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3億年のデータ保存が可能 石英ガラスに100層記録、容量BD並みに

» 2014年10月20日 16時27分 公開
[ITmedia]

 日立製作所と京都大学工学部(三浦清貴研究室)は10月20日、石英ガラス内部に、Blu-ray Disc並みの記録密度となる100層デジタルデータを記録・再生することに成功したと発表した。石英ガラスは耐熱性・耐水性に優れ、3億年を超えるデータ保存にも耐えられるという。

 11月に打ち上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」相乗り小型副ペイロード「しんえん2」(九州工業大学と鹿児島大学が共同開発)に、3億年後へのメッセージを込めた画像・文字列を描画した石英ガラスを搭載する。

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 石英ガラス内部にフェムト秒パルスレーザー(数兆〜数百兆分の1秒にまで短パルス化したレーザー)を照射してドットを形成。ドットを1、ドットがない部分を0としてデジタルデータを記録する技術。再生に光学顕微鏡を用いる手法を2012年に開発し、4層記録でCD並みの記録密度を実現、13年には26層記録でDVD並みの記録密度を達成してきた。

 今回、層間距離60μメートルで、石英ガラスの両面から50層ずつ・計100層の記録と再生が行えることを検証した。Blu-ray Discと同等の記録密度(1.5Gバイト/平方インチ)が可能となること示す成果で、さらなる多層化の可能性が見出せたとしている。

 100層クラスになると、石英ガラスの奥深くまで記録層が設けられることによるドットの品質低下が起きるという問題があったが、新たに球面収差補正レンズを使用することで、記録時の集光スポット品質の劣化を抑制、奥深くにある記録層にもドットを作成できることを確認した。再生に用いる光学顕微鏡にも収差補正レンズを適用することで、高品質の撮影画像が得られることを確認したという。

 また、再生時に他層に記録されたデータが映り込み、再生エラーが顕著になるという課題もあったが、一定のサイズを満たさない画像信号はノイズとみなして除去する画像処理アルゴリズムを適用することで、再生信号のエラー率を実用レベルに引き下げられることを確認した。

 今後、さらなる記録密度の向上により、実用化を目指した実証実験を進める。文化遺産や公文書、個人が後世に残したいデータなどの新たな長期保存技術として活用を期待している。

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