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「超個人主義」日本のクリエイターが世界に挑むために――1000万ユーザー超えた“チームpixiv”の描く未来(2/3 ページ)

» 2014年07月18日 11時55分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

「日本人は超個人主義」

photo エゴサーチが習慣の片桐さん、何気なく要望をつぶやくユーザーに突然リプライして驚かせることも。「pixiv運営へ 次は縦書きへの切り替え実装よろしく」「(・з・)へい。わかりやした。小説の縦書きすぐに実装させていただきます」

 昨年買収したコスプレSNS「Cure」に関しては「サイトとしてまだまだな点が多いので改修するつもり。pixivと連携するとしたらその後」と話すが、取得した理由の1つとして挙げるのは「イラストよりも始めるハードルが比較的低い」こと。海外のアニメ関連のイベントで現地ファンのコスプレが目立つように、衣装を着ることは比較的真似しやすい。

 一方、イラストのスキルを上げていくことには練習と時間が必要で、突然できるようになるものではない。モチベーションを維持するためにも、描いたものを見てくれる人がいて、コメントなどの反応が分かるコミュニティーがあることが大切、それが全体の盛り上がりや新陳代謝にもつながる――と話す。

 活発な同人活動も含め、時間をかけてスキルを磨くことをいとわない日本のクリエイター文化に対する片桐さんの持論は「超個人主義」だ。pixivのランキングで上位に入りやすい絵の傾向として、背景の書き込みが緻密なものが多いことなどをあげ、クリエイター個人の新しい技術を学ぶ意欲や向上心を生かしたいという。

 6月に追加した新機能「うごイラ」はその片桐さんの意思が強く反映されたもの。今年の年明けにアイデアが浮かび、数カ月で開発を進めた。数枚のイラストをセットでアップロードし、1枚ずつ表示時間を設定することでアニメのように動かせる仕組みだ。リリース直後から反響が大きく、10日で2万作品以上が投稿されたという。

 「アニメや映画を1人で作るのは無理でも、複数枚の絵をつなげるとなれば発想は随分変わる。完成した物を一見するだけでは目新しさは分かりにくいが、創り手にとって表現の可能性が増えたということが大きな意味」(片桐さん)

 個人レベルの表現の幅を増やすことを考えつつ、「いいものを作れば注目される」ではなく「いいものを作って、広めて、きちんと売り出す」意識を強める必要性も感じているという。クリエイター1人の作品ではなく、「チームで挑まないと勝てない」世界を見据えた骨太なプロジェクトが生まれていく場所にすることが、pixivの目指す次のステージだ。

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