなかった作品などは電子化されないケースが多いという。
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