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預かり品は1つずつ撮影、Webで確認できる──倉庫業の常識を覆す、個人向け収納サービス「minikura」のチャレンジ

» 2014年09月05日 10時00分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 部屋にあふれるものを段ボールに入れて送るだけ。申し込みはWebで完結、送った商品は1点ずつ写真撮影されてオンラインでアルバムのように確認できる――そんな個人向け収納サービス「minikura」がじわじわと人気を広げている。

photo minikura

 「minikura」は、倉庫業を60年以上展開している寺田倉庫が2012年9月に始めた。現在の会員数は約17万人に上り、月に2万箱程度の新規入庫を受け付けている。

 これまでも個人が倉庫やトランクルームサービスを使うケースはあったが、入れたもの自体が分からなくなったり、そもそも預けたこと自体を忘れてしまったりするなど“不幸な使われ方”も多かったという。minikuraは、ネットやスマートフォンの普及を受け、より時代に合わせた個人向けサービスとして企画された。

シンプルな料金システム、預けた品はスタジオで撮影

 特徴の1つは、月額250円からのシンプルな定額制の料金プラン。Webで申し込むと指定のキットが送付され、ユーザーは預けたい商品を種類を問わず詰めて送るだけで作業は完了だ。空調やセキュリティの行き届いた環境で保管される。

photo 専用スタジオで撮影された写真とともにアルバムのように管理できる
photo 標準サイズ、40センチ四方の箱は予想以上に大きい。「minikura MONO」の場合この大きさで月額250円

 もう1つは、預けた品の写真が専用スタジオで1点ずつ撮影され、専用Webページで確認できること。洋服や本、かばんなど、預けているものをいつでも確認でき、1点ずつ取り出すことも可能だ。

 撮影込みのプラン「minikura MONO」のほか、中身を開封せず箱を預けるだけのプラン「minikura HAKO」(月額200円から)もあり、用途に応じて利用できる。

 「ヤフオク!」と連携し、手軽に出品できる機能も人気だ。ネットオークションではアイテムの写真が重要なポイントだが、この写真撮影の手間がいらず、梱包や発送も倉庫スタッフの手で行われるため、衣類や靴、かばんを中心に利用が多いという。

反応は予想以上に好意的

 送られてきた荷物を開封し1点ずつ触れる――故障や破損のリスクを考えると、これまでの倉庫業ではありえなかったプロセスだ。特に個人から預かるものは思い出の品、貴重なコレクターものもあり、保証も難しいため企画時は心配する声も少なくなかったという。

 スタートから2年が経ち、誰も踏み入れていない分野に挑戦したことは大きな意味があったと、月森正憲執行役員は話す。

photo 月森正憲執行役員

 「サービスを始めた当初は、自分の持ち物に触れさせることへの抵抗が強いかと考えていたが、実際の反応は予想以上に好意的だった。むしろ思い入れのある品が美しい写真におさめられ、ショーケースのように並ぶことに喜んでくれる人も多い。新たなユーザーを広げられている手応えがある」(月森執行役員)。

 具体的な内容物を把握しているからこそ提案できるオプションも好評だ。季節の変わり目に入れ替える衣服への返送前にクリーニング、アルバムの写真や8ミリビデオをデジタルデータに変換してDVDに――など、単なる“外部倉庫”以上に生活に役立つ機能も提供している。「すでに850万点以上が預けられており、今後データの活用も模索していきたい。読売ジャイアンツのキャップを預けている人に球団の関連グッズをおすすめしたり、預けている服に合う新しいファッションアイテムを提案したり」(月森執行役員)

フィギュアを保管する「魂ガレージ」 他社コラボも積極的に

 「箱で預ける」「1点ずつ写真撮影」の2つの特徴を持つminikuraの仕組み自体をプラットフォームとして捉え、アニメイトとの「アニメイトコレクション」、バンダイとの「魂ガレージ」など他社との共同サービスにも取り組む。

 フィギュアを対象とした「魂ガレージ」は、バンダイが発売するフィギュアシリーズの箱の寸法とぴったり合い、衝撃に強い2重構造の特製段ボールを新たに開発。撮影の仕方も含め、「ファンのみなさんのことを1番よく分かっている発売元と協力しながら」(月森執行役員)、唯一無二のサービスとして喜んでもらえるようこだわっているという。年内だけで数十の新サービスのリリースを予定しており、今後も協業を積極的に進めていきたいとしている。

photo 日本アカルミー賞 2014

 スタートアップや個人を対象としたminikuraプラットフォームを活用したビジネスプランコンテスト「日本アカルミー賞 2014」もこのほど募集を始めた。優秀なアイデアは寺田倉庫が開発面やプロモーションなどを全面バックアップし、サービスインまでサポートする。

 「法人向けの倉庫サービスはどうしても価格競争に陥りがち。minikuraを通して個人のユーザーやファンをつかみ、物流のプロの強みを活かしながら新たな領域に踏み込んでいけるのは大きな意味があると感じている。ニーズも可能性もまだまだある“倉庫・物流API”として、より多くの業界と組んで盛り上げていきたい」(月森執行役員)

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